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宴の後に〜魅惑のオスカー・ナイト2009

ビヨンセらと共に唄って踊るパフォーマンスを展開した最後、ホストのヒュー・ジャックマンはこう叫んだ。

"The musical is back !"「ミュージカル映画が帰ってきた!」と。

アン・ハサウェイ(「プリティ・プリンセス」「プラダを着た悪魔」)も唄ったのには吃驚仰天した。これだけの実力があれば、彼女も十分ミュージカル映画に出演できる!

第81回アカデミー賞授賞式は本当に夢のような一夜だった。瞬く間に時が過ぎていった。ショー・アップされた今年のオスカー・ナイトは、史上最高の面白さだったのではないだろうか?正に"There's no business like show business"《ショーほど素敵な商売はない》(ミュージカル「アニーよ銃をとれ」より)。アメリカでのテレビ視聴率も6%アップしたとか。 

さて、僕が予想した22部門のうち、外れたのは下記2部門。

録音賞(Sound Mixing):スラムドック$ミリオネア」 
音響編集賞(Sound Editing):「ダークナイト」

という訳で、今年は20部門的中という結果だった。

前にも書いたとおり、巷ではアカデミー外国語映画賞の大本命はゴールデン・グローブ賞を受賞したイスラエル代表「戦場でワルツを」だろうと言われていた。そして対抗馬がフランス代表「ザ・クラス」(カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドール受賞)。「おくりびと」で主演した本木雅弘も、「イスラエルの作品が獲ると思ってた。こんなことなら、もっと堂々とレッドカーペット歩けばよかった」とインタビューで語っている。しかし僕は「戦場でワルツを」の受賞は難しいのではないかと考えていた。なぜならばこの作品はアニメーションだからである。

アカデミー会員は非常に保守的なことで知られている。今年、世紀の大傑作「ダークナイト」が作品賞や監督賞にノミネートされなかったのは原作がアメコミ(バットマン)だからだと推測される。ヒュー・ジャックマンも授賞式でそのことを茶化して唄っていた。

かつてオスカーに長編アニメーション部門が設置される前、宮崎駿監督の「もののけ姫」が外国語映画賞の日本代表作品に選ばれたことがある。しかし、ノミネートすらされなかった。アニメ界において神にも等しい存在のハヤオが無視されたのに、イスラエルが受賞できる筈ないじゃないか(後に「千と千尋の神隠し」が長編アニメーション部門を制したのは御承知の通り)。50年以上歴史のある外国語映画部門においてアニメが受賞したことは皆無である。

フランス代表の盲点はカンヌでパルムドールに輝いた作品はオスカー受賞が難しいという歴史的事実である。「タクシードライバー」「地獄の黙示録」「オール・ザット・ジャズ」「影武者」「さらば、わが愛/覇王別姫」「ピアノ・レッスン」「パルプ・フィクション」「エレファント」……全てそうだ(唯一の例外は「戦場のピアニスト」。この受賞にはひっくり返った)。つまり、アカデミー会員にはカンヌに対する強烈なライバル意識があるということが言えるだろう。

上述したようなことを考慮して僕は「おくりびと」が受賞すると予想した。しかし無論、最大の勝因は作品自身の持つ力、輝きである。映画に国境はない。良い物を創れば必ず世界は認めてくれる。そのことを証明してくれた「おくりびと」、そして「つみきのいえ」のスタッフ・キャストに心から賞賛を送りたい。あなた方は日本の誇りです。

ところで最近オスカー受賞者の国際化が顕著になってきた。昨年、主演女優賞を攫ったマリオン・コティヤールはフランス人、主演男優賞のダニエル・デイ=ルイスと助演女優賞のティルダ・スウィントンはイギリス人。そして助演男優賞のハビエル・バルデムはスペイン人。なんとアメリカ人俳優が一人もいなかったのである!

今年はどうだろう。主演女優賞のケイト・ウィンスレットはイギリス人、助演女優賞のペネロペ・クルスはスペイン人、助演男優賞のヒース・レジャーはヒュー・ジャックマンと同じくオーストラリア出身。アメリカ人は主演男優賞のショーン・ペンただ一人であった。

また作品賞の「スラムドッグ$ミリオネア」はイギリス映画であり、監督のダニー・ボイルもイギリス人。この映画はインドのスラム街でロケされ、インド人スタッフも多数参加。作曲賞および歌曲賞を受賞したA.R.ラフマーンもインド人である。

つまりアカデミー賞は単なるアメリカのお祭では最早なく、真の意味で《映画の祭典》に脱皮したのだと言えるだろう。

さて、混沌としていた主演女優賞の行方を決定付けたのはメリル・ストリープによる、あるスピーチだった。

メリルが身を引くことにより6度目のノミネートで悲願のオスカーを手に入れたケイト・ウィンスレットは、壇上から大女優に対して感謝の言葉を述べることを決して忘れはしなかった。それは真に麗しい情景であった。

それにしても主演女優賞のプレゼンターとして登場したメンバーの豪華さは凄かった。ソフィア・ローレン、マリオン・コティヤール、ニコール・キッドマン、ハル・ベリー、シャーリー・マクレーンらである。そして注目すべきはこの内、ローレン、コティヤール、キッドマンの3人がロブ・マーシャル監督の新作ミュージカル映画「ナイン」(撮影は終了し、現在ポスト・プロダクション真っ只中)に出演しているということである。

この3人に加え、「ナイン」にはダニエル・デイ=ルイスとジュディ・デンチというオスカー俳優が出演しているが、今回さらに6人目が誕生した。助演女優賞を受賞したペネロペ・クルスである。

ペネロペ受賞に大きな役割を果たした男をここで紹介しよう。その名はトム・クルーズ。トムは2001年にニコール・キッドマンと離婚した(その時ニコールはトムに対して「これでやっとハイヒールがはけるわ」と言ったという)。そして2003年、ニコールは「めぐりあう時間たち」でオスカーを見事受賞した。

トムは1997年のスペイン映画「オープン・ユア・アイズ」にゾッコンほれ込み、2001年「バニラ・スカイ」というタイトルでハリウッド・リメイクした。両映画で同じ役を演じたペネロペ・クルスはトムが離婚する直前から彼と恋仲になるが、2004年にふたりは破局。傷心のペネロペはスペインに帰郷する。そしてペドロ・アルモドバドル監督の「ボルベール<帰郷>」に出演、同映画でスペイン人として初めてアカデミー主演女優賞にノミネートされた。つまりトムと別れた彼女たちは二人とも仕事運が上昇し、オスカーを手に入れたのである(トム自身は3度ノミネートされているが受賞は果たしていない)。それにしても授賞式でのペネロペは本当に可愛かった!今年のベスト・ドレッサー賞を謹んで進呈したい(写真はこちら)。

一方、2006年にトムと結婚したケイティ・ホームズの場合はどうか?ケイティは2005年に「バットマン ビギンズ」のヒロイン、レイチェルに抜擢された。しかしトム・クルーズとの一連の騒動がイメージ・ダウンとなってその続編「ダークナイト」には起用されず、マギー・ギレンホールと交代になってしまった。そして名優ヒース・レジャーと共演する機会は永遠に失われた。明暗を分けたとは正にこのことであろう。

アカデミー賞をめぐるあれこれはネタが尽きないが、もうこれくらいにしておこう。最後に、来年のオスカー最多受賞作品はロブ・マーシャルの「ナイン」であろうと予言して〆の言葉としたい。

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