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STAND BY ME

スティーブン・キングの"The Body"(死体)を原作とする映画「スタンド・バイ・ミー」のラストシーン、作家となった主人公は次のような言葉をワープロに打ち込む。

I never had any friends later on like the ones I had when I was twelve. Jesus, does anyone?
(あの十二歳の頃のような親友を持つことは、その後の僕にはなかった。決して二度と……)

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この映画の主人公のように言い切れる友を僕が得たのは十五歳の時。高校一年生の春のことである。出会ったのは吹奏楽部。彼はトランペットを吹いていた。

高校卒業後、友は東京外国語大学英文科に進学し、僕は地元の岡山に残った。しかし大学の夏休みや年末にはしばしば会って酒を飲み、将来の夢を語り合った。

大学を卒業すると彼は高校の英語教師として岡山に戻ってきた。そして吹奏楽部の顧問になった。

僕たちが三十歳になった年、彼は結婚した。そして新婚旅行から戻ってきて高熱を発症、病院で急性骨髄性白血病という診断を受けた。弟さんからの造血幹細胞移植手術は成功した。しかしその直後、感染症の合併症を併発し敗血症、多臓器不全で亡くなった。

あれから歳月は流れた。ある日、ザ・シンフォニーホールでもらったチラシをたまたま眺めていて、2008年12月29日に岡山大学交響楽団(常任指揮者は吹奏楽コンクール課題曲「風紋」の作曲家として知られる保科 洋さん)の大阪公演があることを知った。ここのサブ・コンダクターで、保科アカデミー室内管弦楽団を組織し、指揮されている秋山 隆さんは高校吹奏楽部の先輩なのである。高校生の頃から秋山さんは部長として、そして学生指揮者として卓越した才能を発揮されていた。

コンサートが終わり、楽屋に秋山さんを訪ねた。10年ぶりの再会で想い出話に花が咲いた。僕が保科さんの「風紋」が大好きだと言うと、2009年8月保科アカデミーの岡山&東京公演でなんと「風紋」管弦楽版(初演)を指揮されると教えて下さった。

そして僕は今度、淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部グリーンコンサートの企画「1000人のアルメニアンダンス・パート I」(指揮:丸谷明夫 先生)に参加することを話した。すると秋山さんは亡くなった友人のことについて触れ、こんなことを仰った。

「そういえば彼が生前、丸谷先生のことを熱心に語ってたのを憶えている。淀工に見学にも行って、その指導ぶりにすごく感銘を受けたと言っていたよ」

僕は吃驚した。彼からそんな話は聞いていなかったし大体当時、丸谷先生のお名前さえ全く知らなかったからである。

親友のことなら何でも知っている気でいた。しかしそんなことは所詮、幻影に過ぎなかったことを今更ながら悟った。そしてふと想った。3年前に大阪に来て、丸谷明夫/淀工吹奏楽部の存在を知る事が出来たのも、もしかしたら亡くなった彼がそっと僕を導いてくれたのかも知れないな、と。

そんな想いを込めて僕は今日、大阪城ホールで「アルメニアン・ダンス」を吹く。

When the night has come
And the land is dark
And the moon is the only light we see
No, I won't be afraid
Oh, I won't be afraid
Just as long as you stand
Stand by me

夜の帳(とばり)がおりて
辺りは暗く
月明かりしか見えなくても
僕は怖くない
決して怖くなんかないさ
君がそばに
僕のそばにいてさえくれたら

I won't cry, I won't cry
No, I won't shed a tear
Just as long as you stand
Stand by me

僕は泣かない、決して泣きはしない
そうさ、一粒の涙だって流さないよ
君がそばに
僕のそばにいてくれるのならば

(作詞 :Ben E. King/Jerry Leiber/Mike Stoller 、訳詩 : 雅哉)

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コメント

こんにちは 大阪城ホールに行きました。

今までは フェスチバルホールで4回公演でした。

元気を 頂きます。

丸谷先生ファンです。

投稿: りぼん | 2009年1月19日 (月) 00時02分

りぼんさん、コメントありがとうございます。昨日の大阪城ホールは圧巻でしたね。

フェスティバルホールが解体され、新しいホールの完成予定が2013年。さて、来年のグリコンはどこで開催されるのでしょう?僕としては再び城ホールで聴けると嬉しいのですが。

投稿: 雅哉 | 2009年1月19日 (月) 12時29分

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