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2009年1月31日 (土)

エグザイル/絆

評価:D-

香港のジョニー・トー監督作品、原題は「放・逐」。「キネマ旬報」2008年外国映画ベスト・テン第8位に選出された。映画公式サイトはこちら

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この違和感は何なのだろう?

かつて宮崎駿監督「ルパン三世/カリオストロの城」の中で石川五ェ門はこう呟いた。

「また、つまらぬものを斬ってしまった。」

そう、あの感覚に近い。

また、つまらぬものを観てしまった。

北野武監督の処女作「その男、凶暴につき」(「キネマ旬報」ベスト・テン第8位)を観た時の印象にも似ている。

何で世間は、こんなくだらない映画を高く評価するんだろう?

北野武に映画監督としての才能がなかったことは、近作(「TAKESHI'S」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」)の体たらくを見れば一目瞭然だろう。未だに彼に出資するスポンサーがいるのが不思議なくらいである。

閑話休題。「エグザイル/絆」の話に戻ろう。

確かに銃撃戦は格好いい。スローモーションを駆使した《死の舞踏》、《殺しの美学》がそこにある。しかし、これら魅力的シーンは所詮サム・ペキンパー監督「ワイルドバンチ」(1969)の猿真似であって、そこから一歩も出てはいない。「ワイルドバンチ」を上手く消化し、「男たちの挽歌」で独自の美学に昇華したジョン・ウーとは月とスッポンである。

そして銃撃戦までに至る過程が駄目。ぐだぐだである。撮影は台本なしで進められたそうで、スタッフもキャストも物語の先行きが全く分からないまま現場に臨んでいたらしい。だから同じ手法をとるウォン・カーウァイの映画(「恋する惑星」「ブエノスアイレス」「花様年華」「2046」)同様、物語にしっかりした骨格がなく、起承転結が曖昧なままダラダラと進んでゆく。

香港ノワールには「インファナル・アフェア」(2002)という金字塔がある。「ディパーテッド」というタイトルでハリウッド・リメイクされ、アカデミー作品賞・監督賞などを受賞した。シナリオがしっかりしていたからこそ、作品に普遍性があったのである。「エグザイル/絆」にはそれがない。

悪役として登場する裏社会のボス、隙ありすぎ。どうして子分のアンソニー・ウォンだけ防弾チョッキ着ていて、ボスは着てないの??

途中で金塊強奪のエピソードが出てくるが、ありゃ多分ロベール・アンリコ監督の大傑作「冒険者たち」(1967)へのオマージュだろうな。でも作品の格が違うんだよ。

そもそもフィルム・ノワールは登場する男たちが非情であることが必須条件だ。しかし「エグザイル/絆」の男たちは情に流されすぎで実に情けない。みっともない。犯罪映画で人情噺なんかするな!

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コメント

あー、ダメでしたかー
俺としては自分にとっての去年の洋画ベスト10の5位くらい
にランキングしてるんですが・・・

まぁ、これに懲りずジョニー・トーの監督作品は
もし見られるならいろんな作品にチャレンジして見た方が
いいと思います。旧作とか新作にこだわらずに。
そうすれば雅哉さんにとって面白い物に出会えるとは思いますよ。

投稿: S | 2009年1月31日 (土) 17時09分

ジョニー・トーが製作し、彼のもとで脚本を担当しているヤウ・ナイホイが監督デビューする「天使の眼、野獣の街」という映画の予告編を「エグザイル/絆」を上映中のシネマート心斎橋で観ました。

スプリット(分割)画面を多用した編集が、ノーマン・ジェイスン監督の「華麗なる賭け」(The Thomas Crown Affair, 1968)そっくりだったので呆れました。

「ワイルド・バンチ」といい、彼らはあの時代のハリウッド映画が好きなんですね。

投稿: 雅哉 | 2009年1月31日 (土) 18時28分

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