ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
評価:B
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メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督は天才である。米アカデミー賞で外国語映画賞を含む6部門にノミネートされ、撮影賞・美術賞・メイクアップ賞の3部門を受賞した「パンズ・ラビリンス」(2006)は真の傑作であった。
- パンズ・ラビリンス(公開当時僕の書いたレビュー)
「ヘルボーイ」はアメコミ(アメリカン・コミックス)の映画化である。だから内容的に深いものがあるわけではないし、物語自体は大したことはない。しかし、デル・トロの透徹した美意識が映画の隅々にまで行渡り、ビジュアル・イメージの洪水、その豊穣さは他の追随を許さない。
王冠を三つに分けるとかエルフ(妖精)族やゴブリンが出てきたりと、そのプロットは「ロード・オブ・ザ・リング」を彷彿とさせる。ちなみにデル・トロはその前章である「ホビットの冒険」(二部作)のメガホンを取る事が既に決定している。
宮崎アニメからの影響も見逃せない。森の神《エレメンタル》は「もののけ姫」のシシ神(が巨大化したダイダラボッチ)、《ジャイアント・ドアウェイ》は「風の谷のナウシカ」の巨神兵を彷彿とさせる。
映画「パンズ・ラビリンス」に主演した少女、イバナ・バケロは撮影前にデル・トロから「風の谷のナウシカ」のコミック本を貰ったと証言している。またデル・トロはあるインタビューに答え、こう語っている。
「日本の配給会社に『宮崎さんに会いたい』と頼んだけれど、宮崎さんは忙しくて時間がつくれないらしい。残念だけど、仕方ないよね」
「シリーズ第1作の『ヘルボーイ』の橋が落ちるシーンは、東映アニメ『長靴をはいた猫』(1969、宮崎駿がアニメーターとして参加)に出てくる魔王の城のシーンをオマージュしているんだ」
日本の漫画、アニメをこよなく愛する彼は、手塚治虫も大好きだと告白している。手塚漫画とデル・トロ作品との最大の共通点は《異形のもの》に対する愛だろう。「ホビットの冒険」(2012年公開予定)を仕上げたら、次にデル・トロは「フランケンシュタイン」や「ジキル&ハイド」のリメイクに取り組むと宣言している。これから彼が生み出してゆく映画たちがとても愉しみだ。
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