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2009年1月25日 (日)

市村正親×鹿賀丈史 IN 《ラ・カージュ・オ・フォール》

「ラ・カージュ・オ・フォール」は元々1973年にフランスで上演された舞台劇(ストレート・プレイ)である。でも中身は"ストレート"ではなく"ゲイ"カップルの話。

1978年にフランス・イタリア合作として映画化され「Mr.レディMr.マダム」という、どぎつい邦題で上映された。アメリカで公開された'79年のアカデミー賞では監督賞・脚色賞・衣装デザイン賞にノミネートされている(この年、作品・監督・脚色賞を受賞したのは「クレーマー・クレーマー」)。エンニオ・モリコーネの音楽が良かった。

さらに'96年に「バードケージ」 (The Birdcage)というタイトルでハリウッド・リメイクもされた。監督は「卒業」「エンジェルズ・イン・アメリカ」「クローサー」のマイク・ニコルズ。主演はロビン・ウイリアムズとネイサン・レイン。ちなみにネイサン・レインの芸名はミュージカル「ガイズ&ドールズ」の主人公に由来し、彼がトニー賞を受賞したミュージカル「プロデューサーズ」出演中にブロードウェイでこれを観劇したことが僕のちょっとした自慢だ。

閑話休題。「ラ・カージュ・オ・フォール」は1983年にブロードウェイでミュージカル化された。トニー賞では最優秀ミュージカル作品賞・演出賞・台本賞・楽曲賞・衣装デザイン賞・主演男優賞の6部門を受賞。作詞・作曲はジェリー・ハーマン。彼は「ハロー・ドーリー!」の作詞・作曲でも知られる。そう、ピクサー・アニメーション「WALL-E/ウォーリー」冒頭で歌われる曲だ。

台本を執筆したのはハーヴェイ・ファイアスタイン。ファイアスタインは役者としても有名で、同性愛を扱った自伝的戯曲「トーチング・トリロジー」でトニー賞の台本賞と主演男優賞を受賞(映画版にも出演)。さらに女装してミュージカル「ヘアスプレー」でも主演男優賞を受賞している(映画では同役をジョン・トラボルタが演じたが、これは明らかなミス・キャストだった)。

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大阪のシアター・ドラマシティで木曜夜に観劇。満席だった。日本では9年ぶりの再演。市村ザザのファイナル・ステージである。前回まで市村正親さんの相手役だったのは岡田真澄さん。真澄さんが亡くなり、今回は劇団四季時代からの朋友、鹿賀丈史さん登場である。

僕がこのミュージカルを観るのは今回3回目。市村ザザが余りにもはまり役で、ミュージカル「蜘蛛女のキス」でもモリーナという同性愛者を演じておられたので、僕は市村さんご自身ゲイなのかなと長い間誤解していた(「蜘蛛女のキス」の演出は「オペラ座の怪人」のハロルド・プリンス。本当に素晴らしいプロダクションだった)。

前回の「ラ・カージュ」記者会見では市村さんが「ゲイは身を助ける」なんてギャグを飛ばされるし、すっかり騙されていた。後に市村さんが劇団四季時代に同僚と結婚されていたことを知り、さらに篠原涼子との再婚・出産の報道を聴くに及んで自分の勘違いに気付かされた次第である。芸の力、恐るべし。

鹿賀丈史さんは「レ・ミゼラブル」や「ジキル&ハイド」等で観てきたが、ミュージカル・スターとしては余り好きではなかった。あの大仰な口調が鼻につくからである。しかし今回の「ラ・カージュ」は中々良かった。わざとらしい演技が役に合っていたのである。普段から仲良しなだけに、市村さんとのあ・うんの呼吸も見事だった。

鹿賀さんと市村さんが劇団四季退団後、初共演する筈だったのは三谷幸喜作「You Are The Top ~今宵の君~」である。僕はこれを東京・世田谷パブリックシアターまで観に往った。ところが!公演直前になって鹿賀さんが急性虫垂炎で入院、降板されたのである。舞台は公演中止の危機に立たされた。しかし元「夢の遊眠社」の浅野和之さんが急遽代役に決まり、数日遅れて無事初日を迎えた。THE SHOW MUST GO ON とは正にこのこと。浅野さんはその後も三谷さんの書く舞台・テレビドラマ・映画と立て続けに出演され、すっかり今では三谷組の一員になられた。そして結局、僕が鹿賀・市村の共演を初めて観ることが出来たのはミュージカル「ペテン師と詐欺師」であった。

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「ラ・カージュ」の話に戻ろう。ジャクリーンを演じた香寿たつきさんが好演。

鹿賀さん演じるジョルジュの息子の恋人、アンヌを演じた島谷ひとみさんはシンガーなので、くるくる軽やかに回転しながら登場(バレエ用語で言うところの"シェネ")する筈の場面は全くいただけなかった。足が曲がっていて軸がブレている。これはやはりダンサーの役だろう。衣装も似合っていない。以前観た、森奈みはるさんや風花 舞さん(いずれも元・宝塚娘役トップ)演じるアンナの方が断然良かった。特に風花さんの踊りの美しかったこと!

アンヌはミス・キャストだが、そんなことは些事に過ぎない。音楽がパーフェクトだし、群舞も愉しい。この作品には舞台ミュージカルでしか決して味わうことの出来ない高揚感がある。観客総立ちのカーテンコールで拍手しながら、僕はTheatergoer(芝居好き)であることの至福を噛みしめた。

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コメント

「ラ・カージュ」、当日券ででも行こうかと思っていたら、
急な訃報が入り、結局行くことはかないませんでした。

市村ザザ、見たかったですね。

この作品、日本の初演が、東宝、何を考えたか、ザザに
近藤正臣。女装姿はきれいだから、女性の観客は近藤さんが
出てくるたびに「きれい・・・」とため息混じりに言ってました。

でも、この作品、ザザは正直言ってもうあまり相手にされない
「汚い***」という(+歌のうまい)役者がやってこそ
生きてくる作品なので、近藤正臣はミスキャストであるだけで
なく、歌の評価も散々でありました。

NYからオリジナルのスタッフが見に来て、「オーケストラが
いちばん良かった」と言ったそうです。

まだ観客も成熟してない頃で、観客を集めるための措置だった
のだろうと思いますが、それにしても近藤正臣の歌はひどかった。

当時、「坂上二郎あたりにやらせればいいものを」と本職の
「ゲイ」の方が劇評に書いていたりしました。確かに面白い
キャスティングです。

市村ザザ、欲を言えば、彼でも見かけは綺麗過ぎるかなという
印象はありますが、芸達者なザザを得て、やっと日本の
「ラ・カージュ」も世界に恥ずかしくないレベルのものを
見せられるようになったとほっとしたのを覚えています。

しかし、市村氏は芸達者ですよね。ゲイの役といい、
屈折した役といい、きちんと演じきる。

「ミス・サイゴン」のときに、ロンドンスタッフが「英語が
できるなら向こうへつれて帰りたい」と言ったのもわかる気が
します。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年1月31日 (土) 10時29分

ぽんぽこやまさん、僕の判断でコメントの一部を伏せ字にさせて頂きました。御了承下さい。

日本での上演が未だ実現しないロイド=ウェバーの「サンセット・ブルーバード」ですが、誰がノーマ・デズモンドを演じるかが一番の問題ですね。鳳蘭さんや麻実れいさんらが「是非やりたい」とテレビで仰っていたのを聞いた事があります。僕は市村さんが演じられても面白いんじゃないかな等と奇想天外なことを考えています。「ヘアスプレー」の母親役を男優が演じている例もありますし……

投稿: 雅哉 | 2009年1月31日 (土) 12時04分

失礼しました。

「サンセット」は四季が志村幸美で上演予定だったそうですが、
私は彼女がやるならもっと枯れた演技が出来る歳になってからでよかったという意見です。

麻実れい、鳳蘭というあたりがやはり世間的には妥当でしょうね。
あとは思いつくところでは夏木マリぐらいなものでしょうか。

市村氏が演じるというのも一興かと思いますが、歌の点でどうでしょうね・・・。

投稿: ぽんぽこやま | 2009年1月31日 (土) 22時44分

夏木マリさん、良いですね。

「サンセット・ブルーバード」をもし劇団四季がまだやる気があるのなら、戻ってきた久野綾希子さんくらいしか思い付かないですね。

映画化の話も5年くらい前から燻っています。グレン・クローズ、ライザ・ミネリが一番妥当な線でしょう。メリル・ストリープという噂もありますが、「マンマ・ミーア!」での彼女の歌唱力を聴くと辛いかなぁ。あとはバーブラ・ストライザンド……うむむ。

投稿: 雅哉 | 2009年2月 1日 (日) 00時31分

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