WALL・E/ウォーリー
評価:A
映画公式サイトはこちら。
掛け値なしの傑作。つい先日、発表されたロサンゼルス映画批評家協会(LAFCA)賞で作品賞を受賞(次点は「ダークナイト」)。アカデミー賞長編アニメーション部門の受賞は120%確実である。
冒頭30分くらいは全く台詞がない。いわば音楽と効果音のみのサイレント映画仕立てになっており「これはもしかしたら21世紀の黙示録、つまり、新たなる《2001年宇宙の旅》ではないか?」と気がついた。すると舞台が宇宙船に舞台が移るやいなやJ.シュトラウス/ワルツ「美しく青きドナウ」が流れ、HAL9000を彷彿とさせるコンピューターの反乱、そして足が退化した人間が立ち上がる場面で高鳴るR.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を聴くに及び、その予感は確信へと変わった。という訳で、スタンリー・キューブリック監督不朽の名作《2001年宇宙の旅》を知っているかどうかで本作の面白さは随分違ってくるので、未見の方は是非予習をお勧めしたい(勿論、そんな予備知識なしでも十分愉しめるウェル・メイドな作品だ)。
なお、人類が宇宙に移住し誰もいなくなった未来の地球でウォーリーが観ているのがミュージカル映画「ハロー・ドーリー!」(1969)である。これを唄っているのがマイケル・クロフォード。そう、後にロイド=ウェバーのミュージカル「オペラ座の怪人」初演版でタイトルロールに抜擢され、トニー賞を受賞するあの伝説の大スターだ。何とも嬉しいエピソードではないか!どんな曲かはこちらをご覧あれ。
ウォーリーの《猟奇的な彼女》=イヴのキャラクター設定も良かったし、特に二人で宇宙遊泳するシーンはロマンティックで素敵だった。
僕はピクサー・アニメーションの長編映画第一作「トイ・ストーリー」から全て映画館で観てきた。ピクサー作品は軒並みBuddy Film(友だち映画)である。つまり、仲間が一番ということだ。それはこの「ウォーリー」でも一貫している。しかし伝統を尊重しながらも、その枠から一歩踏み出して新たな地平を切り開いた所にこの映画の凄さがある。
ただし、これがピクサーの最高傑作だとは想わない。僕は「Mr.インクレディブル」や「レミーのおいしいレストラン」など、ピクサーの異端児=ブラッド・バード監督作品の方が好みだな。
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