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2008年12月 4日 (木)

ブロードウェイ♪ブロードウェイ/コーラスラインにかける夢

評価:A

映画公式サイトはこちら。どうも本作は世界に先駆け日本で最初に公開されたようだ。アメリカでは2009年4月24日に限定公開らしい。

観ていて涙が止まらなかった。しかし、このドキュメンタリー映画を観て感動するかは、その人が「コーラスライン」という作品を知っているかどうか、そして劇場という空間を愛しているかに掛かってくる気がする。

Line

ミュージカル「コーラスライン」がブロードウェイで初演を迎えたのは1975年。原案・振付・演出はマイケル・ベネット('87年にAIDSで死去)。トニー賞では最優秀作品賞など9部門受賞した。そして映画化されたのが'85年。僕はこれを封切り時に観ているのだが、その時既に劇団四季による舞台版も体験していた。日本初演が'79年だそうだから、その間に地方公演で観たのだろう。

'85年映画版の出来はB級。「ガンジー」でも分かるとおり、リチャード・アッテンボロー監督の演出は野暮ったく平板。余り作品に対する畏敬の念が感じられなかった。

「コーラスライン」の舞台となるのはある劇場、そこでミュージカルのオーディションを受けるために若いダンサーたちが集まってくる。彼らは演出家の求めに応じ、自分自身の物語を語り始める。

この作品は2006年にブロードウェイで再演され、そのオーディションの様子を追ったのが今回のドキュメンタリーである。応募した3,000人の中から19人だけが舞台に立つ切符を勝ち取れる。オーディションは最終選考まで8ヶ月間費やされた。

「コーラスライン」はマイケル・ベネットがダンサー達とワークショップを行い、そこで聞いた実際のエピソードを基に作り上げた作品である。そのワークショップの録音テープもドキュメンタリーの中で流され、更にオリジナル・キャストや作曲のマーヴィン・ハムリッシュへのインタビューも敢行。作品成立当時の様子が浮き彫りにされる。

つまり映画を観ているうちに、初演に至る過程と再演のオーディション、そして「コーラスライン」の物語そのものが渾然一体とる。それが実にスリリングなのだ。

再演の演出はボブ・エイビアン、初演時にベネットの振り付け助手をした人。またオリジナル版でコニーを演じたバイオーク・リーも審査に参加している。

コニー役を最終的に勝ち取るのは沖縄出身の高良結香。彼女の公式サイトはこちら。失業保険も切れてしまい、もう後がない彼女はオーディションに臨みこう言う。

"I really need this job."
「どうしてもこの仕事が欲しいの!」

またオーディションを受けた別の女優にカメラが向けられる。彼女からの知らせを古里で待つ父親へのインタビュー。彼も昔はプロのダンサーだったが、40歳の時舞台で大怪我をし、手術をした。その時は「もう踊れない」と絶望的な気持ちになったという。しかし、彼はこう続ける。

"But I can't regret what I did for love."
「(踊りを)愛したことに後悔はない」

実は上記2つの言葉は、「コーラスライン」の歌詞そのものなのである。こうして彼らの人生と作品が完全に重なり合う。つまり、「コーラスライン」とはダンサーの生き様それ自身であることが見事に描かれている。

このドキュメンタリーの白眉はポール役のオーディション場面だろう。男優の迫真の演技に審査員全員が涙をボロボロ流すのだ。「泣いたのは30年ぶりだ」と演出家のエイビアン。魔法の瞬間である。

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