ニーノ・ロータ(そしてフェリーニ)の想い出
これは記事「夢のミュージカル映画」の続きである。
僕は子供の頃、アガサ・クリスティのミステリーが大好きで、名探偵エルキュール・ポアロものを貪るように読んだ。小学校高学年の頃、クリスティの「ナイル殺人事件」が映画化され、親に頼んで映画館に連れて行ってもらった。その音楽を担当していたのがニーノ・ロータであった。
中学生になってからロータの音楽をよく聴いたが、むしろその頃は「太陽がいっぱい」「ロメオとジュリエット」「ゴッドファーザー」そしてフェリーニの「道」など、哀愁を帯びた甘美な旋律に惹かれていたような気がする。
フェリーニの映画も初期の作品「道」「カビリアの夜」などの素晴らしさはよく分かったが、高校生や大学生になって観た、後期の「甘い生活」や「8 1/2」はそもそも物語の意味からして理解不能だった。
しかしそれから約20年経って、「甘い生活」や「8 1/2」を観直してみた。すると、どうだろう!とても面白いのだ。今にして初めてフェリーニの倦怠や孤独、そして絶望が理解出来る。彼がこれらの作品を撮った年齢に自分が近付いたことが大きいのかも知れない。僕は悟った。映画を観るべき《適正年齢》というのは確かにあるのだと。
ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」(1960)もそう。中学生で初めて観た時は単にミステリー映画としてハラハラ、ドキドキし、強い感銘を受けた。しかし今なら「同性愛のもつれから引き起こされた悲劇」という、この映画に隠されていた《裏の物語》を読み取ることが出来る。それを教えてくれたのは故・淀川長治さんだった。
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イタリア映画界の巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ(「ルートヴィヒ/神々の黄昏」「ベニスに死す」「家族の肖像」)はバイセクシャルだった。そして「太陽がいっぱい」に出演したアラン・ドロンを愛していた。ヴィスコンティの「山猫」(1963)にドロンは出演しているが、この映画に曲を提供したのもニーノ・ロータである。非常にシンフォニックな音楽で僕は大好きだ(後にヴィスコンティはドロン主演で彼のライフワーク、プルーストの「失われた時を求めて」を撮ろうと奔走したが、ついに夢は果たせなかった)。
でも最近はむしろ、「カビリアの夜」「甘い生活」「8 1/2」などロータが書いたJAZZやサーカス音楽に惹かれる自分を感じる。ようやくその良さが分かる年齢に達したようだ。人生とはまことに不思議なものである。
つづく (To Be Continued...)
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