ドナウ川の流れにのせて~飯森範親/いずみシンフォニエッタ大阪 定期
いずみシンフォニエッタ大阪の記念すべき第20回定期演奏会を聴くため、いずみホールに足を運んだ。指揮は現代音楽の紹介に心血を注ぐ飯森範親さん。
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今回はザ・フェニックスホールとの連携企画でドナウ川周辺諸国の音楽にスポットライトが当てられた。昨年の「環バルト海の音楽」というテーマを引き継ぐものとなっている。
- いずみシンフォニエッタ大阪の描く北欧(昨年のレビュー)
まずは恒例となった、開演前のロビーコンサート。
マリンバは近くで聴くととても大きい音がしてびっくりした。低音が腹に響く。
メイン・メニューは以下の通り。
- 川島素晴/シンフォニア「ドナウ」(世界初演)
- クルターク(ルーマニア)/...幻想風に...
- カプースチン(旧ソ連、現ウクライナ)/11人の奏者のための協奏曲(世界初演)
- ニクレスク(ルーマニア)/ISON I (日本初演)
- シェーンベルク(オーストリア)/室内交響曲 第1番
飯森さんと川島素晴さんのプレ・トークもあった。川島さんの新作は想像上のドナウ川クルージング。まずは起点、ドイツ南部のシュヴァルツヴァルト(黒い森)から始まる。森の囁き、水の湧き出る音。そしてJ.シュトラウス/ワルツ「美しく青きドナウ」が主流となり、それにスメタナ/交響詩「モルダウ」、ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」第2楽章、ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲「春」第1楽章から小川の情景などが加わる。やがて川が下るとブラームス/ハンガリー舞曲やリスト/ハンガリー狂詩曲が聴こえてきて、いつしか奔流はルーマニアの作曲家イヴァノヴィチ/ワルツ「ドナウ河のさざなみ」へと移行する。そこへバルトーク/ブルガリア舞曲が登場し、最後ウクライナから黒海に注ぎ込むところで、ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」より"キエフの大門"が見えてくるという仕掛け。正に音楽のコラージュ。ワクワクして聴いた。
クルタークはハンガリーの民族楽器ツィンバロンの生演奏が聴けたのが嬉しかった。どんな楽器かというと→今回演奏された斉藤 浩さんのオフィシャル・サイトへ。
カプースチンは天才ピアニスト、マルク=アンドレ・アムランのCDで知っていたが、ピアノ独奏曲以外はこれが初体験となった。彼の音楽は旧ソ連から想像されるような重苦しいものでは全くなく、シンコペーションやベース(コントラバス)のピッツィカート多用などJAZZYな雰囲気に満ちている。不協和音のない調性音楽で耳に馴染みやすく、大いに気に入った。これは傑作!
ニクレスクという作曲家は今年亡くなったそうである。日本では殆ど知られておらず、様々な楽器の音が集合してユニゾン(単一)となり、やがてまたバラバラとなってはさらに別の音に収束するということを繰り返す摩訶不思議な曲だった。
シェーンベルクの曲はまだ彼が十二音技法を編み出す前に作曲されたもので、マーラーやツェムリンスキーなど世紀末ウィーンの音楽を彷彿とさせる芳醇で濃密な世界。
多彩な音楽を堪能し、とても充実したひと時を過ごすことが出来た。申し分のないパフォーマンスを披露した演奏者たち及び、いずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督・西村 朗さんに心から敬意を表したい。
次回のいずみシンフォニエッタ大阪定期演奏会には指揮者の下野竜也さんが登場。イギリス特集である。詳細はこちら。
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