秋山和慶/大阪市音楽団 定期
日本を代表するプロの吹奏楽団である大阪市音楽団(市音)の定期演奏会をザ・シンフォニーホールで聴いた。指揮は市音の特別指揮者・芸術顧問の秋山和慶さん。秋山さんは以前から大阪フィルハーモニー交響楽団を振られているし、12月には大阪シンフォニカー交響楽団の定期演奏会にも登場される予定。
曲目は以下の通り。
- ティケリ/ワイルド・ナイツ!
- チェザリーニ/青い水平線
- ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」セレクション(森田一浩 編)
- 櫛田胅之扶(てつのすけ)/星へのきざはし ~第2部~(世界初演)
- バーンスタイン/キャンディード序曲(W. ビーラー 編)
- ガーシュウィン/パリのアメリカ人(保科 洋 編)
疾風怒濤の如く駆け抜けるティケリのスピード感が凄まじい!これは今後、吹奏楽コンクール自由曲で人気となるだろう。イメージ的にC.T.スミス/華麗なる舞曲を彷彿とさせるものがあった。ティケリはNHK交響楽団が初めて吹奏楽を演奏したことで話題となった"N響ほっとコンサート2006"で「アメリカン・エレジー」という曲を聴いたことがあるが、1999年コロンバイン高校での銃乱射事件の追悼として書かれた大変静かな曲だった(コープランド/クワイエット・シティに近い感じ)。だから「ワイルド・ナイツ!」はイメージが180度違ったので、こういう曲も書く人なんだと驚いた。
「青い水平線」は2003年に大滝実/埼玉栄高等学校が全日本吹奏楽コンクールで演奏し金賞を受賞して以降、既に10校が全国大会で取り上げている。ここ最近は中学校ばかりだが。コンクールでは大体8分以下にカットされたものなので、全3楽章(I. 光を放つ生き物たちII. 大ダコに立ち向かうリヴァイアサンIII. シロナガスクジラ)を通して聴くのは初めての体験。終楽章ではスコア付属のCDに収録されている《海中のクジラの声》を再生する仕掛けもあり、気分はBBC製作のドキュメンタリー映画「ディープ・ブルー(公式サイトはこちら)」だった。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部が全日本吹奏楽コンクール三出休みだった2006年に、宇畑知樹先生からの依頼で森田一浩さんが編曲したもの。(埼玉)県大会と(西関東)地区大会の招待演奏で披露されたそうである。ちなみにこの同じ年、丸ちゃん(丸谷明夫先生)率いる淀工(大阪府立淀川工科高等学校)も三出休みで、淀工は関西大会の招待演奏でP.グレンジャー/リンカンシャーの花束をやっている。そうそう、宇畑先生が丸ちゃんからの招きでなにわ《オーケストラル》ウィンズの客演指揮者として登場したのもこの年である。
例えば「エルザの大聖堂への行列」など、僕は決して吹奏楽向きではないと想っている。やはりワーグナーの音楽に弦は必要なのだ。でも不思議なことに今回の「マイスタージンガー」に違和感はなかった。森田さんの巧みなアレンジおよび構成力の賜であろう。
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櫛田胅之扶さんといえば、「飛鳥」「雲のコラージュ」など日本的情緒に溢れた作風で有名だが、星座やギリシャ神話に題材を求めた新作 はへヴィメタ、フュージョン、ワルツなどが登場するモダニズムで書かれている。珍味……これ以外に表現しようのない曲だった。第2部が3曲。今後第3部 と第4部を書き、合計12曲にするという構想だそうだ。櫛田さんご本人も会場にお越しになっていた。
プログラム最後の2曲はアメリカを代表する名曲。秋山さんの指揮は速めのテンポ設定、引き締まってぶれないリズム感があって、僕はとても好きだ。最近は関西で指揮台に立たれる機会が少ないのが大変残念である(現在、広島交響楽団音楽監督および九州交響楽団主席指揮者などをされている)。
市音の定期は毎回ライヴ・レコーディングされ、後にCDが発売されるのでお楽しみに。今回も大変聴き応えありますぞ。
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