宝塚月組「夢の浮橋」「Apasionado !! 」
宝塚大劇場で月組公演を観劇。
「夢の浮橋」は、源氏物語の最終章「宇治十帖」を舞台化したもの。台本・演出は和物に定評のある大野拓史。これが大劇場デビューとなる(演出のみなら先に「飛鳥夕映え」あり)。大野氏のインタビュー記事はこちら。
大野作品では2005年にシアタードラマシティで観た雪組公演「睡れる月」(主演:朝海ひかる)に深い感銘を受けた。室町時代を舞台にしっかりした時代考証、そして古(いにしえ)の日本に対する並々ならぬ愛情が伝わり、たしかな美意識がそこにあったからである。だから期待していた通り「夢の浮島」は素晴らしい作品となった。
物語の発端である舞の場面から、モダニズムを感じさせる衣装に目を奪われた。場面転換も巧みで、全体を見通す目があり、明確なビジョンで貫かれている。特に宇治神社の祭礼の場面、光源氏の幻影が傀儡(くぐつ=操り人形)として現れる場面は鮮烈で、演出の巧さに唸った。和物に命をかける大野拓史の独壇場である。凄腕の若手演出家登場に快哉を叫びたい。VIVA ! TAKARAZUKA
匂宮と薫を演じた瀬奈じゅんおよび霧矢大夢が好演。文句なし。
なお、源氏物語は人物関係が複雑に入り組んでいるので、観劇前に公式サイトの《ストーリー》と《人物相関図》は予め予習されておくことをお勧めしたい。こちらからどうぞ。
また、実は匂宮は薫のことを愛していたのではないか?と仮説を立てて観ると、別の光が当てられ、物語が違った様相を呈してくるだろう。今回僕は「夢の浮橋」を見ながら、アラン・ドロン主演のフランス映画「太陽がいっぱい」(原作:パトリシア・ハイスミス、再映画化が「リプリー」)と物語の構造が似ていることに気がついた。友人フィリップを愛するがあまり、同一化して彼の恋人までも奪おうとする青年トム・リプリーが主人公である。興味のある方は浅田 彰氏の批評《「太陽がいっぱい」から「リプリー」へ》をご覧あれ。
更に言えば、登場人物の全てが亡くなった光源氏の影に囚われているという図式は、映画やミュージカルにもなったダフネ・デュ・モーリアの小説「レベッカ」を彷彿とさせるものがある。
さて後半、ファナティック・ショー「Apasionado !! (アパッショナード)」は作・演出/藤井大介。"Apasionado"とはスペイン語で「熱い」「情熱の男」という意味だそうだ。
僕は藤井のショーに関して、「Cocktail ーカクテルー」や「Joyfull !!」等、センスに欠ける駄目な演出家だと想っていた。しかし意外なことに今回の新作は非常に出来が良くて吃驚した。冒頭、SFチックな狂言廻しが登場した時は「またやっちまったか!」と落胆したのだが、その後ラテンのリズムが盛り上がり、煌びやかな衣装に包まれ、圧倒的な人海戦術によるダンスが始まるともう熱狂の渦に飲み込まれた。嗚呼、That's TAKARAZUKA !!
宝塚歌劇で芝居とショーの二本立ての場合、《どちらも大当たり》というのは極めて希なことである。だからこそ、今回の組み合わせは是非とも劇場に足を運ばれることをお勧めしたい。
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(上の写真はホテル阪急インターナショナルで撮影)
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