《17世紀》 中野振一郎/チェンバロ・リサイタル 2008
中野振一郎先生のチェンバロを大阪・イシハラホールで聴いた。
中野先生は紛れもなく、日本一のチェンバリストである。また、世界的に見ても十指に入る傑物であることは間違いない。僕はこの一年でバルトルド・クイケンと来日したチェンバロ奏者や、ラ・プティット・バンドのメンバー、そしてトン・コープマンの演奏も体験したが、いずれも中野先生と比較すると聴き劣りがした。
並外れた技量、畳み掛けるスピード感、そして先鋭な切れ味。どれをとっても超一級品。これを聴かずして何を聴く?
昨年のリサイタルの感想はこちら。今年のテーマは17世紀。J.S.バッハ登場直前の時代にスポットライトが当てられた。
「最後の宗教戦争」と呼ばれた三十年戦争後の荒廃したドイツ、そして「太陽王」と呼ばれたルイ14世の下でバロック文化が頂点に達したフランス・ブルボン朝。フローベルガーやルイ・クープラン、ブクステフーデなど余り馴染みのない作曲家たちの曲がプログラムに並んだが、質実剛健なドイツ音楽、そして華麗なフランス宮廷舞曲などそれぞれの特徴が鮮明で、とても面白い音楽体験であった。
この素晴らしいリサイタルを聴き逃した人々に朗報。12/21(日)にザ・シンフォニーホールで開催される「第九deクリスマス」、この第2部に中野振一郎先生が登場する。詳細はこちら。また、第1部で演奏される延原武春/テレマン室内管弦楽団&合唱団によるベートーベン/交響曲第9番は以前聴いたことがあるが、ベートーヴェンが指定したメトロノーム速度を遵守し、ピリオド・アプローチによる目の覚めるような快演だった。この年末に関西で演奏される第九のうち唯一聴く価値のあるものとなるだろう。これは絶対お勧め!
えっ、大植/大フィルの第九?興味のある方は昨年の感想↓をお読み下さい。
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