炎のジプシー・ブラス
兵庫県立芸術文化センター中ホールでファンファーレ・チォカリーアを聴く。
僕が初めてジプシー・ブラスなるものの存在を知ったのはカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞した「アンダーグラウンド」(1995)である。監督は旧ユーゴスラビア・サラエヴォ出身のエミール・クストリッツァ。ユーゴ激動の50年を描いた作品で、映画同様にジプシー・ブラスのパワフルな演奏にも強烈な印象を受けた。クストリッツァがヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞した「黒猫・白猫」('98)でもジプシー・ブラスは大活躍。
今回来日したチォカリーアは東欧・ルーマニア北東の寒村ゼチェ・ブラジーニからやって来た。地図にも載ってないし駅もない。村の人口が400人でオヤジ100人。うちなんと85%がブラス吹きだそうである!
ジプシー・ブラスは19世紀にバルカン半島で興った。ロマ(ジプシー)民族により演奏され、世界最速のブラスと言われている。実に迫力があり、聴いていて爽快だ。
ロマと言えばヴァイオリンが有名だが、彼らは11世紀頃に北インド・ラジャスタン地方から西へと流浪の旅に出た移動型民族。ヨーロッパにたどり着く前、オスマン・トルコを経由しており、この時オスマン帝国の軍楽隊から多大な音楽的影響を受けたと想われる。またチョカリーアの村があるモルドヴァ地方にはその昔ドイツやオーストリアの移民たちの居住区があったそうで、彼らがブラスバンドを持ち込んだためここではジプシー・ブラスが定着した。
演奏だけではなくベリーダンスや、インドからのゲスト=クィーン・ハリシュの踊りも披露された。
会場は補助席も出る大盛況。客席でも手拍子や体でリズムを取ったりしてノリノリ。
コンサートが終演し席を立つと、なにやらロビーでブラスの響きが。出てみるとメンバーが演奏をしていて、聴衆とダンサーが一緒に輪になって踊り出しているではないか!
熱狂の渦はホール内からロビーへと移り、さらにヒートアップ。
いやはや実に愉しかった。ジプシー・ブラス最高!
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