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2008年10月

枝三郎・九雀 二人会@繁昌亭

 10月22日、入門が同期である桂 九雀枝三郎の落語会を繁昌亭で聴く。入りは70人くらいだった。

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  • 雀五郎/手水廻し
  • 枝三郎/君よモーツァルトを聴け(三枝 作)
  • 九雀/軒付け
  • 九雀/壷幽霊(北野義則 作)
  • 枝三郎/親子茶屋

雀五郎さんは各センテンスの間が空き過ぎ、ダレた。

一方、九雀さんは次々と言葉が飛び出して来てリズム感があり、聴いていて心地いい。趣味でクラリネットもされるそうで、大阪のジャズクラブ・ロイヤルホースに出演したり、奈良県の市民吹奏楽団「セントシンディアンサンブル」と共演されたりしている。この会にもシンディの団員の方が聴きに来られていたようだ。

九雀さんは爆笑王と呼ばれた故・桂 枝雀のお弟子さん。枝雀一門は上方落語協会を脱退したので繁昌亭昼席の高座には上がれず、夜席も協会員から招かれない限り出演出来ないというお話をマクラでされた。ちなみに枝三郎さんの師匠は桂 三枝さん。

繁昌亭はこの9月に2周年を向かえた。それを記念して行われた朝日新聞の三枝さんに対するインタビュー記事の切抜きが通路に掲載されている。その一部を以下、引用する。

僕は繁昌亭を「革命の記念碑」だと思っています。まず、03年に上方落語協会の会長選挙を実現できたことが、今までの流れを変える大きな革命でした。私が選ばれたのですが、それまでしばらくは「次は誰それに」と互選で決まっていた。これでは皆が意見を言えなくて風通しが悪いし、運営への不満から退会する人もいた。それで選挙になった。そんな革命の集大成が繁昌亭なのです。

ここに書かれている脱会者こそ枝雀一門と、枝雀さんを「兄ちゃん」と慕っていた桂ざこばさんのことである。1994年のことだった。そして2003年に三枝さんが新会長に就任し、その翌年にざこばさんは上方落語協会に復帰している。しかし99年に枝雀さんは既に亡くなっており、その弟子たちは未だ復帰を果たしていない。

三枝さんは、上方落語協会誌「んなあほな」第12号に次のようにも書かれている。

 今は亡き桂枝雀兄さんとはテレビの番組でよく一緒させて頂き、落語の話をいっぱいしていろいろ教えて頂きました。繁昌亭の舞台に出て頂けないのが残念でなりません。
 師匠の意見が聞けなくなったお弟子さん達は、勝手に行動出来ないので、難しいとは思いますが、枝雀兄さんのお弟子さん達に、昼の高座を踏んで頂ける日を、あせらず、いつまでも待っております。

枝雀一門はこの三枝さんの呼びかけに対してどう答えるのか?僕は今、注目している。

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第56回全日本吹奏楽コンクール(2008)高校の部を聴いて《後編》

この記事は第56回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて《前編》と併せてお読み下さい。

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東京代表 東海大学菅生高等学校 銀賞 / 八王子高等学校 銀賞

東京勢は昨年金賞を受賞した高輪台都立片倉が共に3出休みだったため、今年は低調だった。

菅生の自由曲はホルスト/組曲「惑星」より木星。とにかくテンポが遅い。そもそもこの曲は吹奏楽に向いていないんじゃないかなぁ。本来弦楽器が聴く速いパッセージ(音符群)を無理やり木管に置き換えたために難易度が高くなり、テンポを上げられないのだろう。それからpやppで十分に音が落ちないので平板な演奏になった。

八王子の課題曲IIIは磨かれたサウンドでなかなか良かった。自由曲、R.シュトラウス/交響詩「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は冒頭ホルンの事故が惜しかったが、これはホルン・パートが非常に難しい曲なので仕方ないだろう。シュトラウスの父フランツはミュンヘン宮廷歌劇場の首席ホルン奏者だった。だから彼の音楽はホルンが大活躍をする。八王子の演奏は全体におどけたユーモアがあり、僕は好感を持った。




西関東代表 埼玉県伊奈学園総合高等学校 金賞 / 春日部共栄高等学校(埼玉県) 銀賞 / 埼玉県松伏高等学校 銅賞

伊奈学園の楽器の搬入が終わり、ステージが明るくなって最初に感じたのは「宇畑先生、白髪が増えたなぁ!」ということであった。宇畑知樹 先生は伊奈学園'84開校時の第一期生だそうで、'91年に武蔵野音楽大学卒業と同時に音楽科教員として同校に赴任され、現在に至るとか。この前日、「中学校の部」でも伊奈学園生を引きつれ全国大会に出場され、さらに1週間後には大阪国際会議場で行われた「一般の部」でも伊奈学園OB吹奏楽団を指揮された(「職場・一般の部」も聴いたので、感想は後日アップします)。お疲れ様です。

伊奈学園の課題曲IIは優しく柔らかい響きが印象的だった。自由曲はJ.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番よりシャコンヌ(森田一浩 編)。そこにバッハの厳しさはなく、むしろ哀しみと慈愛で聴く人々を包み込むかのような感動的な演奏であった。文句なしの。しかし、コンクールの審査員に編曲者の森田一浩さんが入っているのは、些かフェアではない気もするのだが……。ちなみに今年、森田さんが編曲した自由曲を演奏したのは3校。そして2校、1校という結果であった。

吹奏楽の世界では一躍人気となった名曲、中橋愛生/科戸の鵲巣(しなとのじゃくそう)を2006年に全国大会初演し、金賞を受賞したのが春日部共栄である。クラシック音楽の編曲ものが席巻する「高校の部」において、邦人作曲家のオリジナル曲に積極的に取り組むこの学校(都賀城太郎 先生)の姿勢は高く評価したい。今年の自由曲は真島俊夫/鳳凰が舞う~印象、京都 石庭 金閣寺~。フランスで開催された国際作曲コンクールでグランプリを受賞した傑作だ(ちなみに真島さんは淀工の十八番「カーペンターズ・フォーエバー」の編曲者でもある)。2006年にこれを全国で初演した川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団も良かったが、春日部共栄もそれに引けをとらぬ演奏だった。竹林を抜ける風の音、清流の静けさをやぶりコーンと心地良く鳴る「鹿おどし」。日本情緒溢れる素晴らしい演奏だった。ここが銀賞という結果は全く理解に苦しむ。

松伏自由曲は三善 晃/「竹取物語」より(天野正道 編)。透明感があって、冴え冴えとした光を放つ月が目に浮かぶような演奏であり曲だった。ちなみに今年「高校の部」で天野さん編曲による自由曲を演奏したのは4校。結果は1校、3校だった。




東海代表 光ヶ丘女子高等学校(愛知県) 銀賞 / 安城学園高等学校(愛知県) 銀賞 / 長野県長野高等学校 銅賞

光ヶ丘女子の課題曲は思い切りのいい、豪快な演奏だった。自由曲はドアティ/ストコフスキーの鐘。2005年に川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団がコンクール初演した曲で、僕はとても好き。もともとオーケストラのために作曲された交響曲第3番「フィラデルフィア物語」第3楽章を作曲者自身が編曲したものだそうで、オリジナル全曲も是非聴いてみたい。どうです、下野竜也さん?

光ヶ丘はハープが最前列左右に配置され、銅鑼や鐘も後方で左右対称に配置されたのが面白かった。またコントラバスを弾く音が強烈でとても良かった。去年がで今年がという審査基準が僕にはさっぱり理解出来ない。

安城学園の自由曲はドヴォルザーク/序曲「謝肉祭」(鈴木英史 編)。軽やかでのびやか。音楽を奏でる歓びに満ちた、高校生らしい演奏だった。




中国代表 岡山学芸館高等学校 金賞 / おかやま山陽高等学校 銀賞 / 出雲北陵高等学校 銀賞

中国支部代表が金賞を受賞するのは2002年以来6年ぶり、 岡山学芸館としては初。しかし大変申し訳ないが、ここが金賞を受賞したのはとても意外だった。演奏を聴きながら取ったメモをそのまま以下に書く。ちなみに自由曲はコダーイ/ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲。編曲は森田一浩さんであった。

課題曲II - タンギングの歯切れが悪い。ホルンはよく鳴っている。
自由曲 - 緊張感が足りない。それぞれの変奏曲の特徴が出ていない。聴いていてダレる。

おかやま山陽の自由曲はマッキー/「翡翠(かわせみ)」より I.雨上がりに... II.焔の如く輝き。小気味よく格好いい曲。リズミカルで明るく、僕はコープランド(「ロデオ」、「エル・サロン・メヒコ」)に近いなと想った。「レッドライン・タンゴ」も最高だし、マッキーは凄い作曲家だ。現代作品の紹介に力を注ぐ指揮者・飯森範親さんも大絶賛→シェフ範親の窓へ。




四国代表 愛媛県立伊予高等学校 銅賞 / 愛媛県立北条高等学校 銅賞

四国地区は7年連続銅賞のみという不名誉な記録に昨年の代表校が終止符を打ち、1という結果であった。しかし今年は……。僕が聴いていても、この評価は致し方ない気がした。




九州代表 精華女子高等学校(福岡県) 金賞 / 原田学園鹿児島情報高等学校 銀賞 / 福岡県立嘉穂高等学校 銀賞

精華女子といえばマーチングの華。皆、日に焼けている。そして彼女たちは坐った姿勢がとても良く、しっかりした美意識が感じられる。課題曲 I は各々のフレーズが丁寧に歌われ、心が一つになっているのが伝わってきた。自由曲はC.T.スミス/フェスティバル・ヴァリエーションズ。初っ端からホルンが大活躍し、アクロバット的技巧を要求される曲として有名。作曲を委嘱した空軍バンドの首席ホルン奏者が大学時代スミスのライバルであったことから、いじわるで難しく書いたという伝説があるくらいである。昨年、精華を聴いた感想に僕は「特にホルンの咆哮が凄まじかった!」と書いたが、その表現がそのまま今年にも当てはまる。今年出場した全29校の中、精華のホルンは最強、6人が完璧に合っていた。また全体も生き生きしたリズムでその快刀乱麻の演奏にワクワクした!

昨年、高校の部で文句なしにNo.1の名演だったのは大滝 実/埼玉栄の「カヴァレリア・ルスティカーナ」であった。そして今年は前半の部が丸ちゃん/淀工の「大阪俗謡による幻想曲」、後半の部は藤重佳久/精華女子の「フェスティバル・バリエーションズ」に止めを刺す。

さて、いよいよ注目の初登場、鹿児島情報高である。屋比久勲 先生が福工大府からこちらに移られてたった2年。きっちり結果を出してこられたのはさすがだ。

まずステージが明るくなっての第一印象。「楽器がみな新品でピカピカ!」チューバなんかライトを反射してとても眩しかった。課題曲 I は中間部で音量がよく落ちていて、全体にカチッと決まった演奏。自由曲、R.W.スミス/交響曲第2番「オデッセイ」は金管の輝かしいファンファーレに「嗚呼、これぞ屋比久サウンド!」と快哉を叫びたくなった。途中、コーラスがあったりマウスピースだけで吹く箇所があったりとなかなか愉しい。聞くところによると1,2年生だけのバンドということで、まだまだ演奏に未熟な所も見受けられたが屋比久 先生とて最初から金賞は考えていらっしゃらないだろう。来年こそ勝負の年と見た。鹿児島情報高の演奏が終わると、僕の隣に坐っていた男性が、連れの女性に「う~ん、屋比久臭がした」と語っていたのがとても面白かった。

嘉穂の自由曲はR.シュトラウス/アルプス交響曲。もっとアルプスの明るい陽光とか、澄んだ空気感が欲しかったなぁ。それから嵐の場面でウィンド・マシーンが乾いた音がして違和感があったこと、全体の響きが混沌としていたのが残念であった。

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最後に表彰式の話。指揮者賞贈呈の場面ではそれぞれの学校の生徒たちが、「せーの」という合図と共に「~先生、大好き!」とか「愛してるぅ」とか「~先生、ありがとう!」とか一斉に声を掛ける。傍から見ていてとても微笑ましい光景だ。しかし淀工はこれをしない。

結果発表で「ゴールド、金賞」とアナウンスされても淀工の生徒たちは歓声を上げないし、卒業生や保護者も淡々と拍手をするのみ。きっと、そのような丸ちゃんの教育方針なんだろうなと僕は想った。

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オーケストラと吹奏楽の幸福な出会い~下野竜也×外囿祥一郎

下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団のスペシャルライヴに往った。ゲストはユーフォニアム奏者の外囿祥一郎さん。《吹奏楽ファンに捧げる》という今回の企画は下野さんの発案で始まったという。

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司会を担当したのは淀川工科高等学校(淀工)教諭の丸谷明夫 先生(丸ちゃん)。

チケットは完売で、高校生の比率がとても高かった。客席の雰囲気はなにわ《オーケストラル》ウィンズの演奏会に近いように感じられた。

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プログラム最初は、

  • ショスタコーヴィチ/祝典序曲

吹奏楽版はグリーンコンサート丸ちゃん/淀工の演奏を2年連続聴いているが、考えてみればオーケストラ版を生で聴くのは初めてだった。

僕は以前から大フルのアキレス腱はトランペット・パートであると再三にわたり書いてきたが、またまたミスの連発をやらかしてくれた!もうはっきり言うが、淀工のトランペットは「祝典序曲」で大フィルみたいに音を外さない。高校生に負けるなんて実に情けないじゃないか。

トランペットのバンダ(金管別働隊)は大阪シンフォニカー交響楽団の徳田知希さん、松田貴之さんらが担当され、彼らの方が上手いのが聴いていて歴然としていた。こんな体たらくで来年の大植さんとの定期、マーラー/交響曲第5番は本当に大丈夫なのか?しっかりして貰いたい。

なお、公平を期すため書いておくがプログラム後半、トランペットのトップが秋月孝之さんに交代してからは目立ったミスはなくなった。

  • アーノルド/ピータールー序曲

イギリスの作曲家アーノルドは9曲の交響曲を書いているが、日本のオケが彼の作品を取り上げることは皆無に等しい。むしろ、吹奏楽の世界で盛んに演奏されている作曲家である。僕は映画のために書かれ、2006年普門館での井田重芳/東海大付属第四高等学校(北海道)の名演も記憶に新しい「第六の幸福をもたらす宿」が特に好きだ。

今回の演奏会で非常に感銘を受けたのは下野さんの指揮の充実振りである。力強く、スケールの大きな音楽を展開し、ゆったりとした箇所でも堂々として、緊張した糸が緩むことが片時もない。下野/大フィルが2000年、NAXOSに録音したCD「大栗 裕 作品集」は退屈な凡演だと僕は想っているのだが、この8年間でマエストロは飛躍的進化を遂げられたのだなぁと感じ入った。是非、現在の下野/大フィル大栗 裕/大阪俗謡による幻想曲を生で聴いてみたいものだ。

  • エレビー/ユーフォニアム協奏曲

ここでゲストの外囿祥一郎さん登場。実は下野さんと外囿さんはどちらも鹿児島県出身で同い年(1969年生まれ)。中学校の時は学校は異なれど、二人とも吹奏楽部でトランペットを吹いていて、お互いに面識はあったとか。そして外囿さんは福岡工業大学付属(現、城東)高等学校に進学し、鈴木孝佳 先生からの指示でユーフォに転向されたそうだ。

「厳しい先生だったでしょう!」と丸ちゃん。「でもだからこそ、貴方のような名手が育ったんでしょうね。あの当時、普門館で聴いていて福工大府のユーフォは凄く良い音を出してるなぁと感心してたんですよ」

帰宅して早速調べてみた。外囿さんが高校生だった頃、福工大府が全国大会で演奏した自由曲は86年レナード・バーンスタイン/ディベルティメント、そして87年ジョン・ウィリアムズ/カウボーイ序曲あたりのことかと想われる。

外囿さんの演奏は超絶技巧で流石、日本一の奏者だと感嘆した。先日、大阪市音楽団の定期で聴いたスティーヴン・ミードと互角の勝負。僕は特に、過剰にならず節度のあるビブラートのかけ方に感心した。2階サイド席の男子高校生たちも身を乗り出すようにして夢中になって聴いてた。

エレビーの曲自体も良かった。特に、丸ちゃんが一番好きだという第3楽章「ラプソディ」の美しさはこの協奏曲の白眉だろう。亡くなったユーフォニアム奏者ルイへ捧げられた音楽だそうで、むしろ「エレジー(悲歌)」と名付けたいくらい、愛惜の念に満ちた名曲である。

また第2楽章は常動曲(無窮動)と言うべき速いパッセージが続くのだが、途中外囿さんが装着したミュート(弱音器)をコンサートマスターの長原幸太さんが早業で抜き取るという場面もあり、エキサイティングだった。

丸ちゃんから長原さんへのインタビュー・コーナーもあった。何と中学生の時、彼は無理やり吹奏楽部に入部させられ、ユーフォを吹いたことが一瞬だけあったとか。「でも楽譜を移動ドで読まなければいけないのがとても違和感があって、すぐ辞めました」「(固定ドの)フルートだったら続いたかも知れませんね」と丸ちゃん。「いや~そもそも音が出ませんから」(場内笑い)……このような和やかな雰囲気で演奏会は進行した。

  • リード/アルメニアン・ダンス・パート I

吹奏楽の名曲中の名曲。まあ言ってみればオーケストラにとってのベートーヴェンの交響曲みたいな存在である。この度、下野さんからの依頼でオーケストラ用に編曲されたのは中原達彦さん(→公式サイトへ)。途中、ヴァイオリン・ソロやチェロのソロ(名手:近藤浩志さん)もあり、これはこれでなかなか良かった。

考えてみればこの曲は元々、リードがアルメニアの民謡を採集したものであり、ブラームス/ハンガリー舞曲と成り立ちが似ている。ハンガリー舞曲は四手用のピアノ曲として書かれたものが管弦楽用に編曲されたわけだが、作曲者自身によるものは21曲中たった3曲しかない(有名な第5番は他者の編曲)。だからアルメニアン・ダンスが日本人の手でオーケストラ曲に生まれ変わってもそんなに違和感はなかった。

編曲者の中原さんも会場にいらしていたのだが、アルメニアン・ダンスが好きで好きで仕方がないという丸ちゃん下野/大フィルの演奏に興奮して段取りを忘れてしまい、後になって慌てて中原さんを紹介するという微笑ましい一幕もあった。

  • J.S.バッハ/コラール「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」(レーガー 編)

弦楽合奏用に編曲されたもの。つまり、吹奏楽ファンで今回初めてオーケストラを聴く人々に弦楽器の音色の魅力を知って欲しいという想いを込めた下野さんのしたたかな戦略である。弦楽器群に関する限り、大フィルの実力は日本でトップクラスであり、静かに心に響く気高き演奏であった。その意図は十分観客に伝わったのではないだろうか?

  • レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」

これはもう、下野/大フィルの真骨頂!情熱的で気迫に満ちた指揮、そしてそれに正面から応え、最大限に機動力を発揮するオケ。会場からは割れんばかりの拍手。僕は同曲をラモン・ガンバ指揮で昨年9月の定期でも聴いており、こちらも大変な感銘を受けたが、今回もそれに匹敵する名演だった。

また丸ちゃんの紹介「吹奏楽ファンにアンケートを実施したら、オケで演奏して欲しい曲の第1位となる……実際にした訳ではないのですが」には場内大爆笑となったことも付け加えておく。

アンコールは、

  • ヴォーン=ウィリアムズ/イギリス民謡組曲からマーチ

ここで下野さんが「指揮は丸谷明夫先生です!」と宣言して会場はどよめいた。これは丸ちゃんも寝耳に水だったらしく、固辞しようとするが下野さんはスキップしながら舞台袖に引っ込まれた。実はこれ、なにわ《オーケストラル》ウィンズ2005で、丸ちゃんが振ったことのある曲なのだ。う〜むシモーノ、おぬし、中々策士じゃのう。しかし、マーチと言えば丸ちゃん。一旦指揮台に立てば見事に振り通したことは言うまでもない。

こうして夢のような演奏会は幕を閉じた。出来うることならば、この会場に集った高校生諸君が将来大フィルの観客として育っていってくれますように。そしてこの日、初めて吹奏楽の世界にふれたクラシック・ファンも、吹奏楽の演奏会に興味を持って足を運んでくれますように。それこそが、下野さんと丸ちゃんが心から願っていることなのだから。

記事関連ブログ紹介:
不惑ワクワク日記

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第56回全日本吹奏楽コンクール(2008)高校の部を聴いて《前編》

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昨年、第55回全日本吹奏楽コンクールの感想に僕は全29校×12分( = 5.8時間)の演奏をぶっ通しで聴いて疲れたと書いているが、今年は不思議と最後まで疲労感はなかった。ただし課題曲4曲を延々と繰り返し聴くことになるので、そちらは確かに飽いたけれど。

記事「関西吹奏楽コンクールを聴いて2008《後編》」に朝日作曲賞を受賞した課題曲 I 「ブライアンの休日」を選曲するのは鬼門ではないかと考察したが、全国大会に出場した高校の選んだ課題曲と、その結果の内訳を以下に示す。

  • 課題曲 I   6校→1校
  • 課題曲 II  9校→6校
  • 課題曲III  9校→2校
  • 課題曲IV  5校→1校

コンクールの選曲は難しい。そして実は《今年決して選んではならない課題曲》だった「ブライアンの休日」で唯一、金賞に輝いた精華女子高等学校はさすがである。

さて、昨年ブレーンミュージックの販売した全日本吹奏楽コンクール・金賞団体集DVD-BOXの特典ディスクについて、僕は下記記事に書いた。

そこで今年、普門館に設けられたのブレーンのブースに足を運び、女性担当者に質問してみた。

「今年のJapan’s Best for 2008 初回限定BOXセットのことなんですけれど」
「はい」
「昨年の特典ディスクは課題曲1曲につき1団体しか収録されておらず、正味20分程度の内容だったのですが、今年はもっと収録団体を増やすことは出来ないのですか?」
「今年も昨年と同様の仕様になる予定です」

……とても残念だ。

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そろそろ本題に入ろう。今年も各地区ごとに感想を述べていきたいと想う。まずは地元関西から。

関西代表 淀工が大会規定により3出休みだった2006年、関西勢は銀賞2つ、銅賞1つという情けない結果であったが、今年は代表3校が全て金賞という輝かしい成績であった。

淀川工科高等学校 金賞

丸ちゃん(丸谷明夫先生)/淀工の全国大会30回目の出場にして22回目の金賞受賞、自由曲で「大阪俗謡による幻想曲」を取り上げるのは6度目、勿論全て金賞である。

まず課題曲から縦(アインザッツ)と横(ピッチ)が完璧に揃い、引き締まったリズムが小気味好い。曖昧さは一切なく響きはクリアに澄み、聴いているだけでまるでスコアの音符一つ一つが目の前に展開されていくような錯覚に囚われた。

自由曲も勢いがあり、祭りの熱狂がビンビン伝わって来た。2005年普門館の演奏で唯一気になったピッコロ・ソロ前の締太鼓の失速もなく、ティンパニの強打が鮮烈に腹に響き、決定版と言われる1989年を凌ぐ気迫に満ちた演奏であった。

丸谷明夫という類い希な教育者、指揮者の存在を知ったのが今から2年前。そして今、丸ちゃん/淀工の十八番である「大阪俗謡による幻想曲」を、しかも普門館という大舞台で聴くことが出来た至福。言うべきはただ一言。「この瞬間に立ち会えてよかった!」

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明浄学院高等学校 金賞

大阪の女子高である。昨年に続いて2回目の金賞。去年表彰台に立った生徒は泣いていたが、今年彼女たちに涙はなかった。それだけ頑張って、自信もあったのだろう。おめでとう。非の打ち所のない堂々たる演奏でした。

自由曲「BACHの名による幻想曲とフーガ」は昨年、光ヶ丘女子高等学校が全国大会で初演し、金賞を攫った曲。女子高から女子高へのリレーというのも面白い。B(シ♭)A(ラ)C(ド)H(シ)という音列が変幻自在に反復され、さながら万華鏡のように色彩豊な音楽が花開く。

天理高等学校 金賞

正直に言おう。関西大会を聴いた時点で僕の全国大会の予想は淀工と明浄が、天理はだった。ところがそれから1ヶ月半後、普門館での天理は見違えるようなサウンドで吃驚した。特に課題曲IIIは前半の部ではNO.1の演奏であった。いやはや、お見逸れしました。

吉田秀高先生の指揮は課題曲はタクトなしで、自由曲のバレエ音楽「中国の不思議な役人」はタクトを用いて指揮された。その使い分けが興味深かった。




北海道代表 東海大学付属第四高等学校 金賞 / 北海道札幌白石高等学校 銅賞

昨年は東海大四が3出休みだった為に、北海道勢は金賞が取れなかった。僕は今回初めて念願の東海大四を生で聴くことが出来た。北海道の大地のように雄大で、大河の如く滔々と流れる音楽が展開され、さすが北の王者。自由曲は歌劇「トゥーランドット」より(プッチーニ/後藤 洋 編。このバージョンは2006年に大滝 実/埼玉栄高等学校が全国大会初演し金賞を受賞、2007年には6団体が取り上げた。どこよりも遅めのテンポでたっぷりと歌い、井田重芳先生が今まで追求されてきたのはこのような音楽だったのだなと感じられる、真に美しい演奏であった。それから、やっぱり東海第四の生徒さん達は白かった!

札幌白石の課題曲はテンポも音量も変化が乏しく、平板な演奏。自由曲の矢代秋雄/交響曲は2006年に根本直人/福島県立磐城高等学校の圧倒的名演があるだけに、分が悪かった。特にホルンの難易度が極めて高い作品であり、指導される先生はもっと選曲を熟考されるべきだろう。




東北代表 福島県立湯本高等学校 金賞 / 秋田県立秋田南高等学校 銅賞 / 宮城県泉館山高等学校 銅賞

湯本について僕は昨年の感想で「金賞でも良かったんじゃないかな」と書いた。今年の演奏もそれぞれのフレーズの処理が明確で、隅々までコントロールされた知的な演奏だった。自由曲「中国の不思議な役人」はそつがなく客観的で、名指揮者ピエール・ブーレーズの解釈に近いものを感じた。しかし僕は根本直人/福島県立磐城高等学校のようにもっと凶暴で荒々しい「役人」の方が好きだ。ただこれは、単に好みの問題であろう。

「BR(バトル・ロワイアル)」「GR(ジャイアント・ロボ)」などで有名な作曲家、天野正道さんは秋田県立秋田南高等学校の出身で、だから秋田南の今回の自由曲、黛敏郎/管弦楽のための饗宴も天野さん編曲だった。兎に角、曲とアレンジが良かった。余談だけれど天野さんは意外なことに関西では人気がなくて、取り上げる団体が非常に少ない(プロの大阪市音楽団も完全無視である)。僕はお気に入りなんだけれど……。

泉館山の自由曲はイベール/交響組曲「寄港地」より。変幻自在のテンポで洗練された演奏だった。エキゾチックで旅情漂い、僕はとても気に入った。いくらなんでも銅賞は厳しすぎる。ただこの「寄港地」、実は丸ちゃん/淀工が過去に2度全国大会で挑んで、いずれも銀賞という結果に終わっている。チャイコフスキー同様、吹奏楽コンクールで審査員の評価を得られにくい曲なのかも知れない(習志野福工大府創価学会関西でさえ、チャイコフスキーを取り上げた年は銀賞だった)。




北陸代表 富山県立高岡商業高等学校 銀賞 / 金沢市立工業高等学校 銀賞

高岡商の自由曲はショスタコーヴィチ/交響曲第5番「革命」第4楽章。速めのテンポでなかなか良かったが、一本調子という印象も拭えなかった。

金沢市立工の課題曲は元気な演奏で、自由曲のラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲はそつがない演奏。これも天野正道さんのアレンジがgood。




東関東代表 柏市立柏高等学校(千葉県) 金賞 / 習志野市立習志野高等学校(千葉県) 金賞 / 横浜創英中学・高等学校 銅賞

昨年はいわゆる《御三家》の市柏(いちかし)と習志野、そして常総学院が共に3出休みで、東関東は金賞0。低調な感は否めなかった。しかし今年は《御三家》のうち2校が復帰し、大いに気を吐いた。残る1校・常総の進出を阻み、1996年以降続いた《御三家》の牙城を崩したのが横浜創英だが、全国大会は残念な結果に終わった。しかし銅賞は酷だなぁ。創英の自由曲はプッチーニ/歌劇「蝶々夫人」より。編曲は「トゥーランドット」で一世を風靡した後藤 洋さんと指揮をされた常光誠治先生。特に2幕第1場「水兵の合唱(ハミング・コーラス)」の場面ではフルートの軽やかなハーモニーがとても美しく、冴え渡る月夜の情景が目に浮かぶようだった。

僕は市柏石田修一先生の大ファンである。兎に角、風変わりというか珍曲ばかり選曲されるあのセンスが好きだ。是非将来、なにわ《オーケストラル》ウィンズの客演指揮者として登場してくれたらなぁと心から願っている。市柏のDVDが出ているがこれはお勧め!非常にユニークなバンドである。しかし2005年、石田先生が選んだ「ウィンドオーケストラのためのムーブメントII〜サバンナ」は余りにも前衛的で、審査員の理解を超えたため銀賞という不当な評価に終わった。「やり過ぎた」と反省されたのだろうか、石田先生は翌年には喜歌劇「こうもり」セレクション(鈴木英史 編)という至極まっとうな曲に路線変更され、生真面目な演奏で見事金賞を受賞された。でも僕にとってそれは《市柏らしくない》と、些か残念にも想われたのも事実である。そして今年、石田先生が選ばれたのは高 昌帥/ウインドオーケストラのためのマインドスケープ。「サバンナ」と「こうもり」の中間に位置するくらいの匙加減という印象を受けた。勿論、文句なしの演奏だった。

習志野はまず青いブレザー姿が格好よかった!そしてアナウンスがあって場内が明るくなると、生徒さん達が本当に満面の笑顔だったのがとても印象的だった。演奏が始まると皆の体が波のように揺れ、音楽をする歓びが直に客席に伝わってくる。課題曲は極端なまでの強弱がつき、大変メリハリがあった。自由曲はムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」。指揮をされた石津谷治法先生の編曲で、プロムナード-古城-ババ・ヤーガの小屋-キエフの大門という構成であった。キエフの大門はラヴェル編曲のオーケストラ版では金管の輝かしいファンファーレから始まるのだが、石津谷版では意表を突いて木管の柔らかく透明なハーモニーから入り、とても新鮮だった。習志野の名演が聴けてとても幸せでした。ありがとう!

後編に続く。

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デトロイト・メタル・シティ

評価:C

公式サイトはこちら。同名コミックスを原作とし、《コメディ》と言うよりは《ギャグ映画》という名称が相応しい。

松山ケンイチが好演。彼の素顔は些か間が抜けているが、例えば「デスノート」の"L"みたいに、化粧をすると輝く不思議な役者である。

そして音楽が良い。劇中で歌われる渋谷系の歌はカジヒデキが手掛け、デスメタルバンドのボーカルである主人公・クラウザーの宿敵を世界的ヘヴィメタルバンドKISSのジーン・シモンズが演じており、そちらも本格的。さらに劇判音楽は「王様のレストラン」「オケピ!」「新選組!」の服部隆之。オープニング・アニメーションと共に高鳴る格調高い音楽はまるで、ティム・バートン監督と組んだ時のダニー・エルフマン(「シザーハンズ」「バットマン」「チャーリーとチョコレート工場」)みたいではないか!

ただ、話は面白いのだが脚色がそれを活かしきれていない。特に故郷での母親とのエピソードは全く不要。宮崎美子の重たい演技が映画を停滞させる。

それからテレビディレクター・李闘士男の演出が凡庸。小ぢんまりとまとまってはいるが映画としての広がりが足りないし、もっと編集でカットを細かく割ってテンポを出せた筈。特にクライマックス、宿敵とのバトル会場に全速力で走って向かう松山ケンイチが、バテて息切れしているのが画面から一目瞭然。実にお粗末だった。

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スカイ・クロラ

評価:D-

映画公式サイトはこちら

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もし「世界で最も偉大な長編アニメーション作家は?」と問われたら、僕は宮崎 駿と即答する。これはよっぽどへそ曲がりでない限り、全人類の9割が同意してくれる筈だ。

「では、日本でその次に優秀なアニメーション演出家は?」と問われたら、ここから各々意見が分かれるところだろう。僕なら細田 守(「時をかける少女」)、原 恵一(「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」)、そして押井 守を挙げる。

えっ、大友克洋(「AKIRA」「スチームボーイ」)は?という質問にはこう答えよう。彼のイラストレーターとしての画力は大したものだ。しかし、プロットを構成する能力が完全に欠如しているのでアニメーション作家として認めることは出来ない。庵野秀明については「新世紀エヴァンゲリオン」は確かに傑作だけれど、それ以降の作品はどうしようもない。

さて、押井 守の話である。以前にも書いたが、僕が彼の作品の中で特に好きなのは次の3作品。

  • うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
  • 機動警察パトレーバー2 the Movie
  • イノセンス(GHOST IN THE SHELL 2 : INNOCENCE)

しかし実写映画はさておき、押井守のアニメーション作品の中で「スカイ・クロラ」は最低の出来だった。これならまだ、あの「天使のたまご」('85)の方がはるかにマシ。

特にキャラクター・デザイン(西尾鉄也)が最悪。全く魅力がない。「スカイ・クロラ」と過去の傑作群との大きな相違は何かと真剣に考えた。そこで導き出された結論。上記3作品は全て原作漫画付きなのである。つまり、キャラクター・デザインが優れていることは予め保証されていたのだ。押井 守は絵が書けない演出家である。だから、優れたアニメーターと組むことが如何に重要であるかを「スカイ・クロラ」は反面教師として明確に示している。

アイデンティティークライシス(identity crisis)という本作のテーマは、押井が「ビューティフル・ドリーマー」「天使のたまご」「迷宮物件」などで追求してきたものの焼き直しに過ぎない。また"キルドレ"(遺伝子制御薬の開発時に偶然生まれてしまった子供のこと)という設定は、カズオ・イシグロの小説「わたしを離さないで」の二番煎じである。

それから「攻殻機動隊 2.0」でも感じたことなのだが、立体感のあるCGとあくまで平面のセル画が同居すると、とても違和感があって仕方がなかった。やはり両者の並立は極めて困難であり、ピクサー・アニメーション・スタジオ(「ファインディング・ニモ」「レミーのおいしいレストラン」、「WALL・E/ウォーリー」)のようにフルCGに移行するか、「崖の上のポニョ」みたいに完全に鉛筆画に戻るか、どちらかしか道はないように僕には想われる。

「スカイ・クロラ」はベネチア国際映画祭に正式出品され、酷評された。上映途中に立ち去る観客も多かったと聞く。

……それでも僕は押井 守という作家が好きだから、このどん底から立ち直り、目の覚めるようなアニメを再び創って欲しいと願わずにはいられない。

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アイアンマン

評価:B

映画公式サイトはこちら

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アメコミの映画化である。B級映画以外の何ものでもないが、出来は悪くない。必見とは言わない。しかし、退屈しのぎにはお勧め出来る。

主人公は自ら開発したパワードスーツ(強化服)で「アイアンマン」となり、大活躍する。このスーツが開発当初は欠陥だらけでデザインもダサいのだが、バージョンアップするごとに洗練されてくるところが面白い。またこれまでの正義の味方(例えばあっけらかんとしたスーパーマンとか、屈折したダークマンやスパイダーマン)とは異なり、彼が自己顕示欲の塊という設定もユニークである。

バトル・シーンも、少なくとも「トランスフォーマー」なんかより僕はこちらの方を断然推す。

主演のロバート・ダウニー・Jrは1992年の映画「チャーリー」でチャップリンを演じ、アカデミー主演男優賞候補となった。しかしその後、彼の転落人生は始まる。麻薬不法所持で何度も逮捕され、刑務所に1年、さらにリハビリセンターへ1年入所した。最早これまでかと思われたが、本作で見事に完全復活を果たした。「アイアンマン」は3部作が予定されており、現在撮影中の新作監督はマドンナと離婚したガイ・リッチー)ではシャーロック・ホームズを演じている。

「アイアンマン」のヒロインは「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー主演女優賞を獲ったものの、以降はパッとしないグウィネス・パルトロー。今回の彼女はどうだったかというと……まぁ、コメントは差し控えよう。武士の情けである。

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インデアンカレーにて

インデアンカレーにて
東京を立つ前に、大阪で一番お気に入りのインデアンカレー/丸の内支店に寄った。ところで全日本吹奏楽コンクールのことで書き忘れていたが、後半の部で一番良かったのは精華女子高等学校。「フェスティバル・バリエーションズ」の快演には胸がスカッとした。

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全日本吹奏楽コンクール終了!

吹奏楽コンクール終了!
関西代表3校が、オール金賞授賞。おめでとう!僕はこれから新幹線で一路、大阪へ。

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一年ぶりの普門館

一年ぶりの普門館
携帯電話から送信中。

いま全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴きに「吹奏楽の甲子園」に来ている。前半の部が終わり、淀工は「大阪俗謡による幻想曲」で見事6度目の金賞に輝いた。詳細は後日レポートする予定。

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笑福亭たま "NIGHT HEAD"

10月11日(土)繁昌亭レイトショー、たまさんの落語会に往く。開演は午後9時45分、仲入り(休憩)なしで終わったのが11時15分頃だった。

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  • 桂   ひろば/ろくろ首
  • 笑福亭たま/遊山船(その前にショート落語の新作あり)
  • 桂    米左/はてなの茶碗
  • 笑福亭たま/ベルゼバブの蠅(たま 作)
  • 笑福亭たま/果物ナイフ(たま 作)

僕は入門10年以下の上方若手落語家の中で、最も才能があるのがたまさんと桂 吉坊さんだと確信している。

端正で上品な吉坊さんの芸風に対して、たまさんのそれは些か下品で躍動感に富む。その資質の違いは即ち、米朝一門と笑福亭一門の差異でもある。今回客演の米左さんも、マクラで「米朝一門は一歩引いた芸風」と語られていた。このようにして伝統は見事に継承されているのである。

たまさんの新作二作品はまだいずれも未完成とのことだったが、特に「ベルゼバブの蝿」がすこぶる面白かった。たまさんは間違いなく落語作家としての才能もある。SF的要素のある作品だったが、故・桂 枝雀の創作した「SR」が星 新一的ショートショートの世界だったのに対して、たまさんのラディカルさははむしろ、筒井康隆に近いと想った。たまさんも枝雀さんを相当意識されているようで、ショート落語では《桂 枝雀の手ぬぐい -緊張の緩和- 》を披露された。

古典の「遊山船」は本来夏の噺で季節外れだが、たまさんによると「情緒を味わうタイプの噺なのでギャグが少ない。だから通常の落語会でこれをかけると、『コイツ、おもろくないやん』と思われるのが悔しいから今年はまだ2回しか演ってない」とのことだった。

このように "NIGHT HEAD"はたまさんの実験場でもある。貴方もこの、めくるめくディープな世界に参加してみませんか?

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桂かい枝/凱旋公演 - I'M BACK ! -

10月10日、桂かい枝さんの落語会を聴く。

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かい枝さんは今年4月から半年間に渡って文化庁交流大使としてアメリカ全土をキャンピングカーで廻って33都市で73公演をこなし、のべ1万5千人以上のアメリカ人にSit-Down Comedy = RAKUGOを披露してきた。

今回、繁昌亭での演目は

  • かい枝、三金/アメリカ思い出噺(対談、スライドショー)
  • かい枝/A MAN IN A HURRY(英語落語「いらち俥」)
  • 三金/ふぐ鍋
  • かい枝/尻餅

英語落語はアメリカでのショーそのままの雰囲気で面白かった。高校生レベルの英語力があれば内容も十分に理解出来るし、大阪人にもとても受けていた。会場には、ちらほら外国人の姿も見受けられた。

ただ中入りを挟んで後半、日本語での「尻餅」はかい枝さんの喉のコンディションも芳しくなく、出来が良かったとは残念ながら言えない。半年間、日本を離れていたので勘を取り戻すには少々時間がかかるのであろう。かい枝さんの公式ブログにも「間合いがおかしくなっている」と書かれている。

アメリカでの体験はとても大きいものだったろうし、さらに一皮むけた爆笑落語をこれから期待してまっせ!

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寒い国から来たリス〜大阪フィル定期

ドミトリー・リス/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会を聴いた。

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1960年ソヴィエト生まれのリスは現在ウラル・フィルハーモニー管弦楽団の主席指揮者。

まずリャードフ/交響詩「ババ・ヤガー」から快刀乱麻のドライブ感、歯切れの良いリズムに魅了された。棒さばきも鮮やかで、腕を大きく振りかぶりアクションが激しい。

そしてショパン・コンクールで優勝したベトナム出身のピアニスト、ダン・タイ・ソンを迎えてのラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲。速めのテンポが聴いていて心地よい。子犬が鍵盤を駆け回るように軽やかなピアノも素晴らしい。

この甘美な第18変奏:アンダンテ・カンタービレは映画「ある日どこかで」(Somewhere in Time )で使用され、とても印象深かった。故・クリストファー・リーブの代表作である。

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ダン・タイ・ソンのアンコールは日本では滅多に演奏されない珍しい曲だった。

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モンポウで想い起こされるのはキネマ旬報ベストワンに輝いた映画「櫻の園」(1990、中原俊 監督)であろう。「ショパンの主題による変奏曲」が大変効果的に使われていた。間もなく同じ監督によるリメイク版が公開されるのだが、さて如何に……。

僕にモンポウというスペインの作曲家の存在を教えてくれたのは記事「ミス・サイゴンの想い出」にも書いた、亡くなった高校時代の親友だった。彼が特に好きだったのがピアノ曲《内密な印象》の第8番〈秘密〉。アリシア・デ・ラローチャが好んでリサイタルのアンコールで演奏する、密やかで、そしてちょっと哀しい小品である。

さて、話を大フィル定期に戻そう。ショスタコーヴィチ/交響曲第8番はある意味、爆演。重厚で息が詰まりそうな第1楽章、凶暴で破壊的な第2、3楽章。そしてたどり着いた先は、一見、田園舞曲風でありながらアイロニカルで虚無的に終結する第5楽章。この戦争交響曲の多面的面白さを十二分に引き出した大フィルの力量を大いに讃えたい。特にヴィオラの深い音色が魅惑的だった。

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炎のジプシー・ブラス

兵庫県立芸術文化センター中ホールでファンファーレ・チォカリーアを聴く。

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僕が初めてジプシー・ブラスなるものの存在を知ったのはカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞した「アンダーグラウンド」(1995)である。監督は旧ユーゴスラビア・サラエヴォ出身のエミール・クストリッツァ。ユーゴ激動の50年を描いた作品で、映画同様にジプシー・ブラスのパワフルな演奏にも強烈な印象を受けた。クストリッツァがヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞した「黒猫・白猫」('98)でもジプシー・ブラスは大活躍。

今回来日したチォカリーアは東欧・ルーマニア北東の寒村ゼチェ・ブラジーニからやって来た。地図にも載ってないし駅もない。村の人口が400人でオヤジ100人。うちなんと85%がブラス吹きだそうである!

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ジプシー・ブラスは19世紀にバルカン半島で興った。ロマ(ジプシー)民族により演奏され、世界最速のブラスと言われている。実に迫力があり、聴いていて爽快だ。

ロマと言えばヴァイオリンが有名だが、彼らは11世紀頃に北インド・ラジャスタン地方から西へと流浪の旅に出た移動型民族。ヨーロッパにたどり着く前、オスマン・トルコを経由しており、この時オスマン帝国の軍楽隊から多大な音楽的影響を受けたと想われる。またチョカリーアの村があるモルドヴァ地方にはその昔ドイツやオーストリアの移民たちの居住区があったそうで、彼らがブラスバンドを持ち込んだためここではジプシー・ブラスが定着した。

演奏だけではなくベリーダンスや、インドからのゲスト=クィーン・ハリシュの踊りも披露された。

会場は補助席も出る大盛況。客席でも手拍子や体でリズムを取ったりしてノリノリ。

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コンサートが終演し席を立つと、なにやらロビーでブラスの響きが。出てみるとメンバーが演奏をしていて、聴衆とダンサーが一緒に輪になって踊り出しているではないか!

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熱狂の渦はホール内からロビーへと移り、さらにヒートアップ。

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いやはや実に愉しかった。ジプシー・ブラス最高!

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映画「おくりびと」そして、峰岸徹さんを悼む

評価:A+

非の打ち所のない、完璧な作品。文句なしに本年度日本映画のベスト1である。

僕が滝田洋二郎監督の映画を初めて観たのは「コミック雑誌なんかいらない!」('86)。静謐なコメディを撮る人だなというのが第一印象であった。以来、「木村家の人々」('88)、「病院へ行こう」('90)、「僕らはみんな生きている」('93)などの人間喜劇を愉しんで観た。だが残念 ながら近年の滝田監督は些か低迷していた感は否めない。ところが、である。「おくりびと」は間違いなく滝田監督の最高傑作となった。

モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞。英語タイトルは "Departures"だそうだ。米アカデミー外国語映画賞の日本代表にも選ばれた。2006年の代表が「フラガール」、2007年が「それでもボクはやってない」と首を傾げざるを得ない選出だったが(無論ノミネート落選)、今年の選考委員は確かな目を持っていたと言えるだろう。これなら十分アカデミー賞本選にノミネートされる可能性がある。

Departures

お隣の韓国でも今月30日から150スクリーン規模で公開されるそうだ。大変めでたい。

映画公式サイトはこちら。是非、古川展生をはじめ日本を代表する13人のチェリストを起用した目の覚めるような音楽に耳を傾けて欲しい。宮崎アニメでも有名な久石 譲さんが作曲した新たな名曲の誕生である。

まず本作で初めて映画の仕事を手掛けた小山薫堂によるオリジナル・シナリオが素晴らしい。元々は本木雅弘が「納棺師をやりたい」と希望したのがこの企画のはじまりだそうだ。納棺師が主人公、本木主演、そして山形・庄内地方で撮るという条件を与えられた小山は庄内にシナリオハンティングに赴き、物語の考想を練ったという。

本木演じる主人公はプロのオーケストラに所属するチェリスト。借金して一千八百万円のチェロを購入した矢先、赤字経営のオーケストラは解散の憂き目に遭う。そして彼はチェロを手放し、失意のうちに古里の山形に戻る。この設定が実にリアルで面白い。

 関連記事:

映画の冒頭、主人公が演奏するベートーヴェンの第九を指揮していたのがなんと飯森範親さんだった!考えてみればマエストロ飯森は山形交響楽団の常任指揮者だから、そういった経緯で本作に協力することになったのだろう→シェフ範親の窓へ。

 関連記事:

僕は広末涼子の全盛期は映画「20世紀ノスタルジア」(1997)の頃だと確信している。これを監督した原将人は当時、《広末涼子は女優菩薩である》と絶賛した。そして僕は「おくりびと」の彼女を観て「20世紀ノスタルジア」以来初めて、ヒロスエがいいと想った。

本木雅弘はさすが自ら望んだ役だけあって、大変な気合いがスクリーンを通してこちらにビシバシ伝わってくる。チェロは猛特訓を受けて自分で弾いているそうだし(現在も趣味で続けているとか)、納棺師になってからの所作も滑らかで美しい。また、上半身裸で登場する場面があるのだが、僕は彼が主演した名作「シコふんじゃった」(周防正行監督)のことを想い出した。

過去の映画を彷彿とさせると言えば山崎 努もそう。題材も「お葬式」(伊丹十三監督)に近いものがあるし、納棺師のハウ・トゥーを教えるビデオ制作の場面は明らかに「お葬式」のパロディになっている。

本木の父親役、峰岸 徹がいきなり死人として登場したのにも驚かされた。「廃市」(大林宣彦監督)の彼の役を連想させたのは決して偶然ではないだろう。「おくりびと」には生前の回想シーンもあるが、台詞は一切なし。

さて、10月11日に峰岸さんは亡くなった。享年65歳。肺がんだったそうである。公式ブログ(こちら)には、がん告知を受けた時の心境が綴られている。

遺作となったのは大林宣彦監督の「その日のまえに」(11月1日公開)。これは余命幾ばくもない妻と、その夫が、残された時間を如何に生きるかというテーマの作品である。

峰岸さんは「瞳の中の訪問者」(1977)以降、大林映画最多出演(28本)を誇る。当初「その日のまえに」の出演予定はなかったのだが、峰岸さんの余命が短いことを知っていた大林監督が編集中に思い立ち、7月21日に自宅前で1シーンのみ追加撮影したそうである。

僕が好きな峰岸さんの役はやはり何と言っても「廃市」('84)。そして「日本純情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群れ」('88)の"着流しの男"や、「あした」('95)の演技も印象深い。味のある名脇役だった。

峰岸さん、お疲れ様でした。そして今までありがとうございました。勿論、峰岸さんの遺言を聞きに「その日のまえに」を上映する映画館に馳せ参じます。

今、僕の脳裏には大林監督の次のような言葉が思い起こされる。

映画作りとは命に限りのあるもの(人間)が、永遠の生命を有するもの(フィルム)に、その想いを託すことである。

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《御堂筋パレード》改め、《御堂筋kappo》

例年10月に開催されていた《御堂筋パレード》は橋下 徹・大阪府知事の「低迷するイベントに予算を出す余裕はない」との意向を受け、事業費を昨年の約3分の1に縮小し歩行者天国の《御堂筋kappo》として生まれ変わった。

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まず、大阪市庁舎前で淀川工科高等学校(淀工)のパフォーマンス「カーペンターズ・フォーエバー」が披露された。そして淀工金光大阪高等学校の合同演奏による「世界に一つだけの花」。指揮をするのは関西吹奏楽連盟の理事長でもある淀工の丸谷明夫 先生(丸ちゃん)だ。

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橋下知事や平松市長らの挨拶の後、箕面自由学園チアリーダー部GOLDEN BEARSの演技もあった。

そしてパレードが始まった。まずは金光大阪高等学校

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そして淀工は「道頓堀行進曲」などを演奏しながらの行進。

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昨年の御堂筋パレードに比べると、淀工生の人数が少ないように感じられた。ちょうど一週間後に東京・普門館で全日本吹奏楽コンクールが開催されるので、それに出場する星組のメンバーは今回、こちらには参加しなかったのだろう(僕の普門館レポート、おたのしみに)。

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さらにオーストラリアからのゲスト、クイーンズランド州警察音楽隊のバグパイプの演奏もあった。

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ある年代以上の女性にとって、バグパイプで真っ先に想い出すのは少女漫画「キャンディ・キャンディ」に登場する《丘の上の王子さま》こと、アンソニーではないだろうか?彼の初登場シーンはスコットランドの民族衣装を身にまとい、バグパイプを持った姿だった。

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僕がこの演奏を聴きながら連想したのはアカデミー作品賞、監督賞を受賞したハリウッド映画「ディパーテッド」である。これは香港映画「インファナル・アフェア」のリメイクであるが、舞台はアメリカのボストンに移され、アイリッシュ・マフィア(ジャック・ココルソン)と警察との対決の物語となっている。

この映画の中で、レオナルド・ディカプリオの葬儀に警察音楽隊がバグパイプを演奏する。ボストンはアイルランド移民が多い都市で、人口の約15%をアイルランド系が占めるそうである。恐らくオーストラリアもアイルランドやスコットランドからの移民が多く、バグパイプの伝統が受け継がれているということなのだろう。

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オードブルと愉しむ山崎

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大阪府と京都府の境にあるサントリー 山崎蒸留所へ往った。

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ここは自然に囲まれた素晴らしい環境で、そしてなりより山水が美味しい。

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まずはウィスキー製造行程を見学。

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次にシングルモルトウィスキー山崎とウィスキーに合うオードブルのマリアージュを愉しむ。

山崎10年、12年、18年、白州12年のテイスティング(飲み比べ)もあり。

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そして関西で有名なグルメ雑誌「あまから手帖」監修のもと、考案されたオリジナルレシピに舌鼓を打つ。

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美味なり。

参加費は締めて2,000円。機会があれば是非また参加したい。

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桂文我独演会

ワッハホール(大阪)にて。

  • 桂まん我/野ざらし
  • 桂  文我/景清
  • 桂   平治/源平盛衰記
  • 桂  文我/船弁慶

今回の独演会は落語と源平合戦がテーマであった。

特に「景清」は滑稽噺と人情噺の中間に位置する珍しいネタで、とても面白かった。

「船弁慶」は文我さんの師匠である枝雀さんも得意とされていたもの。生で初めて聴かせて貰った。夏のネタなのだが、「遊山船」と比べると高座にかかる機会は意外と少ない。

東京からのゲスト、平治さんは軽やかに「源平盛衰記」を。時事問題も時折絡め、巧みな構成で聴き応えあり。小朝さんの「源平盛衰記」も似たようなスタイルだったから、これはそういうネタなのかな?政治批判を入れたがるのはさすが江戸落語らしい。僕はやっぱり上方の方が好き。

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「ミス・サイゴン」の想い出

東京・帝国劇場でウエストエンド(ロンドン)ミュージカル「ミス・サイゴン」を観劇。

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僕は1992年に帝劇で「ミス・サイゴン」日本初演を観ている。この時ヒロイン・キムを演じたのは本田美奈子さん。エンジニアは市村正親さんだった(クリスは岸田智史さん)。本田さんはこの役で同年、ゴールデン・アロー賞演劇新人賞を受賞。市村さんは芸術祭賞および菊田一夫演劇大賞を受賞された。ふたりはもう、文句のつけようがないパフォーマンスであった。

2004年の再演で僕が選んだのはキム:新妻聖子、エンジニア:市村正親、クリス:井上芳雄というキャストだった。

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2005年に本田美奈子さんは急性骨髄性白血病に罹患、闘病生活の後に肺の合併症で亡くなった。享年38歳だった。

僕も、かけがえのない親友を急性骨髄性白血病で失っている。彼が新婚旅行から帰ってきた直後の発病だった。弟さんからの造血幹細胞移植は成功したのだが、術後感染による敗血症で亡くなった。30歳という短い生涯だった。死の前日、人工呼吸器に繋がれ、黄疸で全身がこげ茶色になり、熱を帯びた彼の手を握りしめた日の事を僕は一生忘れることはないだろう。僕がその友と出合ったのは郷里・岡山の高校吹奏楽部だった。

さて、2002年、東京・普門館で開催された全日本吹奏楽コンクールの自由曲で大滝 実/埼玉栄高等学校吹奏楽部は「ミス・サイゴン」(編曲:宍倉 晃)を演奏し金賞を受賞、一大センセーションを巻き起こした。コンクール翌日から大滝先生の元へは楽譜に関する問合せが殺到したそうである。その後吹奏楽界で空前の「ミス・サイゴン」ブームが到来、その様子はテレビ番組「笑ってこらえて!吹奏楽の旅」でも取り上げられた。こうして埼玉栄の「ミス・サイゴン」は伝説となった。

僕が大阪に棲むようになったのが2005年春から。その年の6月、初めて生で聴いたプロの吹奏楽団、大阪市音楽団の定期演奏会でもこの宍倉版「ミス・サイゴン」が演奏された。これも大変な名演であり、ライヴCDが発売されているので興味のある方は是非ご一聴をお勧めする(スパーク「宇宙の音楽」も収録)。

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作詞:アラン・ブーブリル、作曲:クロード=ミシェル・シェーンベルグのコンビはミュージカル「レ・ミゼラブル」でもお馴染み。僕は貧乏臭くて照明も暗く、左翼思想が濃厚な「レミゼ」よりも「ミス・サイゴン」の方が好きだ。

「ミス・サイゴン」(1991)の物語はプッチーニのオペラ「蝶々夫人」を下敷きにしている。これは映画化もされた「RENT」(1996)がプッチーニの「ラ・ボエーム」に基づいているのに似ている。「蝶々夫人」の長崎から舞台をサイゴンに移し、ヴェトナム戦争を絡めた「ミス・サイゴン」のプロットは非常によく練られており、完成度は極めて高い。台本も音楽も「蝶々夫人」より優れている。ちなみにクロード=ミシェル・シェーンベルグは十二音技法で有名な作曲家アーノルド・シェーンベルクの兄弟の孫らしい。

そして岩谷時子さんによる日本語訳詩の言葉の美しさも特筆に価する。岩谷さんは「恋のバカンス」「お嫁においで」など歌謡曲の作詞や、越路吹雪さんの唄う「愛の讃歌」「サン・トワ・マミー」「ラストダンスは私に」などの訳詩で有名である。ミュージカルでは劇団四季との「ジーザス・クライスト=スーパースター」や東宝の「レ・ミゼラブル」を手掛けられた。何れも卓越した仕事であり、歌詞がとても耳に馴染んで自然である。

ウエストエンドおよびブロードウェイでの初演キャストはキム:レア・サロンガ、エンジニア:ジョナサン・プライス(この演技でオリヴィエ賞&トニー賞ダブル受賞)だった。フィリピン出身のレアはこの後、ディズニー・アニメ「アラジン」でジャスミン姫の歌を担当、また2000年「ミス・サイゴン」のフィリピン公演では故郷に錦を飾った。ジョナサン・プライスは映画俳優としても有名で「未来世紀ブラジル」「エビータ」「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」「五線譜のラブレター」「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどに出演している。

僕はオリジナル・キャスト盤CDを我が家で繰り返し聴いた。また、レアジョナサンのパフォーマンスは「Hey, Mr. Producer ! :The Musical World of Cameron Mackintosh」という香港製か台湾製のDVDで観た(Amazon.co.jpで購入)。ちなみにキャメロン・マッキントッシュとは「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などロンドン産大作ミュージカルを製作したプロデューサーである。

ジョナサンの演技の特徴は長いにある。その自在な動きはとても美しい。市村エンジニアの演技も見事であった。

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今回選んだキャストは、キム:笹本玲奈(23)

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エンジニア:橋本さとし

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市村正親さんのエンジニアは老練で、愛嬌があって、ちょっと人生の哀愁を漂わせるような演技であったのに対して、橋本さとしさんは若くエネルギッシュで、生きることにギラギラと貪欲な《ポン引き》だった。各々が方向性が違っていて面白い。

笹本玲奈ちゃんのキムは、パワフルな歌唱力に圧倒された。またその迫真の演技も凄い。特にアメリカ兵クリスとの間に出来た息子を、13歳の時に親が決めた婚約者トゥイから守ろうとする場面は、彼女の強い目の力に痺れた。僕は確信した、「笹本玲奈レア・サロンガを超えた!」と。彼女は現在、日本で間違いなく実力No.1のミュージカル女優である。

それから《踊るコンダクター》こと、マエストロ塩田/東宝オーケストラの生き生きした演奏も素晴らしかった。前日「ウィキッド」で聴いた、音がペラペラな四季オーケストラとは雲泥の差。プロとアマくらいの違いがあった。

関連サイト紹介:
指揮者/塩田明弘の世界

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最前列で観劇したので東宝ミュージカル恒例、カーテンコールの出演者による花投げを見事GET !!

至福の3時間だった。

ミス・サイゴンはその大掛かりな装置のため、日本では今まで帝劇でしか上演されたことがない。準備期間として改修工事に1ヶ月も要するそうである。

特に劇中、実物大ヘリコプターが舞い降りてくる場面はこのスペクタクル・ミュージカル最大の見せ場。2004年再演の観劇時、このヘリコプターが故障して上手く作動せず終演後謝罪のアナウンスが流れたこともあった。

しかし遂に2009年博多座に上陸するらしい。福岡の人が羨ましい。大阪の梅田芸術劇場ではやはり舞台機構上、上演は無理なのかなぁ……。

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ミュージカル「ウィキッド」@四季劇場〔海〕

東京出張のついでに、汐留シオサイトにある四季劇場[海]でブロードウェイ・ミュージカル「ウィキッド」を観劇。恐らく「オペラ座の怪人」の後、地元・大阪でも「ウィキッド」がかけられると想うが、今までの四季のやり口から考えれば大阪はどうせカラオケ上演だろうから、生オーケストラで上演されているうちに観ておきたかったのである。

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劇団四季は先日、今年12月からの入場料値下げを発表した。これはミュージカルの敷居を低くし、観客の裾野を広げるという意味では大変結構なことである。 しかし、大阪での生演奏の実現という観点から考えると、コスト面などますますその可能性が閉ざされたと言わざるを得ない。

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「ウィキッド」はジュディ・ガーランドが主演したMGMミュージカルの金字塔「オズの魔法使い」のいわば外伝(スピンオフ)。主人公となるのは西の悪い魔女・エルファバと南の良い魔女・グリンダ。知られざるふたりの友情物語である。ちなみにタイトルの"Wicked"とは《邪悪な》という意味。

まず台本が二流。「オズの魔法使い」との整合性を図るために必死になっているが、結局矛盾だらけ。物語の運びに綻びが目立ち退屈なこと極まりない。

音楽も二流(作詞/作曲はアニメ「プリンス・オブ・エジプト」でアカデミー歌曲賞を受賞したスティーヴン・シュワルツ)。ありきたりで魅力に乏しい。ただし、2004年のトニー賞を受賞した装置デザインと衣装デザインは超一級。特に「オズの国」における緑の衣装は洗練されていて素晴らしい!目で見て愉しめる作品ではある(僕はもう二度と観たいとは想わないけれど……)。

そうそう、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでもこのミュージカルの短縮版(35分)が上演中。詳細はこちら。これも開幕してすぐに観た。短時間でハイライトが観れるので便利だが、物語を端折り過ぎて意味不明。どっちもどっち。

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僕が四季版を観た日の主要キャストは以下の通り。

  • グリンダ:西 珠美
  • エルファバ:樋口麻美
  • フィエロ:北澤裕輔
  • オズの魔法使い:飯野おさみ

主役3人は歌唱力もあり、なかなか良かった。特に第1幕フィナーレはこのミュージカル最大の見所であり、グリンダとエルファバの気迫に満ちた二重唱に痺れた。これぞミュージカルの醍醐味、Theatergoer(芝居好き)として至福の時だった。

ただ、西さんの台詞部分は四季独特の発声法(母音法)がとても不自然で気になった。

それから生演奏の四季オーケストラの響きがペラペラ。なんでこんな薄い音しか出ないのだろうとオケピ!(オーケストラ・ピット)を覗いてみると、僕が確認出来た限り弦楽器はヴァイオリン1名、チェロ1名、コントラバス1名という編成だった。人件費を削減するために極力楽員の人数を絞っているのだろう。だから弦楽器群が管楽器群のパワーに完全に負けている。

四季劇場「秋」で「ウエストサイド物語」を観劇された方が、やはりオケは弦楽パートが各1名ずつだったと書かれている→劇場の天使へ。

独立採算制で頑張っている四季の企業努力は認める。しかし、ミュージカルって入場料が安いことだけが求められているのだろうか?その本来あるべき姿に、今一度立ち返って欲しいものである。

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八方@繁昌亭昼席

繁昌亭昼席を聴く。

繁昌亭には滅多に出演されない八方さん登場ということで、立ち見も出る大入満員。

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  • 露の  団姫/道灌(どうかん)
  • 桂   三金/奥野君の選挙(三金 作)
  • 笑福亭扇平/勘定(閑所)板
  • 幸助福助/漫才
  • 桂     団朝/寄合酒
  • 桂     文福/夫婦小話(+相撲甚句)
  • 桂     春菜/母恋くらげ(柳家喬太郎 作)
  • 桂  枝女太/悋気の独楽
  • 笑福亭鶴笑/鶴笑ワールド
  • 月亭  八方/宿屋仇

春菜さんのした新作落語が兎に角、つまらなかった。出来が悪い上に、他人の創作だった。

一方、三金さんの新作は自虐的なメタボ・ネタで秀逸。大いに笑った。ちなみに「奥野君」とは三金さんの本名である。

八方さんは大ネタで、やはり上手かった。先日聴いた文珍さんの「宿屋仇」と比べると、噺に登場する旅の3人組がもっと柄が悪い感じ。それはそれで独特な味があった。

余談だが上方落語「宿屋仇」はNHKのスピンオフ・ドラマ、ちりとてちん外伝「まいご3兄弟」の元ネタになっている。

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鶴瓶と誰かと鶴瓶噺

そごう劇場にて笑福亭鶴瓶さんの独演会を聴く。

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自ら「花人(かじん)」と称するフラワーデザイナー・赤井勝さんがオープニング前から、幕の向うで花を入れているのがシルエットで映る。

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開幕後、鶴瓶さん登場。赤井さんを呼びいれ、暫くふたりのトークが展開された。つい先日、北海道洞爺湖サミットにおける花の装飾も赤井さんが担当されたそうだ。

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そして、

  • 鶴瓶/鶴瓶噺
  • 鶴二/稽古屋
  • 鶴瓶/愛宕山
  • 鶴瓶/オールウェイズ お母ちゃんの笑顔(私落語)

「鶴瓶噺」はいわゆるstand-up comedy=漫談。鶴瓶さんの日常で起こったエピソードを面白おかしく披露され、巧みな話術で聴衆を引き込む。

NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で有名になった「愛宕山」は笑福亭の型で。僕が今まで聴いてきたのは米朝枝雀吉弥ら米朝一門の「愛宕山」だったが、笑福亭は全くタイプが異なり驚いた。噺に登場する幇間(太鼓持ち/男芸者)が非常に下品なのだ。京都の旦那も笑福亭では若旦那に変更されており、こちらも品がない。その落差が面白い。改めて米朝一門って、上品で詩的なんだなぁと感慨深いものがあった。両極端なのだけれど、甲乙付けがたい魅力がそれぞれにある。

「愛宕山」が終わると、間髪を容れず「お母ちゃんの笑顔」へ。これは鶴瓶さんが創作した、私落語。幼い頃から始まり、お母ちゃんが亡くなるまでの《笑い》をめぐる母と子の攻防。完成度が高く、一聴の価値あり。めくるめく鶴瓶ワールドに引き込まれた。

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繁昌亭夜席「天神寄席」 9/25

天満天神繁昌亭で夜席を聴く。豪華メンバーなれど、前売り2,000円と低料金なのが嬉しい。

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  • 林家市楼/つる
  • 林家染弥/ふぐ鍋
  • 露の團六/片棒 (落語版「リア王」!)
  • 月  八方/軒づけ
  • 桂   米平/立体紙芝居
  • 桂春團治/祝のし

八方さんの高座は初めて聴いた。テレビのイメージからいって、もっと大雑把なのかなと想像していたが全然違った。とても端正な語り口で、噺の中で登場する浄瑠璃も、稽古に裏打ちされた確かな実力が感じられた。素晴らしい。

春團治さんでは華麗な名人芸を堪能。春團治さんがトリを務めるときはお茶子が座布団を赤い敷物に包んで登場、舞台中央に広げる。これがまた見もの。中トリの時は赤い敷物はなし。今のところ春團治さん以外でこれを見たことはない。さすが上方四天王、必見。

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鈴木秀美とオーケストラ・リベラ・クラシカの仲間たち

神戸が生んだバロック・チェロの巨匠、鈴木秀美さんのコンサートに往った。

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オール・モーツァルト・プログラムで、演奏されたのは、

  • ディベルティメント K.136-138
  • セレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
  • アダージョとフーガ
  • アヴェ・ヴェルム・コルプス(アンコール)

「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は日本語で言うと「小夜曲」。英語なら"A Little Night Music"で、これは「スウィーニー・トッド」などで名高いミュージカルの巨匠、スティーブン・ソンドハイムの作品名ともなっている(1973年トニー賞で最優秀作品賞、楽曲賞、台本賞など受賞。演出は「オペラ座の怪人」のハロルド・プリンス)。"A Little Night Music"はミュージカル全編がワルツで作曲されるいう際立った手法が用いられている。

「アダージョとフーガ」は元々、「2台のピアノのためのフーガ」を作曲者自ら弦楽合奏用に編曲し、それにアダージョの序奏を付け加えたもの。このフーガを僕が初めて聴いたのはアニエス・ヴァルダ監督による、残酷で美しいフランス映画の傑作「幸福」(1965、キネマ旬報ベストテン第3位)。メイン・テーマとして使用されたフーガに嵐の予感のような鮮烈な印象を受けた。しかも驚くべきことに「幸福」で使用されたのは、なんと木管アンサンブル版だった!これは必聴(そして必見)。

Bon

さて、今回演奏したのは秀美さんが音楽監督を務めるオーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)のメンバー7人で、第1、第2ヴァイオリンが2名ずつ、そしてヴィオラ、チェロ、コントラバス各1名という編成だった。第1、第2Vnが前方で向かい合い、奥中央がコントラバス、その左右にヴィオラ、チェロが配されるという、対向配置。現代のスチール弦ではなく昔ながらのガット弦(羊の腸)を張り、バロック弓を使用、ヴァイオリンには顎あてがなく、チェロにはエンドピンがないピリオド楽器、当然(装飾音以外ではビブラートをかけない)ピリオド奏法による演奏であった。

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メイン・プログラムは秀美さんにサインを頂いた上記CDの曲目そのまま。メンバーもほぼ同じだったが、今回出演される予定だったヴィオラの森田芳子さんが都合により参加されず、成田寛さん(山形交響楽団契約首席)が代役をされた。その為かヴィオラが些か遠慮がちで、もっと自己主張が欲しい気もした。

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全体としては名手揃いの素晴らしいアンサンブルで大変聴き応えがあった。ガット弦はいぶし銀の音色がして、硬質なスチール弦とは違い肌の温もりが感じられる。速めのテンポで歯切れがよく、軽やかなモーツァルトであった。

秀美さんのトークも面白かった。まず「アイネ・クライネ…というタイトルは、まるでアブラカタブラみたいですね」と笑わせ、「これらの曲が作曲された当時、お客様たちは貴族の人々でした。皆様が食事をしながら、あるいは恋を語らい合う横で、私たちしがない楽師たちが演奏したのです」といったお話をされた。

またガット弦は高温多湿に弱く、何度も調弦をし直さなければならない。秀美さんは「今日は満席なので大変湿度が高くなっています。皆様、なるべく息をなさらないようお願いします」と茶目っ気たっぷりに仰り、終始和やかなムードでコンサートは進行した。

来年はヨーゼフ・ハイドン没後200年という記念の年である。秀美さん、次回は是非もっと大人数を引き連れ、関西でもOLCのハイドンを聴かせて下さいね!

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