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関西吹奏楽コンクールを聴いて 2008 《後編》

この記事は関西吹奏楽コンクールを聴いて《前編》と併せてお読み下さい。

吹奏楽コンクールは入れ替え制なので前半の部が終わり、後半の部の列の最後尾に向け歩いていると、な、な、なんと!鹿児島情報高の屋比久 勲 先生が列に並んでいらっしゃったので仰天した。

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開場すると屋比久先生は関係者席に坐られたが、淀工の演奏が終わり休憩時間に入るといつしかそのお姿は見えなくなった。

さて、その大阪府立淀川工科高等学校、代表)の演奏だが、まず意表を突いたのが課題曲の選曲である。8/11大阪府吹奏楽コンクールの招待演奏で淀工が披露したのは課題曲 I 「ブライアンの休日」だった。 僕も今年の課題曲の中ではこれが一番の名曲だと想う。しかし、2週間後の関西大会では課題曲 II マーチ「晴天の風に替わっていた。つまり、丸ちゃん(丸谷明夫 先生)はコンクールに勝つ戦略としてこちらを選んだのである。

実際、今年関西代表となった淀工、明浄、天理、そして昨年代表だった大阪桐蔭は課題曲 I を避けている。朝日作曲賞を受賞した「ブライアンの休日」はコンサート用としては良いが、コンクール向きではないということなのだろう。

今回繰り返し課題曲を聴いて、その理由が漸く分かった。「ブライアンの休日」は強弱の変化に乏しく、えてして平板な演奏に聴こえてしまう。それに対し、「晴天の風」はクレッシェンド、デクレッシェンドが波のように繰り返されるので、アンサンブルの技量をアピールし易い。

淀工の課題曲は、まず冒頭部クラリネットの柔らかい音色が見事だった。以前より指摘していることだが、ppの美しさこそ淀工最大の武器である。そしてダイナミクスの幅の広さに関しても、今大会では淀工明浄学院が際立っていた。

大会最速のドライブ感で課題曲をかっ飛ばし、丸ちゃんの十八番、大栗 裕/大阪俗謡による幻想曲へ。万全の構えである。大阪俗謡も過去の演奏と比較して、最も速い演奏の部類に属するのでは?と体感された。丸ちゃんらしく引き締まったリズムが耳に心地良い。僕の前列に坐っておられた御婦人が、音楽に合わせ体で拍子をとられていた。つまり想わず踊りだしたくなるような祭の音楽になっていたということである。

記事「続・大阪俗謡をめぐる冒険」にも書いたが、2005年全日本吹奏楽コンクールにおける淀工の演奏は水も漏らさぬ鉄壁のアンサンブルであった。しかし唯一「おや?」と首をかしげたのが中間部、ピッコロが生国魂神社・獅子舞の祭囃子を吹く直前、絞太鼓の出だしが些か失速するのである。今回はここに注目して聴いたのだが、パーカッションの生徒は勢いよく飛び出したので「やったね!」と膝を打った。

それから、春の「アルメニアン・ダンス」やサマコンでの大阪俗謡を聴いた時点では「今年のオーボエは大丈夫なのかな……」と心配していたのだが、ソロではしっかりと音が鳴っていたのでホッとした。もっと歌えるようになればさらに良くなるだろう。逆に今回は全体のバランスから考えてサックスがやや弱い(音が出ていない)ように感じられた。10月の普門館では、より進化した淀工サウンドを楽しみにしている。

滋賀県立甲西高等学校銅賞)の自由曲「春になって王たちが戦いに出るに及んで」は野趣あふれる面白い曲。コーラスや叫び声もあり、聴いていて愉しかった。しかし奇声はあくまで耳障りな不協和音でしかなく、コンクールという場ではどうだろう?審査員へのアピールという点を考慮すれば、あまり良い選択とも想えないのだが……。

京都の洛南高等学校は宮本輝紀 先生時代に黄金期を築いた。関西代表として全国大会出場は14回におよび、うち4回金賞を受賞している。そして2006年3月に宮本先生は退官され、昨年・今年は関西大会銀賞と低迷している。今回初めて生で洛南の演奏を聴いて、池内毅彦 先生の指揮法に疑問を感じた。どうして指揮棒を持たないのだろう?確かにカラヤンや小澤征爾もそういうスタイルの指揮者であり、その方が豊かな表現を可能にするということもあるだろう。しかしそれは相手がベルリン・フィルやウィーン・フィルなどプロだから通る話であり、素人の高校生に対しては如何なものかと想った。指揮棒は手の動きを増幅させる。だから拍と出だしが明快になる。しかし素手だとそれが分かり辛い。実際、洛南の演奏は途中でアンサンブルが空中分解し、荒っぽいなと感じさせる箇所が多々見受けられた。

兵庫県立伊川谷北高等学校)の自由曲はチャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」。大変柔らかく、優しい響きで僕は好感を持った。ただ、吹奏楽コンクールにチャイコフスキーは鬼門なんだよねぇ。全国大会常勝の習志野市立習志野高等学校福岡工業大学付属城東高等学校、そして創価学会関西吹奏楽団もチャイコフスキーを選曲した年は銀賞に泣いている。何故なんだろう?と長年想ってきたのだが、イカキタの演奏を聴いてその疑問が氷解した。チャイコフスキーは吹奏楽に合ってない。彼の曲想には弦がないとどうしても物足りないのだ。

大阪桐蔭高等学校)の野球部は8/18に甲子園で優勝した。その応援の陣頭指揮をされた梅田隆司 先生は真っ黒に日焼けされていた。整っていてそつがない演奏。しかしそれ以上のものは何も感じられなかった。「ダメ金」は妥当な評価だろう(注釈:「ダメ金」とは、金賞は取ったが次の大会に進めないことをいう)。

明浄学院高等学校、代表)は文句の付けようのない演奏だった。のびやかに歌い、締めるところは緊張感を持って締める。メリハリがあり、弱音も淀工同様に大変美しかった。なお、明浄の自由曲はリスト/バッハの名による幻想曲とフーガ(田村文生 編曲)であった。

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上の写真は後半の部が終了し、結果発表を待つ人々。混乱を避けるため、ホール内への入場制限がなされた。

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そして結果発表の掲示である。一方通行で、見終わったら速やかに退場するよう繰り返しアナウンスが流れた。

関西代表は淀工明浄天理に決まった。これから2ヶ月弱、彼らの血の滲むような練習はさらに続く。《吹奏楽の甲子園》こと、普門館での健闘を祈る!

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