繁昌亭でミスト・シャワーの洗礼を
ヒートアイランド対策として天満天神繁昌亭にドライミストを設置するという話は7月22日に上方落語協会会長・桂三枝さんの落語会で聞いた。その時は9月上旬くらいになりそうだと三枝さんは仰っていたが、どうやら予定が早まったらしい。既に8月2日から稼動しているようだ。→三枝さんのブログへ
式典当日には平松(大阪)市長もわざわざこられたとのこと。
僕は昨日の日曜に昼席に立ち寄ったので、早速ミスト・シャワーを全身に浴びた。
ミストは細かい噴霧状に放散されるので、体に直截当たっても濡れたりはしない。その威力は確かに絶大で、前回真昼に来た時よりもはるかに涼しかった。ただ、これで打ち水もしていれば、さらに効果が上がるだろう(地面からの照り返しの熱は馬鹿にならない)。
今回の演目は以下の通り。
- 林家 市楼/つる
- 桂 吉坊/もぎ取り(「軽業」の前半部)
- 桂 歌之助/うなぎ屋
- ダグリィー・マロン/マジック
- 笑福亭仁福/転失気(てんしき)
- 笑福亭三喬/月に群雲(小佐田定雄さんによる新作落語)
- 笑福亭達瓶/ちりとてちん
- 笑福亭仁勇/鹿政談
- 桂 米八/曲独楽
- 林家 染二/立ち切れ線香
中トリが三喬さん、大トリが染二さんで第1回&第2回繁昌亭大賞受賞者が揃い踏み。生の三喬さんはこれが2度目なのだが、前回ワッハ上方で聴いたのも「月に群雲」で重複したのが残念。
「立ち切れ線香」はDVDで桂 米朝さんのを観たが、生は初めて。緩急自在な染二さんは相変わらずの名人芸で、丁稚の語りは軽やかに、またその一方で番頭や小糸の母が語る場面はじっくりと聴かせ、この上方落語屈指の名作を十分堪能させて貰った。
さて、13時に始まった昼席がはねたのが16時20分くらい。それから心斎橋に移動し、来月の大阪クラシックで長時間並ぶ際に使用するアウトドア用携帯椅子を東急ハンズで物色。それから軽く夕食を済ませて地下鉄で梅田へ向かった。阪急電車の宝塚線に乗り換え岡町駅で降りる。豊中市立伝統芸能館で桂 九雀さんの落語会を聴くためである。
黒子を含む7人の役者たちで噺劇(しんげき)「淀五郎」が演じられ、中入りをはさんで九雀さんが落語「住吉駕籠」(すみよしかご)をされた。
噺劇の詳しい説明は九雀さんの公式サイトに書かれている。煎じ詰めれば落語と演劇のコラボレーション。生の三味線と鳴物入りで、衣装はあるけれど舞台装置はなし。小道具は扇子と手ぬぐいだけ。後は観客の想像力に委ねるという点では非常に落語的である。台本は九雀さんが執筆されているそうだ。
落語「淀五郎」は歌舞伎を素材にした江戸の人情噺。そういう意味で「中村仲蔵」の兄弟分のような印象を受けた。劇の前に九雀さんから「仮名手本忠臣蔵」の解説もあり、とても分かり易かった。
以前「落語はJAZZだ!〜桂枝雀と上方落語論」という記事に書いた通り、僕は人情噺が苦手である。しかし今回演劇的手法で観てみると、これが意外と面白かったので驚いた。九雀さんの創意工夫の勝利であろう。また噺劇が上演される機会があれば是非観たいと想った。
自由料金制。つまり「お代は見てのお帰りに」という方式も、なかなか新鮮だった。大入り満員のため九雀さんが「済みませんが座布団をもっと前に詰めてください!」と会場整理をする一幕もあった。
九雀さんは故・桂 枝雀さんのお弟子さんだが、枝雀一門は上方落語協会を脱退したので繁昌亭昼席に出演することが出来ない。実力があるのに大変惜しい気がする。一門の落語がもっと気軽に繁昌亭で聴けるようになったらいいのになと願っているのは、決して僕だけではないだろう。
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