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2008年8月

2008年8月30日 (土)

北村英治 at ロイヤルホース

Jazzクラリネットの第一人者、北村英治さんの演奏を聴きにロイヤルホースに足を運んだ。

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吹奏楽が好きな人にとって北村さんは、NHK-BSで放送中の「響け!みんなの吹奏楽」のゲスト・ミュージシャンとしてもお馴染みであろう。

演奏は北村さん以外にビアノ、ドラム、ベースの計4名。演奏されたうち約8割はリクエスト曲で構成された。僕は配られたリクエスト・カードにコール・ポーター作曲の「ビギン・ザ・ビギン」と"So in Love"(ミュージカル「キス・ミー・ケイト」より)を書いたのだが、そのうち1曲が採用されてとても嬉しかった。まず第1ステージ(19:00~)で演奏されたのは、

  • Rose Room
  • 星に願いを
  • 酒とバラの日々
  • Heartaches(ボサノバ)
  • Alice Blue Gown(ワルツ)
  • A列車で行こう
  • All of Me

第2ステージ(20:30~)は

  • Moonglow(映画「ピクニック」より)
  • 五月によせて(作曲:北村英治)
  • ビギン・ザ・ビギン(スウィング)
  • 映画「ひまわり」テーマ
  • ありがちなこと("Just one of those things")
  • Memories of You
  • Sing, Sing, Sing

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コール・ポーターの「ありがちなこと」は初めて聴いたのだが、アップテンポでとっても素敵な曲だった。

食事やワインを愉しみながらリラックスして聴けた。また、ミンチカツや生パスタなどフード・メニューも美味しかった!

Jazzってコンサート会場でかしこまって聴くよりも、こういった雰囲気の方が断然いいなとしみじみ想った夏の終わりの一夜であった。

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2008年8月29日 (金)

玉造・猫間川寄席

8/27(水)に桂 文我さんが世話人をされている猫間川寄席に足を向けた。

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いかにも手作りの寄席という感じで、チケットにも味があったので掲載しておく。

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なんとミシン目がない!まさに「もぎられた」という感じ。

演目は以下の通り。

  • 笑福亭呂竹/色事根問
  • 笑福亭生喬/竹の水仙
  • 桂   文我/鬼薊(おにあざみ)
  • 桂   三歩/さよなら動物園
  • 桂   文我/千両みかん

「鬼薊」は江戸時代に実在した盗賊・鬼薊清吉の若き日の物語。

武蔵野にはびこるほどの鬼あざみ/今日の暑さに枝葉しおるる

という辞世の句が有名だそうで、歌舞伎の演目にもなっているとか。桂 文團治(四代目)から桂 文紅に受け継がれた、なんと上方落語では極めて珍しい人情噺であった。ただ舞台はお江戸だから、明治あたりに上方に移植された噺なのではないだろうか?僕は人情噺が元々嫌いなので、これも余り面白いとは想えなかった。どうも文我さんは「蜆売り」など人情噺に力を注いでおられるようだ。

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さすが大阪は上方落語の本場で、毎日どこかで必ず落語会をやっている。そして今回つくづく感じたのは、落語って演じる人さえいればどこでだって出来るんだなぁということ。こうやって何百年も伝えられてきた文化。大切にしたいものである。

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2008年8月27日 (水)

吹奏楽部の名物先生 《九州篇》

今年10月に東京・普門館で開催される全日本吹奏楽コンクールは既に北陸・中四国・九州の代表校が決まっている。その中に原田学園 鹿児島情報高等学校(初出場)の名前を見つけ、僕は「遂に来たッ!」と内心で叫んだ。ここの吹奏楽部顧問を現在されているのが、屋比久 勲(やびく いさお)先生だからである。

屋比久先生は沖縄県で中学校教諭をされていた時代、赴任した真和志・石田・小禄・首里の各中学校をそれぞれ全国大会出場に導いた。1972年那覇市立真和志中学校が沖縄県として初めて全国大会金賞を受賞した時は市中の凱旋パレードと祝賀会が盛大に行われたそうである。

その実績が高く評価された屋比久先生は1990年に福岡工業大学附属城東高等学校へ迎えられた。昨年3月に城東を退官され、鹿児島情報高に移られた時点での全国大会出場回数は総計25回、うち金賞受賞は12回(中学校5回、城東高で7回)に上る。

屋比久先生が最も得意とするのが兼田 敏/シンフォニックバンドのためのパッサカリア。2004年に淀工の丸ちゃん(丸谷明夫 先生)に招かれ、なにわ《オーケストラル》ウインズで客演指揮されたときもこれを選曲され、鹿児島情報高でも昨年、コンクール自由曲として振られている。

それにしても先生が鹿児島に行かれてたった1年半で普門館に駒を進めるバンドに育てられたのだから、正に驚異的指導力である。

さて、2007年のなにわ《オーケストラル》ウインズで客演指揮されたのは鹿児島県立松陽高等学校吹奏楽部の立石純也 先生だった。立石先生は松陽を2000年に初めて全国大会出場に導き、2004年には金賞をもたらした。これは50年以上続く全日本吹奏楽コンクール史上、鹿児島県代表では初の金賞であった。04-06と3年連続で松陽は全国大会に出場したので、大会規定により07年はお休みだった。

しかし、今年の九州地区代表にも松陽の名前はなかった。これが意味するところはひとつしか考えられない。そこで調べてみると、案の定であった。立石先生は今年、奄美大島の大島高等学校に転勤されていることが判明したのである(→定期演奏会情報へ)。奄美大島から普門館へ、駒を進めてくるのは今から何年後のことだろう?また愉しみにして待ちたいと想う。

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2008年8月26日 (火)

チャン・イーモウと北京オリンピック

今年の北京オリンピック開会式および閉会式は驚異の人海戦術と、絢爛たる衣装、そしてを主体とした強烈な色彩感覚で観客を魅了し、言葉を失うほど圧倒的なパフォーマンスであった。その総合演出を担当したのが映画監督のチャン・イーモウ(張 芸謀)である。

元々はカメラマン出身で、例えばチェン・カイコー監督の「黄色い大地」('84)では撮影監督だった。彼の初監督作品「紅いコーリャン」('87、ベルリン国際映画祭金熊賞、キネマ旬報ベストテン第3位)はコン・リー(鞏 俐)のデビュー作でもあるのだが、これもが鮮烈な印象を残した。

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僕が偏愛する映画「初恋のきた道」('99、ベルリン国際映画祭銀熊賞、キネマ旬報ベストテン第4位)はチャン・ツィイー(章子怡)のデビュー作。やはりヒロインが着る衣装は主体である。この究極のアイドル映画を観た直後、僕が興奮しながら書いたレビューはこちら。いま読み返すと我ながら気恥ずかしいが、これも青春の1ページだろう。

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そして張 監督の色彩感覚がエンターテイメントとして昇華し、万華鏡のように花開くのが「HERO 英雄」(2002)と「LOVERS 十面埋伏」(2004)である。ただこの2作は映像としては確かに美しいのだが脚本が脆弱なので、僕は映画としては評価していない。

今回の北京五輪を観ながら想ったのは、まるで「HERO」や「LOVERS」の世界をライヴでやったような豪華さだなということだった。そしてそれはDVDで観た、チャン・イーモウ演出によるプッチーニ/歌劇「トゥーランドット」を彷彿とさせた。これは'98年に北京の紫禁城で上演された空前のスケールのプロジェクトで、兵士役のエキストラは本物の人民解放軍兵士たちが出演している。「トゥーランドット」上演史を振り返ってもメトロポリタン歌劇場におけるフランコ・ゼフィレッリのプロダクションに匹敵する名演出であった(余談だが2001年に劇団四季の浅利慶太氏はミラノ・スカラ座の「トゥーランドット」を演出しているが、こちらは貧相で救いようのない代物)。

国家とオリンピック、そして映像作家の関係を考える時、避けては通れないのがレニ・リーフェンシュタール(1902-2003)のことである。彼女は1936年に開催されたベルリン・オリンピック(当時のドイツ首相はアドルフ・ヒトラー)の記録映画「オリンピア」(第1部「民族の祭典」第2部「美の祭典」)を監督し、世界から絶賛された。これはヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した他、日本ではキネマ旬報ベストテン第1位に輝いている。しかし第二次世界大戦後、この映画やナチス党大会を記録したプロパガンダ映画「意思の勝利」('35)を製作したことから彼女はナチスの協力者と見なされ、逮捕投獄された(4年後、無罪が確定し釈放)。そして後半生の彼女の仕事は世間から完全に黙殺された。このあたりの事情は彼女自身を追ったドキュメンタリー映画「レニ」('93、レイ・ミュラー監督)に詳しい。

「シンドラーのリスト」でアカデミー賞を受賞したユダヤ人のスティーブン・スピルバーグは北京五輪の芸術顧問に就任していた。しかし、ハリウッド女優でユニセフ親善大使のミア・ファローが2007年に米ウォール・ストリート・ジャーナル紙でスーダンのダルフール問題に関し「ジェノサイドのオリンピック」と題する文章を発表。スーダンへの中国政府の支援を非難し、「スピルバーグ監督は果たして、北京五輪のレニ・リーフェンシュタールになりたいのか」と書いた。そしてスピルバーグは今年2月、芸術顧問を辞任した。

さて、チャン・イーモウは北京五輪を仕切ったことによって、後に《中国のレニ》と呼ばれる日が来るのだろうか?現時点で僕には分からない。しかし政治的問題は抜きにして、芸術家はその作品においてのみ、評価されてしかるべきだろう。未だかつて誰も体験したことのない《史上最大のショウ》を見せてくれた彼に、心から感謝したい。正にThat's entertainment ! であった。

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2008年8月23日 (土)

落語でお伊勢参り

お伊勢参りにちなんだ落語の数々と、そのゆかりの地を噺家の桂 文我さんが訪ね歩いた模様を収録したDVDブック刊行を記念して、落語会がワッハ上方で催された。

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文我さんはその著書《落語「通」入門》(集英社新書)の中で師匠・桂 枝雀さんから言われていたことについて、次のように書かれている。

師匠から常々「最近は米朝師匠(枝雀の師匠)のように、落語の資料を集めながら、落語の歴史も熟知した上で本を著せるようなタイプの噺家がいないから、米朝師匠の万分の一でもいいから、そのジャンルを押さえなさい」という言葉を受け、少しずつ演芸関係の資料を集めながら、落語の周りの事柄も調べさせていただきました。

今回の企画も正にその言葉を実践された内容と言えるだろう。

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上方落語の旅ネタは「東の旅」、「西の旅」、「南の旅」、「北の旅」の四つに分かれる。お伊勢参りは「東の旅」。全部続けると相当な大河落語になるが、今回演じられたのはその《行き》の行程。《帰り》の旅を描くのが「こぶ弁慶」「三十石」などである。

まず前半の部では大阪を発って伊勢神宮にいたるまでの珍道中を描く落語五席がリレー形式で披露された。

  • 桂まん我/東の旅発端
  • 桂阿か枝/煮売家
  • 桂   米平/七度狐
  • 桂   宗助/うんつく酒
  • 桂   文我/軽業講釈

こうやってまとめて聴く機会は滅多にないことなので、貴重な体験だった。「軽業講釈」は、しばしば高座にかけられる「軽業」に、講釈師を登場させる珍しい噺。故・桂文枝(五代目)が得意としていたものらしい。とても面白く聴いた。

後半はDVDを上映しながら、文我さんと関係者のトークを交える形式で進行。当時の旅を偲んだ。

師匠からの教えを守りながら、落語という上方の文化遺産をしっかり後世に伝えようという文我さんの真摯な姿勢が胸を打つ一夜であった。

九雀さんの記事でも書いたけれど、文我さんも枝雀一門なので上方落語協会に所属せず、その高座を天満天神繁昌亭で聴く機会はない。大変残念なことである。

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2008年8月22日 (金)

関西吹奏楽コンクールを前に

先日、一般前売りが一切ない関西吹奏楽コンクール(高等学校A)のチケットが某オークションに出品され、定価1,200円のところ2,900円で落札されていた。

僕は幸にも正規料金で入手することが出来た。チケットを譲ってくださった方の恩に報いるため、そして会場に入ることが出来ない多くの人々のためにも一生懸命、当日のレポートをしたいと想う。本番は8/28(木)である。

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今年の関西吹奏楽コンクール(高等学校A)では、バルトーク/バレエ音楽「中国の不思議な役人」を3校が取り上げることが注目される。四條畷学園高等学校を指揮する伊勢敏之さんは同曲を創価学会関西吹奏楽団で振り、全国大会金賞を受賞されている実力派。なお、伊勢さんはトロンボーン奏者でもあり、延原武春/テレマン室内管弦楽団のベートーヴェン・チクルスにも参加されていた。天理高等学校向陽台高等学校も「中国の不思議な役人」に挑む。

一方、過去自由曲人気ラインキングでツートップの「ローマの祭」(全日本吹奏楽コンクール演奏回数90回)と「ダフニスとクロエ」(同88回)を今年の関西大会では一校も取り上げてないというのも面白い現象である。

大阪府立市岡高等学校を指揮する潮見裕章さんは大阪シンフォニカー交響楽団のチューバ奏者。公式サイトはこちら。市岡の自由曲はG.プッチーニ/歌劇「トスカ」より

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部は、創部2年目で全日本吹奏楽コンクールに出場(銀賞)を果たした。ここによると環境も恵まれている。公立の中学校で優秀な成果を上げた吹奏楽部顧問の先生を迎えるという手法は福岡工業大学附属城東高等学校に似ている(前顧問の屋比久 勲先生は沖縄県の垣花・真和志・石田・小禄・首里の各中学校を経て城東へ、現顧問の武田邦彦先生は北九州市立沼中学校を経て城東へ)。桐蔭は甲子園で8/18まで野球の応援していたが、テレビの解説によると演奏していたのは主にマーチング組だそうで、コンクール組にその影響はなさそうである。

洛南高等学校を指揮されるのは、この吹奏楽部出身の池内毅彦先生。今年、自由曲にD.ブージョワ/古の都フリブールという珍しい曲を持ってきた。洛南は伝統的に大阪市音楽団が定期演奏会で初演した曲を自由曲に選ぶことが多かったが(昨年のP.スパーク/宇宙の音楽など)、今年は池内先生の独自色を打ち出されたということだろうか?大いに期待したい。

昨年、全日本吹奏楽コンクールで悲願の金賞を勝ち取った小野川昭博/明浄学院高等学校F.リスト/バッハの名による幻想曲とフーガ(田村文生 編)。これは昨年全日本吹奏楽コンクール光ヶ丘女子高等学校(愛知県)が演奏し、金賞を受賞した曲。元々はB-A-C-H(シ♭-ラ-ド-シ)の音列を基にしたピアノ曲で、「饗応夫人」で有名な田村さんの魔法に満ちたアレンジが素晴らしい。

近畿大学附属高等学校を指揮する小谷康夫さんは大阪シンフォニカー交響楽団のティンパニ首席奏者。小谷さんの公式サイトはこちら。自由曲のJ.マッキー/レッド・ライン・タンゴは、昨年全日本吹奏楽コンクール高知県立高知西高等学校が演奏したのを聴いた。ABAオストワルド作曲賞(2005年)を受賞したプログレッシブ(先鋭的)ジャズ・ロックみたいな大変面白い曲。また聴けるのが今からとても愉しみである。

丸谷明夫/淀川工科高等学校(淀工)の自由曲は大栗裕/大阪俗謡による幻想曲。言わずと知れた丸ちゃんの十八番である。記事「続・大阪俗謡をめぐる冒険~究極の名盤はこれだ!!」にも書いたが、丸ちゃん/淀工の演奏で過去最高だったのは1989年全日本吹奏楽コンクールの実況録音。2005年の演奏は水も漏らさぬ鉄壁のアンサンブルで確かに凄いのだけれど、一方で「大阪俗謡」という祭の音楽に、フランス印象派の音楽みたいな精緻さは余り似合わないなとも感じられた。

僕が今年の淀工生に期待したいのは高校生らしい伸び伸びとした演奏、生き生きした表現で'89年版の《祭の熱狂》を超えるものを是非聴かせて欲しいということである。

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2008年8月20日 (水)

田辺寄席 葉月席/UFO来襲!

8/17(日)は田辺寄席に往った。

演目は以下の通り。

  • 桂ちょうば/平林
  • 桂   吉坊/稲荷俥
  • 桂    文太/大江山酒呑童子・大蛇太夫(贋作)
  • 月亭 遊方/酔いどれ交番所(遊方 作)
  • 桂   米二/千両みかん

吉坊さんは先日の繁昌亭の高座以来これが2回目。歯切れのよい語り口でやっぱり上手い人だとな感心した。「稲荷俥」というのも珍しい噺で面白かった。

文太さんの贋作は芝居噺。登場人物のひとりひとりが目に浮かぶような名人芸を堪能。

米二さんの高座をテレビで観た時は退屈したけれど、生だとなかなか聴かせた。「千両みかん」の導入部が「崇徳院」そっくりなのも興味深い。

遊方さんは繁昌亭大賞創作賞を受賞されたばかり。寄席の帰り際、その遊方さんにサイン帳を差し出している少女を見かけた。ペンを走らせながら「そうか、頑張ってな」と遊方さん。それで漸く気がついた。彼女こそ、だれあろう小学生落語家「りんりん亭りん吉」(桂三枝 命名)さんではないか!→りん吉さん公式ブログ

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で、遊方さんの創作落語が面白かったので8/19(火)は「遊方のゴキゲン落語会」にも足を運ぶ。場所は存続の危機に立つワッハ上方4F展示室内《上方亭》。

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  • 月亭   遊方/幕開前戯噺
  • 笑福亭扇平/ちりとてちん
  • 月亭   遊方/有閑マダムの赤い鳥
  • 月亭   遊方/怪奇ホテル・オソレミオ

遊方さんは現在、天王寺在住だそう。近所のホームレスが結構犬を飼っている話、東京の「大銀座落語祭」に参加したついでに日光のユースホステルに泊まった話(宿泊料二千数百円!)、名前が縁で京都のUFO祭に招かれ、京大西部講堂で落語《戦え!サンダーマン》を演ったことなどを話され、とっても愉しい時を過ごした。

そうそう、大師匠に当たる月亭可朝さんがストーカー容疑で逮捕された日は、イギリスのエジンバラにいる桂あやめさんから「どないなっとん?」と間髪入れずにメールが届いたことなども披露。爆笑に次ぐ爆笑のうちにお開きとなった。→桂あやめ「エジンバラ日記」

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2008年8月18日 (月)

市音の日!/たそがれコンサート 2008

関連記事:
たそがれコンサート~市音の日 2007

待ちに待った「市音の日」。今年も遂にその時がやって来た。いそいそと大阪城(野外)音楽堂へと足を運ぶ。今回は《日本の名曲とアメリカン・エンターテイメント》と副題がついていた。

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小松一彦(首席客演指揮者)/大阪市音楽団という組み合わせは、昨年と一緒。このコンビがリリースした第95回定期演奏会ライヴCDは「レコード芸術」誌の特選盤に選ばれている。ちなみに一昨年の「市音の日」は特別指揮者・芸術顧問の秋山和慶さんが指揮された。日本一、いや、世界でもトップクラスの演奏が、無料で聴けるのだから「たそがれコンサート」は最高だ。大阪府は4番目のオケ、大阪センチュリー交響楽団を結成し府民の税金を完全に無駄遣いしただけだったが、大阪市は素晴らしい文化事業を成し遂げたと言えるだろう。

まず演奏されたのは、大栗 裕/吹奏楽のための小狂詩曲。1966年、全日本吹奏楽コンクール課題曲である。この年、関西からは谷口 真/天理高等学校(奈良県代表)が全日本吹奏楽コンクールでこれを演奏し、堂々1位に輝いている(この頃は金・銀・銅ではなく順位制だった)。ちなみに大栗といえば「大阪俗謡による幻想曲」、そして「大阪俗謡」といえば丸ちゃん(丸谷明夫 先生)率いる淀工だが、淀工が全国大会に初出場するのは74年、そして「大阪俗謡」で金賞を受賞するのは80年の話である。

関連記事:
大阪俗謡をめぐる冒険

そして小山清茂/1. おてもやん 2. もぐら追い。小山清茂は神楽や祭囃子をモチーフにして、日本情緒に満ちた曲想が特徴の作曲家。「吹奏楽のための木挽歌」('70)が特に有名。これは元々「管弦楽のための木挽歌」('57)を作曲者自身が編曲したもので、その成立の経緯は「大阪俗謡」と似ている。今回演奏されたのも民族色豊かで、聴いていてとても愉快な気分になれるひょうきんな曲だった。

続いて「たなばた」で有名な酒井格 編曲による「美ら唄たち」。メドレーで取り上げられるのは以下の通り。

さとうきび畑(ユーフォ、Tp、Ob、Fl)涙そうそう(テナー、鉄琴)(ユーフォ、Tp、テナー)島唄(Tp、ユーフォ)

様々なソロが登場する練りに練られたアレンジであった。しっとりと始まり、次第に盛り上がっていく構成も文句なし。

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休憩を挟んでアメリカに飛ぶ。

「ガーシュウィン・オン・ブロードウェイ」 (J.モス 編) Strike Up The Band-Someone To Watch Over Me-'S Wonderful-Summertime- I Got Rhythm

チューバ・ソロで意表を突いた"サマータイム"は歌劇「ポーギーとベス」の曲で、他はすべてブロードウェイ・ミュージカルのために書かれている。映画「巴里のアメリカ人」('51)のジーン・ケリーや"Strike Up The Band"('40)のジュディー・ガーランド、そして劇団四季の「クレイジー・フォー・ユー」等の一場面を思い浮かべながら愉しく聴いた。

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H.マンシーニ/ピンク・パンサー(小野崎孝輔 編)はチューバ・ソロで始まり、ミュート・トロンボーン→バリトン・サックスと歌い継がれる。低音楽器をフィーチャー(featuring)するアレンジが面白い。

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L.バーンスタイン/「ウエストサイド・ストーリー・メドレー」 アメリカ〜トゥナイト〜マンボ

これは「アフリカン・シンフォニー」など"ニュー・サウンズ・イン・ブラス"シリーズでお馴染み、岩井直溥さんの編曲がお見事!特にマラカス、ボンゴが大活躍し、カリビアンなムードに溢れた"トゥナイト"は惚れ惚れと聴いた。考えてみれば「シャーク団」はプエルトリコ系なんだから、カリブ海出身なんだよね。

ちなみに、この夏の甲子園では代表校55校のうち、実に50校の応援団が「アフリカン・シンフォニー」を演奏したそうである。

E.バーンスタイン/荒野の七人(T.ミューラー 編)は有名なテーマだけではなく、盗賊が襲撃してくる場面や、雇われた七人の凄腕ガンマンとメキシコの寒村の人々との心の交流を描く牧歌的音楽も挿入されており聴き応えあり。

プログラム最後、話題沸騰のP.グレイアム/キャッツ・テイルズは"スーパー・ウィンド・ポップス"と呼ばれているそうだ。曲の詳しい解説はこちら。いやはや興奮しっぱなしで底抜けに痺れる傑作である。

I. カタロニア(E.バーンスタインのために)はボレロのリズムに乗って、さすらいのトランペットが「皆殺しの歌」を奏でる。JAZZYなテイストいっぱいだ。
II. キャットウォーク(H.マンシーニのために)は"ピンク・パンサー"風味。ミュート・トランペットが酒場のJAZZの雰囲気を醸し出す。
III. スキャット!(ソニー・ロリンズのために)はアルバム「サキソフォン・コロッサス」で名高いジャズ・ジャイアントに捧げられているので、当然テナー・サックスが大活躍。
IV. キャットナップ(G.ガーシュウィンのために)は"サマータイム"へのオマージュ。マリンバがフィーチャーされている。catnapとは「うたた寝」という意味。一方の"サマータイム"は母親が歌う子守歌である。
V. トッカータ(L.バーンスタインのために)はマンボのリズムでソロ・トランペットも登場。さあ、ダンス・パーティの始まりだ!市音の演奏もノリノリで言うことなし。

この、P.グレイアム/キャッツ・テイルズは出来たてホヤホヤの新曲。難易度が高く、とにかく音楽としても鑑賞に堪える素晴らしい曲なので、今後コンクールの自由曲として間違いなく大人気となるであろう。秋山和慶/大阪市音楽団の演奏でCD「ニュー・ウィンド・レパートリー2008」(レコード芸術 特選盤)に収録されている。詳しくはこちら

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今年も、夢のような一夜をありがとう!大阪市音楽団。

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2008年8月15日 (金)

夏の映画、夏の音楽

夏になると無性に観たくなる映画や聴きたくなる音楽というものがある。以前クリスマスに相応しい映画について「クリスマスの思い出」と「続・クリスマスの思い出」という記事に書いたが、今回はその夏バージョンを書きたいと想う。まずは映画から。

  • 転校生(1982年尾道版)
  • 時をかける少女(2006年アニメーション版)
  • 耳をすませば(1995)
  • がんばっていきまっしょい(1998)
  • 天然コケッコー(2007)
  • 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1993)
  • 太陽の少年(1994、中国)
  • スタンド・バイ・ミー(1986、米国)

「転校生」(キネマ旬報ベスト・テン第3位)は現・三谷幸喜 夫人である小林聡美のデビュー作。撮影当時、彼女は16歳くらいかな。大林宣彦監督の尾道三部作の初頭を飾る名作である(後に新・尾道三部作も出来た)。僕がこの映画をTVで初めて観たのも16歳くらいで、これが大林映画との出会いとなった。「転校生」は後に長野県に舞台を移し大林監督自らの手でリメイクされたが、僕にとってそちらの方はなかったことになっている。その「転校生 さよならあなた」(2007)は秋から冬にかけての物語である。

さて、「時をかける少女」は大林宣彦監督、原田知世のデビュー作(1983)の話ではない。尾道三部作の第二弾となる大林版は言わずと知れた日本映画史に燦然と輝く金字塔なのだけれど、あちらは春の映画。今回ご紹介したいのは細田守監督のアニメーション版。これはリメイクではなく、大林版から23年後の続編として製作されている。公式サイトはこちら。公開当時の僕のレビューはこちら。細田監督が宮崎駿さん(以後「宮さん」と呼ぶ)と喧嘩して「ハウルの動く城」を降板した経緯などについても触れている。

「耳をすませば」はスタジオ・ジブリのアニメーターだった近藤喜文の最初で最後の監督作品。映画が完成して3年後に近藤監督は47歳の若さで亡くなった。宮さんは自分の後継者として彼を考えていただろうに、その痛手は計り知れない。なお、現在でも日テレ「金曜ロードショー」で放送されているオープニング映像は近藤喜文の作画・演出である(音楽/久石譲)。

しかし「耳をすませば」の脚本・絵コンテ・キャラクターデザインは全て宮さんが担当しているので、これは実質的に宮崎アニメである(何でも自分でしないと気が済まないその性癖のために、ジブリには後進が育たない)。宮さんはヒロインに麦わら帽子を被せるのが大好きで、「耳をすませば」も例外ではない。またその姿が確かに可愛いのだ。ちなみに東京にある三鷹の森ジブリ美術館にはその名もずばり、カフェ「麦わら帽子」がある。麦わらのストローで飲むジュースはとても美味しい。ちなみにフードメニューのお勧めは「くいしんぼうのカツサンド」。

「がんばっていきまっしょい」は田中麗奈のデビュー作。映画公式サイトはこちら。愛媛県立松山東高等学校のボート部を舞台にしたこの作品は、2005年にフジテレビ系でドラマ化されたのでご覧になった方も多いだろう。丁寧に作られたテレビ版の出来もよかったが、やっぱりキネマ旬報ベスト・テン第3位になった映画版に止めを刺す。なお、テレビ版DVDもレンタルで観ることができるが第4話から出演者の一人が未成年飲酒問題で降板し、代役になっている。

「天然コケッコー」(キネマ旬報ベスト・テン第2位)の公式サイトはこちら。昨年僕が書いたレビューはこちら

「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」と「太陽の少年」(キネマ旬報外国映画ベスト・テン第2位)はまるで姉妹のような映画である。「打ち上げ花火…」の奥菜恵、「LOVE LETTER」の酒井美紀、そして「花とアリス」の蒼井優。岩井俊二監督は移ろいゆく少女たちが最高に輝く一瞬を的確に捉え、永遠の記憶としてそれをフィルムに刻み込む。「打ち上げ花火…」ファンサイトはこちら

「スタンド・バイ・ミー」はベン・E・キングが唄った1961年のヒット曲が、まるで映画のために書かれたかのように見事に寄り添っている。モダンホラーの旗手、スティーヴン・キング原作小説の映画化で成功したものとしては、「ショーシャンクの空に」「デッド・ゾーン」「キャリー」「ミザリー」と並んで筆頭に上げられるべき作品。キネマ旬報外国映画ベスト・テン第5位。

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さて、音楽の話題に移ろう。まずは久石譲 作曲のその名もずばり"Summer"。映画「菊次郎の夏」のテーマとして書かれた爽やかな名曲である。TOYOTAカローラのCMで使用され一躍有名になった。映画自体は凡庸なロード・ムービー。北野武監督は国内外ともに過大評価されているとしか僕には想えない。彼の作品で観る価値があるのは「キッズ・リターン」と「ソナチネ」くらい。新作「アキレスと亀」はヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で「崖の上のポニョ」や「スカイ・クロラ」とガチンコ勝負するわけだが、さて、結末や如何に?

最後にクラシック音楽からご紹介したい。夏といえばフレデリック・ディーリアス。一応イギリスの作曲家ということになっているが彼の両親はドイツ人で、若い頃はアメリカなどを放浪した。そしてノルウェーでグリークの多大な影響を受け、最後はフランスで暮らした。ディーリアスの晩年を描いたテレビ映画がケン・ラッセル監督の「夏の歌」で、これは味わい深い佳作であった。

ディーリアスの音詩(Tone Poem)「夏の夕べ」や「夏の歌」を聴いていると、僕の脳裏にはたちまちニッコウキスゲが群生する尾瀬湿原の夏の風景が浮かんでくる。その写真が美しく撮れているのはこちら→mckeeの手帳

ディーリアスのCDではトーマス・ビーチャムかジョン・バルビローリが指揮したものなら間違いない。廉価版ではNAXOSから出ているロイド=ジョーンズ指揮の2枚のCDがお勧め。実売価格1,000円前後である。

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2008年8月13日 (水)

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!

評価:D

映画公式サイトはこちら

Hotfuzz

原題はシンプルに"HOT FUZZ"。邦題の安っぽさの通り、B級のポリス・コメディ。コメディと言っても英国映画なのでかなりブラックで、僕は全く笑えなかった。

後半の派手な銃撃戦がこの映画の見せ場なのだが、サム・ペキンパー(「ゲッタウェイ」「ワイルドバンチ」)をもっと下品にした感じ。悪趣味でついていけない。

本当は評価をFにしてもよかったが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ハワード・ザ・ダック」「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「サイン」「キューティーハニー」「鉄道員(ぽっぽや)」「スパイダーマン3」など、真のクズ映画に比べればまだマシか、と思い直した。

本作は英米公開時より熱狂的ファンを生み、評論家からも概ね好評を得た。日本では危うく未公開になりそうだったところを、危機感を抱いたファン有志が署名活動を行い漸く公開に漕ぎ着けたそうだ。そういう意味では"カルト映画"ということになるのだろう。蓼食う虫も好き好きといったところか。

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2008年8月12日 (火)

高田泰治/フォルテピアノ&クラシカル楽器で楽しむモーツァルト

日本テレマン協会マンスリーコンサートを大阪倶楽部で聴いた。

曲目は全てモーツァルトの作品で

  • 交響曲 第1番 K.16(8歳の作品!)
  • ピアノとヴァイオリンの為のソナタ ニ長調 K.306
  • 交響曲 第11番 K.84
  • 幻想曲 ニ短調 K.397
  • ピアノ協奏曲 第9番 「ジュノム」 K.271

フォルテピアノ/高田泰治、ヴァイオリン/大谷史子、延原武春/テレマン室内管弦楽団(弦楽器+ホルン2、オーボエ2)というメンバーだった。

少人数によるモーツァルトのシンフォニーやコンチェルトをサロンで聴くというのは新鮮な体験で、恐らく初演時もこんな雰囲気だったんだろうなという気分に浸った。ただし、当時の貴族たちが集った王宮の間はもっと天井が高かったのだろうけれど。

今回使用されたフォルテピアノはモーツァルトが生きていた時代、ウィーンのアントン・ヴァルターにより製作されたもののコピー楽器。KAWAIのロゴが入っていた(→河合楽器のホームページでその音色が試聴できる)。鍵盤の数は現代のピアノより少ない。

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ピアノフォルテのやや乾いて鄙びた音色は、ガット弦のそれによく溶け合い、見事に調和していた。

決して感傷的にならず、端正で正確無比な高田さんの弾き方もモーツァルトに似つかわしい。

ベートーヴェンのシンフォニーでは気になった管楽器の粗(あら)もモーツァルト初期作品の単純な譜面では目立たず、とても愉しめた。

兎に角、古典派の音楽を作曲当時のクラシカル楽器で聴かせてくれるのは関西ではテレマンのメンバーしかいないのだから、とても貴重な存在だ。

これからも期待してまっせ、頑張ってや!

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2008年8月11日 (月)

繁昌亭でミスト・シャワーの洗礼を

ヒートアイランド対策として天満天神繁昌亭にドライミストを設置するという話は7月22日に上方落語協会会長・桂三枝さんの落語会で聞いた。その時は9月上旬くらいになりそうだと三枝さんは仰っていたが、どうやら予定が早まったらしい。既に8月2日から稼動しているようだ。→三枝さんのブログ

式典当日には平松(大阪)市長もわざわざこられたとのこと。

僕は昨日の日曜に昼席に立ち寄ったので、早速ミスト・シャワーを全身に浴びた。

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ミストは細かい噴霧状に放散されるので、体に直截当たっても濡れたりはしない。その威力は確かに絶大で、前回真昼に来た時よりもはるかに涼しかった。ただ、これで打ち水もしていれば、さらに効果が上がるだろう(地面からの照り返しの熱は馬鹿にならない)。

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今回の演目は以下の通り。

  • 林家   市楼/つる
  • 桂   吉坊/もぎ取り(「軽業」の前半部)
  • 桂   歌之助/うなぎ屋
  • ダグリィー・マロン/マジック
  • 笑福亭仁福/転失気(てんしき)
  • 笑福亭三喬/月に群雲(小佐田定雄さんによる新作落語)
  • 笑福亭達瓶/ちりとてちん
  • 笑福亭仁勇/鹿政談
  • 桂      米八/曲独楽
  • 林家   染二/立ち切れ線香

中トリが三喬さん、大トリが染二さんで第1回&第2回繁昌亭大賞受賞者が揃い踏み。生の三喬さんはこれが2度目なのだが、前回ワッハ上方で聴いたのも「月に群雲」で重複したのが残念。

「立ち切れ線香」はDVDで 米朝さんのを観たが、生は初めて。緩急自在な染二さんは相変わらずの名人芸で、丁稚の語りは軽やかに、またその一方で番頭や小糸の母が語る場面はじっくりと聴かせ、この上方落語屈指の名作を十分堪能させて貰った。

さて、13時に始まった昼席がはねたのが16時20分くらい。それから心斎橋に移動し、来月の大阪クラシックで長時間並ぶ際に使用するアウトドア用携帯椅子を東急ハンズで物色。それから軽く夕食を済ませて地下鉄で梅田へ向かった。阪急電車の宝塚線に乗り換え岡町駅で降りる。豊中市立伝統芸能館で桂 九雀さんの落語会を聴くためである。

黒子を含む7人の役者たちで噺劇(しんげき)「淀五郎」が演じられ、中入りをはさんで九雀さんが落語「住吉駕籠」(すみよしかご)をされた。

噺劇の詳しい説明は九雀さんの公式サイトに書かれている。煎じ詰めれば落語と演劇のコラボレーション。生の三味線と鳴物入りで、衣装はあるけれど舞台装置はなし。小道具は扇子と手ぬぐいだけ。後は観客の想像力に委ねるという点では非常に落語的である。台本は九雀さんが執筆されているそうだ。

落語「淀五郎」は歌舞伎を素材にした江戸の人情噺。そういう意味で「中村仲蔵」の兄弟分のような印象を受けた。劇の前に九雀さんから「仮名手本忠臣蔵」の解説もあり、とても分かり易かった。

以前「落語はJAZZだ!〜桂枝雀と上方落語論」という記事に書いた通り、僕は人情噺が苦手である。しかし今回演劇的手法で観てみると、これが意外と面白かったので驚いた。九雀さんの創意工夫の勝利であろう。また噺劇が上演される機会があれば是非観たいと想った。

自由料金制。つまり「お代は見てのお帰りに」という方式も、なかなか新鮮だった。大入り満員のため九雀さんが「済みませんが座布団をもっと前に詰めてください!」と会場整理をする一幕もあった。

九雀さんは故・桂 枝雀さんのお弟子さんだが、枝雀一門は上方落語協会を脱退したので繁昌亭昼席に出演することが出来ない。実力があるのに大変惜しい気がする。一門の落語がもっと気軽に繁昌亭で聴けるようになったらいいのになと願っているのは、決して僕だけではないだろう。

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2008年8月10日 (日)

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0

評価:B

押井守監督の代表作「攻殻機動隊」が3-DCGなど最新のデジタル技術でリニューアル(1.0→2.0にバージョン・アップ)され、7月12日より全国5都市で限定公開された。僕は遅ればせながら先日、なんばパークスシネマ(大阪)で観ることが出来た。既にレイトショーのみの1回上映となっていたが、平日にもかかわらず館内は8割の入りで大盛況。男性率が高い(7-8割)のも、本作のファン層の特徴が出ていて興味深い。

"GHOST IN THE SHELL"は日本の映像作品としては初めて米ビルボード誌のビデオセールス部門で1位を獲得し、既にスピルバーグ率いるドリームワークスで実写映画化も決まっている。ウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」にパクられた、もとい、多大な影響を与えたことでも有名。

僕が好きな押井作品ベスト3は以下の通り。

  1. うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
  2. 機動警察パトレイバー2 the Movie
  3. イノセンス (英題 GHOST IN THE SHELL 2: INNOCENCE)

書きながら気がついた。いずれもシリーズ2作目というのが面白い。「ビューティフル・ドリーマー」('84)はほぼ完璧な映画だが、唯一の欠点は音楽担当が川井憲次でないことくらいだろうか。「機動警察パトレイバー2」('93)の魅力は首都東京を舞台に、もしも最新テクノロジーを駆使したクーデターが起こったら?というリアルなシュミレーションをしたことにある。ある意味アニメーションの枠を超えた傑作だ。時刻表をめくるように緻密に構成された伊藤和典のシナリオのセンスが光る。押井伊藤が「攻殻機動隊」('95)を最後に決別してしまったことが大変惜しまれる。

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「攻殻機動隊2.0」の最大の売りは音響の革新だろう。ジョージ・ルーカス傘下のスカイウォーカーサウンドの手でアナログ4chステレオから最新の6.1chサラウンドにリミックスされ、川井憲次の音楽も新録音された。その効果は目覚ましい。

映像的には冒頭の主人公・草薙素子が高層ビル屋上から飛び降りる場面、そして海中から浮上する場面で彼女が3-DCGにリニューアルされていて驚いた。しかし困ってしまうのは、それに続く場面で従来の2-Dセル画アニメーションに戻ってしまうこと。余りにも中途半端であり、この違和感はどうしようもなかった。確かに各所で絵的にはブラッシュ・アップされたが、元々完成度の高い作品だけに新たに手を加える必然性は感じられなかった。

そして今回2.0バージョン最大の問題点はキー・パーソンである"人形使い"の声優が男性から女性に変わったことだ。オリジナル版では人間(素子)とインターネット上の広大なネットワーク(人形使い)との異種間融合=SEXから新たな生命体が生まれるというメタファーがあったのに、これが同性では成立しなくなってしまった。

……という訳で、僕にはこのバージョン・アップは単なる蛇足に過ぎないという気がした。

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2008年8月 8日 (金)

歩いても 歩いても

評価:B+

映画公式サイトはこちら

僕は2004年度に「キネマ旬報」日本映画ベスト・テン第1位に輝いた「誰も知らない」は全然好きになれない(観た当時の感想はこちら)。しかし、その是枝裕和監督が原作・脚本・編集も兼任した本作はとても良かった。

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「歩いても 歩いても」というタイトルは、「しゃべれども しゃべれども」みたいで如何なものかと想ったが、本編に挿入されている「ブルー・ライト・ヨコハマ」の歌詞から引用したと判明し、納得した。

大した事件が起こるわけではない。市井の人々の一日を追った、淡々とした物語である。小津安二郎の時代から連綿と続く松竹ホームドラマを思い起こさせる雰囲気が漂う。深い味わいがあって、最後には「嗚呼、家族ってこういうものだよなぁ」としみじみ想わせる佳作である。映画に繰り返し登場する坂道はある意味、人生を象徴しているのだろう。

夏川結衣は1968年生まれで現在40歳、相変わらず若々しく美しい。1967年生まれのニコール・キッドマンとともに彼女は現代の驚異と言えるだろう。

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2008年8月 7日 (木)

朝ドラ「ちりとてちん」のすゝめ (外伝「まいご3兄弟」含む)

NHK連続テレビ小説を一度も通して観たことがない。《落語家を目指す女の子の物語》と宣伝されていた「ちりとてちん」にも全く興味がなくて、放送中は完全無視だった。

ところが今年の2月頃からだろうか?落語会に往くと、必ず「ちりとてちん」の話題が出る。何時しかインターネット上でもすこぶる面白いとの評判が飛び交うようになっていた。

それならば一度、味見してみるかと重い腰を上げたのがこの5月。総集編を観て目を瞠った。「こ、こ、……これは、凄い!」

そこで丁度発売が開始された完全版DVD-BOX全3巻を購入。毎日毎日、夢中になって観た。腰を抜かした。総集編はこのドラマの面白さを半分も伝えてはいなかった。

ちりとてちん

僕が今まで観たテレビドラマ(シリーズ)で真の傑作だと想ったのは以下の作品である。

  • 向田邦子「あ・うん」「阿修羅のごとく」
  • 倉本 聰「北の国から」「昨日、悲別で」
  • 市川森一「黄金の日々」
  • 山田太一「ふぞろいの林檎たち」(代表作「岸辺のアルバム」は未見)
  • 三谷幸喜「王様のレストラン」
  • 宮藤官九郎「タイガー&ドラゴン」

そして「ちりとてちん」は間違いなく、これらと肩を並べる作品であると太鼓判を押す。

まず藤本有紀の脚本の素晴らしさ、これに尽きるだろう。ドジな主人公・和田代美=B子と、優等生で同姓同名の友人・和田海=A子の葛藤を軸に物語りは展開していく。このふたりはカードの表と裏。後に彼女たちの名前は上方落語に登場するコンビ、六(きろく)と八(せいはち)に由来することが明らかとなる。そして、何故ふたりが同名なのかという秘密も最終週で解き明かされる仕組みになっている。

この伏線の張り方が尋常ではない。蜘蛛の巣のように張りめぐらされたその数は正にギネス級である。何気なく観ていたエピソードが後に伏線だったことに気付き、一体何度驚かされたことだろう!

作者の上方落語に対する畏敬の念が物語の行間から滲み出してくるのも感動的である。「愛宕山」「宿替え」「辻占茶屋」「崇徳院」「算段の平兵衛」「天災」「鴻池の犬」「たちぎれ線香」「地獄八景亡者戯」「鉄砲勇助」「はてなの茶碗」など、劇中に登場する落語(出演者によって再現シーンが演じられ、視聴者に分かりやすく解説される)だけではなく、居酒屋「寝床」や中華料理店「延陽伯」という名称も落語の演題だし、喧嘩の仲裁が趣味の魚屋食堂の主人が「胴乱の幸助」そっくりだったり、喜代美の叔父が買う宝くじの当選番号が「高津の富」と同一だったりするなど非常に芸が細かい。

登場人物のモデルを推定してみるのも一興であろう。ヒロインにまつわるエピソードの幾つかは最終話のエンディング「ただいま修行中!」に写真で登場した露の団姫(まるこ)さんを取材したと想われる節があり、また師匠・徒然亭草若から「お前は創作落語をやれ」と言われる下りは、桂あやめさんが文枝師匠から助言された内容そのものである。

草若の息子、小草若は桂米朝さんのご子息・小米朝さんと故・笑福亭松鶴の長男・枝鶴(廃業し、現在消息不明)を合わせたようなキャラクターで、徒然亭草々桂ざこばさんを彷彿とさせる。草若の命を奪う病因は、草原役で出演した桂吉弥さんの師匠・吉朝と同じ胃癌と考えられる。

さらに、「天狗芸能」のモデルは吉本興業+松竹芸能であり、上方落語初の常打ち小屋「ひぐらし亭」は天満天神繁昌亭+帝塚山・無学といった具合。

このように「ちりとてちん」を観れば、上方落語が歩んできた過去と現在が鮮やかに俯瞰できる構成となっているのである。

さらに小編成のオーケストラを起用し、丁寧に作曲された音楽(佐橋俊彦)や、建物の歴史を感じさせる重厚な美術デザイン(山内浩幹、深尾高行、小澤直行)も素晴らしい。テレビ日本美術家協会が主催する第35回伊藤熹朔賞に「ちりとてちん」のスタジオセットが選ばれたのも当然であろう。

また、上方落語への愛を感じさせる美しいオープニングCGも特筆に価する。途中、11個の定紋がパッと花が咲いたように登場する場面があるが、これらは全て実際に上方の噺家が用いている紋である。

演技陣も充実している。特に草若を演じる渡瀬恒彦は改めて「こんなに味のある、いい役者だったのか!」と見惚れた。落語も上手だし、師匠としての風格と気品があった。

和久井映見は映画「息子」(1991)の頃から好きな女優だったが、今回はヒロインの母親役を見事に演じ切った。70年生まれの彼女に対して貫地谷 しほりは85年生まれなので、実際にふたりは15歳しか違わない。それでも、ちゃんと母子に見えるのだから大したものである。役者って本当に凄いなとつくづく想った。

ただ、ドラマの最後に主人公が出した結論については賛否両論があり、ネット上でも激論が交わされた。朝ドラの主な視聴者である家庭の主婦に媚びたようなこの結末には、僕も首を傾げざるを得ない。皆を納得させるためにも藤本さん、是非この物語の続きを書いて下さい。「ちりとてちん」を愛する人々の多くが、それを待ち望んでいるのですから。

さてスピンオフドラマ、ちりとてちん外伝「まいご3兄弟」がいよいよ8月10日(日)に全国放送される。僕は関西での先行放送を一足お先に観たのだが、さすが文句なしの完成度の高さで藤本有紀の天才ぶりをいかんなく発揮している。

誰が真実を語っているのか最後まで明らかにしないという構成は、黒澤明監督の「羅生門」を彷彿とさせる。本当はどうだったのかを考えるヒントとして、今回の噺が上方落語「宿屋仇」を下敷きにしているということだけ、ここでは書いておこう。

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2008年8月 6日 (水)

文太の会 in 高津の富亭 (8/3)

高津宮(高津神社)での落語会。

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  • 桂 文太/盗人の仲裁
  • 桂 文太/猫の災難
  • 桂 三金/奥田君の幽霊
  • 桂 文太/抜け蟹

「猫の災難」は元々は上方落語で六代目笑福亭松鶴が得意としていたネタだそう。三代目柳家小さんが東京に持ち込み、現在ではむしろ上方で演じられる機会は少ない。

「奥野君の幽霊」は三金さんの創作落語。"奥野"とは三金さんの本名である。

「抜け蟹」は上方落語「抜け雀」を元にした文太さんの贋作。東京で演じられる「竹の水仙」とよく似た噺でもある。

今回も文太さんの巧みな話芸を三席たっぷり堪能させて貰った。

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2008年8月 5日 (火)

お笑い怪談噺、そして落語でらくだ

最近往った落語会から。

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まずは7月31日の繁昌亭。怪談噺で夏祭りだ。

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  • 笑福亭 たま/七度狐
  • 林家   染雀/化物使い
  • 桂     米左/皿屋敷
  • 旭堂   南鱗/江島屋騒動(講談)
  • 笑福亭福笑/じたじた

講談は初体験だったが、想像したよりも聴き易かった。笑いやサゲ(落ち)のない落語という印象。

「じたじた」は「饅頭恐い」の半ばに登場する怪談噺を抽出したものだった。福笑さんの高座は、NHKで放送されたのを観たときは全く面白いと想わなかったが、実際に寄席で聴いたらなかなか良かった。やっぱり落語は生ものだな。本物の幽霊も登場。愉しかった。

そして翌8月1日金曜レイトショー(午後9時40分開演)

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  • 林家染二/らくだ

遅い時間にもかかわらず、繁昌亭は9割の入り。さすが第2回繁昌亭大賞を受賞された染二さん。人気がある。

「らくだ」は、「百年目」「たち切れ線香」「地獄八景亡者戯」( じごくばっけいもうじゃのたわむれ)などと並ぶ、上方落語屈指の大ネタ。故・六代目笑福亭松鶴の十八番であり、昨年は弟子の鶴瓶さんが取り組んだ(→公式サイト)。

「らくだ」とは人の名前であり、屍体を弄んで笑おうという発想が関西らしくて凄い。このブラック・ユーモアはある意味、朝ドラ「ちりとてちん」で有名になった「算段の平兵衛」に通じるものがあり、若手の噺家では到底歯が立たない極めて難しいネタである。でもそこは染二さん、口跡滑らかに登場人物たちを巧みに演じ分け、軽やかに高座をこなされた。「ヨッ!日本一」

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2008年8月 4日 (月)

ダークナイト

評価:A+

映画公式サイトはこちら

圧倒された。

本作の魅力は正義の境界が曖昧で、バットマンが両者を揺れ動くその振幅の狭間に、ドラマが紡ぎ出さていく事であろう。そういう意味で手塚治虫の「アドルフに告ぐ」との共通点を感じる。「アドルフに告ぐ」は第2次世界大戦中の日本とドイツを舞台に、ヒトラーによるユダヤ人迫害をモチーフにした漫画だが、そのエピローグでは中東戦争中のイスラエルに話が飛び、パレスチナ人を虐殺するユダヤ人の姿で締めくくられる。そう。「ダークナイト」は「アドルフに告ぐ」に匹敵する傑作である。

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映画撮影終了後、摂取過剰による急性薬物中毒で亡くなったヒース・レジャー(享年28歳)演じるジョーカーが凄い。咽ぶような悪徳の魅惑に満ち溢れ、強烈な印象を観る者の心に刻み込む。アカデミー助演男優賞受賞も決して夢ではないだろう。過去の例を見てもジェームズ・ディーンは事故死後に「ジャイアンツ」でオスカー・ノミネートされたし、ピーター・フィンチは彼の死後「ネットワーク」(1976)で主演男優賞を受賞している。

クリストファー・ノーラン監督は、その出世作「メメント」(2000)から観ているが、ここまで偉大なフィルム・メーカーに化けようとは想像だにしなかった。ただただ脱帽である。兎に角、脚色(クリストファー・ノーラン、ジョナサン・ノーラン)が素晴らしい。特にジョーカーのキャラクター設定が秀逸。ジョーカーが望んでいるのは決して金やバットマンの死ではなく、世の中のカオス化(混沌)だけなのだ。僕は貴志祐介のホラー小説「黒い家」に登場する次の言葉をふと、想い出した。

「この人間には、心がない!」

ミニチュア撮影を主体として、CGの存在を感じさせないVFXの完成度の高さも特筆に価する。

タイトルの"ナイト"は「夜」(night)ではなく「騎士」(knight)のこと。

ニューヨーク・タイムズをはじめとするアメリカ各紙、評論家の評価はこちら。軒並み絶賛と言っていい。また、インターネット・ムービー・データベース(IMDb)のユーザー評価では8月4日現在、「ダークナイト」は平均9.2点(10点満点)で、これは映画史上第1位となっている。参考までに現時点でのトップ20のタイトルと点数を書き出しておく。

  1. ダークナイト(2008) 9.2
  2. ショーシャンクの空に(1994) 9.1
  3. ゴッドファーザー(1972) 9.1
  4. ゴッドファーザー Part 2(1974) 9.0
  5. 続・夕陽のガンマン(1966) 8.9
  6. パルプ・フィクション(1994) 8.9
  7. シンドラーのリスト(1993) 8.8
  8. カッコーの巣の上で(1975) 8.8
  9. スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980) 8.8
  10. カサブランカ(1942) 8.8
  11. 12人の怒れる男(1957) 8.8
  12. 七人の侍(1954) 8.8
  13. スター・ウォーズ(1977) 8.8
  14. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003) 8.8
  15. グッドフェローズ(1990) 8.7
  16. 裏窓(1954) 8.7
  17. レイダーズ/失われた聖櫃(1981) 8.7
  18. シティ・オブ・ゴッド(2002) 8.7
  19. ウエスタン(1968) 8.7
  20. ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間(2001) 8.7

余談だが、ピクサーの最新作「WALL・E/ウォーリー」が25位(8.6点)、「千と千尋の神隠し」が58位(8.4点)にランク・インしているのにも注目したい。

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2008年8月 3日 (日)

たそがれコンサート2008/市音とESA音楽学院

大阪城(野外)音楽堂で毎週金曜日に行われている「たそがれコンサート」に3たび足を運んだ。

今回はまずESA音楽学院吹奏楽団の演奏から。今回初めて知ったが大阪市内にあるESA音楽学院は日本で唯一の吹奏楽専門学校だそうで、「たそがれコンサート」初登場とのこと。

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指揮およびフルート独奏をされたのは福留 敬(ふくとめたかし)さん。JAZZやラテンフルートのプロとして活躍されているようだ。プログラム4曲中3曲までが福留さんご自身のアレンジだった。

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曲目

  • ツァラトゥストラはかく語りき(映画「2001年宇宙の旅」)
  • マイルストーンズ
  • シンクロ・ボンバイエ(TV「ウォーター・ボーイズ」より)
  • スペイン

このバンドはプロの卵ということで遠慮会釈なく書かせてもらう。さすがソロパートでの個々人の技術は大したものだった。ただこれがアンサンブルになるとリズムが重く、演奏に切れがない。どうも全体的に野暮ったい印象を受けた。

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続いて大阪市音楽団(市音)の登場。《スポーツは青春ダァー!》と題され、間もなく北京で開催されるオリンピックに関連した曲がメイン・ディッシュとして供された。

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スポーツとは関係ないが「崖の上のポニョ」(久石 譲/作曲、佐藤博昭/編曲)も演奏されたのが嬉しかった。ただ、アレンジはいまいち。

宮崎アニメの中では「ハウルの動く城」~人生のメリーゴーランド(小島里美/編曲)とラピュタ~キャッスル・イン・ザ・スカイ (森田一浩/編曲)が現時点で僕の考える吹奏楽編曲版のベストである。

アンコールは東京オリンピック(1964)の入場行進で演奏されたオリンピックマーチ(古関裕而/作曲)。四角四面な曲で古色蒼然としており、例えば現在の全日本吹奏楽コンクール課題曲と比べればその差は一目瞭然。この約半世紀の間で日本の吹奏楽とその作曲家たちは飛躍的にレベルが向上したのだなぁと感慨深かった。

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2008年8月 2日 (土)

森 麻季/ソプラノ リサイタル

ザ・シンフォニーホールにて。前回、森 麻季さんのリサイタルを聴いた感想はこちら

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本当は6月、兵庫県立芸術文化センターの「メリー・ウィドウ」も森さんが出演する日程に合わせてチケットを取ったのだけれど、その後彼女の懐妊が明らかとなり残念なことに舞台は降板という結果になってしまった。しかし今回はかなり大きくなったお腹でステージに立たれ、たっぷりその美声を聴かせてくれた。コンサート中になんとマタニティー・ドレスを4着も着替えるというサービス精神にはただただ頭が下がる。

オペラ歌手の歌詞は聴き取り辛い。これはイタリア人がイタリア・オペラを聴く時も同様だそうである。ビブラートがその主な原因と考えられる。振幅の大きいビブラートは耳障りで神経を逆撫でする。しかし森さんの歌い方にはそれがない。彼女のビブラートは繊細で振幅が小さい。そして特にピアニッシモにおける声のコントロールが絶妙で澄み渡る。

プログラムの選曲も良かった。「浜辺の歌」「初恋」「からたちの花」といった日本の歌から始まり、R.シュトラウスを経て浪漫派最後の作曲家、コルンゴルトの甘美な3つの歌曲へ。コルンゴルトはこのブログでも繰り返し取り上げている僕の大好きな作曲家。ユダヤ人だった彼はナチスから逃れハリウッドへ渡り、映画音楽の礎を築いた。コンサートでは滅多に演奏されない彼の音楽を生で聴けるというのはこの上もない喜びである。是非、在阪オーケストラもヴァイオリン協奏曲交響曲などの彼の傑作を取り上げて欲しい。

前半最後はマーラー/交響曲第4番から第4楽章(ピアノ伴奏版)。天上の生活を歌った彼女の声は極上の美しさで、全盛期のキャスリーン・バトル(マゼール/ウィーン・フィルのCD)を想い起こさせた。

プログラム後半、最初の曲はカルローネ/私の人生は海。このイタリアの作曲家は1970年生まれ。森さんからの依頼で書かれた曲と解説に書かれていた。もしや、と想い調べてみると案の定、彼女の旦那さんだった。

さらに20世紀の曲が続く。アルバン・ベルクに歌曲があるというのも驚きだったし、ストラヴィンスキー/オペラ「道楽もののなりゆき」がリサイタルで歌われるのも珍しい。とても聴き応えのある素晴らしい演奏会だった。

アンコールは何と4曲!!

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情感豊な「私のお父さん」はしみじみ心に沁みて、軽やかな「ムゼッタのワルツ」にときめく。森さんのプッチーニは今や、世界最強であろう。

「千の風になって」も驚いたけれど、コロラトゥーラ・ソプラノの技巧を存分に発揮し華やかに駆け巡るドニゼッティは圧巻だった。

出産後の彼女の活躍にも大いに期待したい。

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2008年8月 1日 (金)

田辺寄席 in 寺西家 その弐

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演目は以下の通り。

  • 露の団姫/鉄砲勇助
  • 桂まめだ/まめだ
  • 桂   文太/六尺棒
  • 桂   千朝/はてなの茶碗

露の団姫(まるこ)さんは現在21歳。静岡県出身で、顔が丸いので団姫と命名されたそうな。確かに雰囲気が"ちびまる子ちゃん"に似て可愛らしい。→団姫さんのブログ

NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」は毎回、放送の一番最後に「ただいま修行中!」というコーナーがあったのだが、最終回でこれに登場したのが団姫さん。テレビ「おはよう朝日です」ではレポーターもされているそうで、このあたりも「ちりとてちん」のヒロイン・喜代美と境遇が似ている。

「鉄砲勇助」は朝ドラ「ちりとてちん」で取り上げられたネタ。はきはきとした高座で澱みなく喋り、若いのになかなか上手いなぁと感心した。女性が古典落語を掛ける時にしばしば問題となる違和感も全くなかった。

「はてなの茶碗」は以前、南光さんの高座を生で聴いている。この噺を現在の形に整えた米朝さんの高座はビデオ、(南光さんの師)枝雀さんの「はてなの茶碗」はDVDで観た。今回の千朝さんはじっくり聴かせるタイプの噺家さんだったが、ポンポン矢継ぎ早に言葉が出てくる枝雀落語に馴れてしまうと千朝さんのそれは余りにもテンポが遅く、途中でダレてしまった。僕はこの人の語り口は余り好きになれないなぁ。

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