GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0
評価:B
押井守監督の代表作「攻殻機動隊」が3-DCGなど最新のデジタル技術でリニューアル(1.0→2.0にバージョン・アップ)され、7月12日より全国5都市で限定公開された。僕は遅ればせながら先日、なんばパークスシネマ(大阪)で観ることが出来た。既にレイトショーのみの1回上映となっていたが、平日にもかかわらず館内は8割の入りで大盛況。男性率が高い(7-8割)のも、本作のファン層の特徴が出ていて興味深い。
"GHOST IN THE SHELL"は日本の映像作品としては初めて米ビルボード誌のビデオセールス部門で1位を獲得し、既にスピルバーグ率いるドリームワークスで実写映画化も決まっている。ウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」にパクられた、もとい、多大な影響を与えたことでも有名。
僕が好きな押井作品ベスト3は以下の通り。
- うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
- 機動警察パトレイバー2 the Movie
- イノセンス (英題 GHOST IN THE SHELL 2: INNOCENCE)
書きながら気がついた。いずれもシリーズ2作目というのが面白い。「ビューティフル・ドリーマー」('84)はほぼ完璧な映画だが、唯一の欠点は音楽担当が川井憲次でないことくらいだろうか。「機動警察パトレイバー2」('93)の魅力は首都東京を舞台に、もしも最新テクノロジーを駆使したクーデターが起こったら?というリアルなシュミレーションをしたことにある。ある意味アニメーションの枠を超えた傑作だ。時刻表をめくるように緻密に構成された伊藤和典のシナリオのセンスが光る。押井と伊藤が「攻殻機動隊」('95)を最後に決別してしまったことが大変惜しまれる。
「攻殻機動隊2.0」の最大の売りは音響の革新だろう。ジョージ・ルーカス傘下のスカイウォーカーサウンドの手でアナログ4chステレオから最新の6.1chサラウンドにリミックスされ、川井憲次の音楽も新録音された。その効果は目覚ましい。
映像的には冒頭の主人公・草薙素子が高層ビル屋上から飛び降りる場面、そして海中から浮上する場面で彼女が3-DCGにリニューアルされていて驚いた。しかし困ってしまうのは、それに続く場面で従来の2-Dセル画アニメーションに戻ってしまうこと。余りにも中途半端であり、この違和感はどうしようもなかった。確かに各所で絵的にはブラッシュ・アップされたが、元々完成度の高い作品だけに新たに手を加える必然性は感じられなかった。
そして今回2.0バージョン最大の問題点はキー・パーソンである"人形使い"の声優が男性から女性に変わったことだ。オリジナル版では人間(素子)とインターネット上の広大なネットワーク(人形使い)との異種間融合=SEXから新たな生命体が生まれるというメタファーがあったのに、これが同性では成立しなくなってしまった。
……という訳で、僕にはこのバージョン・アップは単なる蛇足に過ぎないという気がした。
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