村上春樹/ノルウェイの森 映画化
村上春樹さんの小説「ノルウェイの森」の映画化が遂に決まった。詳細はこちら。これまで映画化のオファーは何度もあったが、なかなか実現には至らなかった。しかし12歳の時にベトナム戦争を逃れ、故郷ベトナムから両親と共にフランスに移住したトラン・アン・ユン監督の熱意に村上さんが遂にほだされたということなのだろう。ユン監督のデビュー作「青いパパイヤの香り」(1993)と「夏至」(2000)は観たことがあるが、決して感情的にならない静謐な作風で、この監督なら静かな哀しみを湛えた名作「ノルウェイの森」に相応しいと僕は信じて疑わない。
実は今から11年前に、僕は村上さんに直接、「ノルウェイの森」映画化の可能性について訊ねたことがある。村上さんはその当時「村上朝日堂」というHP上で、文学史上初となる作家と読者の電子メール交換を実現されていたのである。このメールのやりとりは僕のHP「はるか、キネマ」のこちらのコーナーに掲載している(掲載にあたり、朝日新聞の担当者から許可は取った)。この時、村上さんは
「ノルウェーの森」を映画にするつもりは、誰が監督をするとしても、いまのところありません。あれは活字だけでこそっと置いておきたいのです。
と書かれているが、村上さんは長い時間をかけて本当にいい人とめぐり逢ったと想う。
ただ、映画化に際して一番のネックはビートルズの版権問題だろうなぁ。果たして「ノルウェイの森」オリジナル音源の使用許可が下りるかどうか……。
1985年にビートルズの版権を買ったのがマイケル・ジャクソン。多額の負債を抱えるマイケルが万が一破産した時、第三者の手で競売にかけられるのを回避するため2006年にソニーがビートルズの版権を担保に、彼に新しい融資先を調整したと発表されたのだが、この問題はますます混迷を深めていると言わざるを得ない現状である。
1981年に篠田正浩監督の映画「悪霊島」でビートルズの「レット・イット・ビー」(オリジナル音源)が使用された。しかし公開後、版権問題がこじれてこの作品は長らくテレビ放送もビデオ化も出来ない羽目に陥ったのである。結局、別のアーチストのカヴァー演奏に差し替えることでこの問題は解決し、現在発売されているDVDは公開版とは異なるものとなっている。
さて、映画「ノルウェイの森」はどのような作品になるのであろう?キャスティングも含めてこれからの展開に目が離せない。
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