いずみシンフォニエッタ大阪 定期/室内オーケストラの可能性
飯森範親/いずみシンフォニエッタ大阪(ISO)の定期演奏会を聴きにいずみホールに往った。今回はNHKによるテレビ収録もあり、10月3日および10日に「クラシック倶楽部」(BS-hi、BS-2)の枠で放送される予定だそうである。
ISOのメンバー構成などについては以前の記事に書いたので省略する。
過去の演奏会の感想:
・ いずみシンフォニエッタ大阪の描く北欧
・ これぞ新世紀の第九!飯森範親/いずみシンフォニエッタ大阪
開演は19時だが、その30分前に恒例のロビーコンサートがあった。
1曲目のドニゼッティはハープの独奏。2曲目以降はヴァイオリンも加わった。間近で聴くハープは想像以上に大きな音で、雄弁に鳴り響き驚いた。遠目に観るとその弾いている姿は優雅だが、ハープって重そうだし、意外と体力いるんじゃないかな?
本編のプログラムは以下の通り。
- アダムス/室内交響曲(1992)
- ヒンデミット/木管、ハープとオーケストラのための協奏曲(1949)
- 伊福部昭/土俗的三連画(1937)
- 西村 朗/室内交響曲第2番<コンチェルタンテ>(2004)
全て20世紀以降の現代音楽だが、決して小難しいものではなく親しみやすかった。飯森さんの指揮は明晰で曖昧なことろが些かもなく、耳に心地よい。この演奏会の翌日には飯森/ISOのコンビは東京に移動し、紀尾井ホールで同一プログラムを演奏する予定である。
アダムスはミニマル・ミュージックの旗手。ミニマル・ミュージックとは最小限の単位の音型を執拗に繰り返すスタイルの作品。聴いているうちに耳が麻痺してきて、単調な反復が心地よいリズムとなる。映画「ピアノ・レッスン」の音楽を書いたマイケル・ナイマンや宮崎アニメでお馴染みの久石 譲さんもミニマル系出身の作曲家だ。例えば「風の谷のナウシカ」でナウシカがペジテの飛行船内からネーヴェで飛び立つ場面や、「紅の豚」の空中戦シーンなどにミニマル・ミュージックの手法が用いられている。そしてその技法が頂点に達した傑作が北野武監督「ソナチネ」のメイン・テーマ。
ヒンデミットはフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ハープの独奏と、小編成オーケストラとの掛け合いによる小気味いい合奏協奏曲。作曲者の銀婚式を記念して、3楽章はメンデルスゾーン/結婚行進曲のパロディとなっており、実に愉しい。
伊福部の曲は作曲者23歳の作品。アイヌの歌と踊りに触発された曲で、「ゴジラ」「空の大怪獣ラドン」「地球防衛軍」など後年彼が手掛ける特撮映画の音楽の萌芽が、もう既にこの頃から認められるのが興味深い。パンチの効いたリズムの塊がズシンと腹に響く。アイヌの民俗音楽との出会いなくして、かの有名な「ゴジラ」のテーマは存在し得なかったのだということがよく分かる。
大阪に生まれた作曲家、西村 朗さんはISOの音楽監督でプログラムの企画・監修にも携わっておられる。だから西村さんは毎回ISOの定期演奏会に足を運ばれ、飯森さんとのトークもある。今回演奏されたのは4年前飯森/ISOが初演した曲。これはCDにもなり、「レコード芸術」誌で特選になっている(CDの詳細はこちら)。そういえば、このレビューで絶賛されていたのを読んで、僕は初めていずみシンフォニエッタ大阪の存在を知ったのであった。
しかし地元出身の作曲家なのに、在阪4オーケストラが西村さんの曲を取り上げることは殆どない。実に情けない話だ。ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、マーラーなど欧米のポピュラー音楽ばかり演奏して、それで果たして「大阪の文化」と胸を張って言えるのだろうか?在阪の音楽家の方々にはそのことを是非一度、真剣に考えて頂きたい。
7月9日、大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団は朝比奈隆誕生100年記念演奏会と称して、モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番とブルックナー/交響曲第9番を演奏する。この日は朝比奈の誕生日であると同時に《浪速のバルトーク》こと、「大阪俗謡による幻想曲」を作曲した大栗 裕の誕生日でもある。今年は大栗生誕90周年という記念の年にあたる。
関連記事:
・ 大阪俗謡をめぐる冒険
・ 大栗 裕の世界
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