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やるじゃねえか、大フィル。

アレクサンダー・リープライヒ/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴きに往った。

20080724181939

曲目は以下の通り。

  • ハイドン/交響曲第39番
  • ハイドン/トランペット協奏曲 変ホ長調
  • ジョリヴェ/トランペット、弦楽とピアノのための小協奏曲
  • マーラー/交響曲第4番(独唱:天羽明惠)

世界遺産に登録された街・レーゲンスブルク(ドイツ)生まれのリープライヒは現在40歳。2006年日本デビューということで知名度は低いが、なかなか実力のある指揮者であった。

プログラム後半のマーラーは叙情的旋律を十分に歌うわけでもなく、かといって(寺岡清高/大阪シンフォニカー交響楽団が演ったように)唐突に現れる奇怪なフレーズを際立たせ、世紀末的雰囲気を醸しだすわけでもない、純音楽的で中庸な解釈。このアプローチがマーラーに相応しいとは僕には想えず、正直物足りなかった。

しかしハイドンジョリベは文句なしに素晴らしかった。ハイドンは速めのテンポで、弾むような勢いと切れがあった。驚いたのは大フィルがピリオド奏法に果敢に取り組んだことである。ここ2年くらい定期演奏会にはほぼ欠かさず通っているが、大フィルが今回のようにビブラートを極力排した演奏をしたのを聴いたことがない。清冽で、目の覚めるような演奏だった。やれば出来るじゃないか!

2年前、金 聖響/大阪センチュリー交響楽団によるピリオド・アプローチのモーツァルトを聴いた時は、「下手なオケがノン・ビブラートに挑戦すると、まるで素人が演奏しているみたいでますます下手に聴こえるなぁ」と呆れたものだが、さすが大フィルは違った。やっぱりハイドンはこうでなくちゃ。ちなみに対向配置ではなく、トランペットもティンパニもモダン楽器を使用していた。

関連記事:
・ 21世紀に蘇るハイドン(あるいは、「ピリオド奏法とは何ぞや?」)
・ 広上淳一/大フィル いずみホール特別演奏会

トランペット独奏はベネズエラからやって来たフランシスコ・フローレンス。まだ20代の若手でシモン・ボリバル・ユース・オーケストラのメンバー。

ベネズエラは恐るべき国である。近年、音楽教育の水準が飛躍的に向上し、あっという間に日本を追い抜いてしまった。この国出身のエディクソン・ルイスは17歳でベルリン・フィルのコントラバス奏者として採用された。楽団史上、最年少記録である。

現在ベネズエラ・ボリバル共和国(人口2,600万人)には220もの青少年オーケストラがあり、その選抜メンバーで組織されたのがシモン・ボリバル・ユース・オーケストラグスターボ・ドゥダメル(現在27歳)が指揮し、ドイツ・グラモフォンからCDデビューしたことで世間の話題をさらった。しかも曲目があのベートーヴェン/交響曲第5&7番である!在阪オーケストラがグラモフォンからCDを出すことなんて到底あり得ないわけで、ベネズエラの実力が如何に凄いかお分かり頂けるだろう。世界中が彼らの画期的教育システムを学ぼうと、躍起になっている。

フローレンスのトランペットは超絶技巧で圧巻だった(特にジョリベ!)。悔しいけれど、日本の金管奏者でこれだけ吹ける人は皆無である。また彼がハイドンを演奏するときは20世紀に作曲されたジョリベとは全く異なるアプローチで、ビブラートを抑制して吹いた(音を伸ばした時に、その真ん中あたりだけかける)のも見事だった。古典音楽におけるトランペットの雅(みやび)な雰囲気がよく出ていた。

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コメント

こんばんは。大フィルの定期に行かれたんですね。プログラムが意欲的に感じられたので(特にジョリヴェ)行きたかったのですが、外せない用事があって涙を飲みました。なんと、大フィルがピリオド奏法とは!かなりの驚きです。今後の定期が気になりますね。
トランペットのソリスト、よかったんですねー。トランペットといえば私が中学生の時に彗星の如く現れたのがナカリャコフですが、昨年の演奏会を聴いた時には無精ヒゲのおっちゃん?になってました(笑)。肝心の演奏のほうは、フィンガリングの凄さは健在だったものの一つ一つの音に色がついてないというか。ちょっとがっかりしました。ピアニストもよくなかったし。そういえば、同じ時期に出てきたホルン奏者がラデク・バボラークでした。今やベルリン・フィルのソリストですからねー。立派になったものです。

投稿: Odette | 2008年7月26日 (土) 01時18分

おはようございます。記事拝読しました。

マーラー、同感ですね。これまで聴いた4番のライブの中で、1番面白くなかったです。逆に、こんな風にしてしまうこともできるんだ、ということを知って新鮮でしたが(笑)。

フローレンス氏のジョリヴェ、圧巻でしたが、京響の菊本さんも負けてはいないと思いますよ。来年くらいに留学から帰ってこられて、もしかしたらジョリヴェかトマジを京響でやられるかもしれません。機会があれば是非お聴き下さい。

投稿: ぐすたふ | 2008年7月26日 (土) 09時40分

Odetteさん、コメントありがとうございます。

セルゲイ・ナカリャコフはNHK大河ドラマ「義経」のサウンド・トラックでも吹いていましたね。

日本はオーボエの宮本文昭さん、サクソフォンの須川展也さんなど木管楽器では世界的奏者を輩出しましたが、金管の名手というのは余り耳にしません。ベルリン・フィルを含め海外のオーケストラで活躍する日本人も、その殆どが弦楽奏者というのが実状です。どうも日本民族は金管楽器が苦手なんでしょうか?

投稿: 雅哉 | 2008年7月26日 (土) 13時11分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

京都市交響楽団は残念ながらまだ一度も実演を聴いたことがないんです。

今年、大阪センチュリー交響楽団の存続問題がクローズ・アップされ、センチュリーが土・日に定期演奏会をしないことが批判の的となり、集中砲火を浴びましたが、PAC(兵庫)や京響は土・日にちゃんと定期を演るんですね。それでこそ市民(県民)のためのオーケストラです。感心しました。

大友さんのヴォーン=ウィリアムズ(先日シンフォニカーを振ったロンドン交響曲はよかった!)や尾高さんの武満は聴いてみたいので、また検討してみます。

投稿: 雅哉 | 2008年7月26日 (土) 13時26分

こんにちは。

>どうも日本民族は金管楽器が苦手なんでしょうか?

これについては何とも言えませんが、確かに日本人で世界的に活躍している音楽家といえば弦やピアノがほとんどで木管に少し…といった感じですね。声楽も少ないです。スポーツ選手の活躍を見ても、やはり日本人は欧米やアフリカ系の選手に比べると線が細い気もします。「中学の吹奏楽部で楽器を始める」のが日本の管楽器奏者のほとんどでしょうから、その辺とも関係があるのかもしれませんね。小さい頃から英才教育をやれば伸びる…かも?

投稿: Odette | 2008年7月26日 (土) 18時21分

Odetteさんの仰る通り、一流の弦楽奏者は幼少期から音楽教育を受けている人たちばかりですね。

また、絶対音感を身につけるためには5歳くらいまでに専門の訓練を受けることが必須であるということも本で読みました。

やはり優秀な管楽器奏者を輩出するためには中高生からでは遅すぎるということなのでしょうね。そういう意味でもベネズエラの音楽教育システムを日本は学ぶ必要がありそうです。

投稿: 雅哉 | 2008年7月26日 (土) 22時12分

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