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ザ・マジックアワー

評価:B

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これは三谷幸喜版「アメリカの夜」(1973)である。 「アメリカの夜」とはハリウッドの映画用語で、カメラに特殊なフィルターを使い、夜の場面を昼間に撮影する「擬似夜景」(day for night)のこと。フランス・ヌーベルバーグ(新しい波)の巨匠フランソワ・トリュフォーが監督した映画讃歌である。余談だがこの映画に監督役で出演したトリュフォーを観て、スピルバーグが「未知との遭遇」に出演依頼をしたというエピソードは余りにも有名。

「マジックアワー」も映画用語で、詳しくは映画本編の台詞、あるいは公式サイトのイントロダクションを参照のこと。この、日没後数十分しかないマジックアワーのみで一本の映画を撮ってしまったのがテレンス・マリック監督の「天国の日々」('78)。撮影監督のネストール・アルメンドロスはこれでアカデミー撮影賞を受賞。映画史上、最も美しい芸術品である。ちなみにアルメンドロスはトリュフォー組のひとりで、代表作に「恋のエチュード」「アデルの恋の物語」「終電車」などがある。

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「ザ・マジックアワー」の舞台となる港町・守加護(すかご)は、禁酒法時代のシカゴを彷彿とさせる。そう。三谷さんが敬愛するビリー・ワイルダー監督の映画「お熱いのがお好き Some Like It Hot」('59)へのオマージュである。「お熱いのがお好き」の名台詞「完璧な人間なんていない(Nobody's perfect.)」も本編に登場する。三谷さんは期間限定ブログでも「お熱いのがお好き」に言及されている→こちら

また、深津絵里がクラブ「赤い靴」(←'48年のイギリス映画)の舞台上で乗る、三日月形のブランコは「ペーパー・ムーン」('73)。この映画に出演したテイタム・オニールは史上最年少(10歳)でアカデミー助演女優賞を受賞した。

Papermoon

劇中に登場する市川崑 監督が撮っている映画は「黒い101人の女」。これは市川監督の名作「黒い十人の女」('61)のパロディ。また「暗黒街の用心棒」という映画も出てくるが、このタイトルは「座頭市」と「用心棒」をくっつけた勝新太郎&三船敏郎ダブル主演、岡本喜八監督の「座頭市と用心棒」('70)のパロディになっている。

そもそも本作の《ピンチを乗り切るため、売れない役者を助っ人として連れてくる。しかし連れてこられた方はこれは映画の撮影だと勘違いしている》というシチュエーションは、三谷さんが大好きな映画「サボテン・ブラザース ¡Three Amigos!」('86)そっくりそのままである。実は三谷夫人である小林聡美さんも週刊誌の《私の一本の映画》という記事で「サボテン・ブラザース」を取り上げている。さらに言えば、このプロットを三谷さんはテレビドラマ「合言葉は勇気」(役所広司、香取慎吾 主演)で既に使用済みである。

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という訳で、そこそこ面白い映画ではあるが二番煎じの感は否めない。荻野清子の音楽も、「ここはゴッドファーザー風」「ここは007風」という意図が透けて見えるし、散漫な印象でいただけない。舞台「コンフィダント・絆」の音楽は良かったけれど、彼女に映画を一本任せるには荷が重すぎたのではなかろうか?

全体的に余りパッとしない本作だが、佐藤浩市の好演が光ることと、種田陽平の美術セットが丁寧な仕事で素晴らしい出来映えであることを申し添えておく。

結局、三谷監督の映画なら「ラヂオの時間」や「THE 有頂天ホテル」の方が僕は好きである。それから次回作は是非、ミュージカル映画を期待したい。「オケピ!」を映画化してもいいだろうし、オリジナル作品ならなお一層、嬉しいなぁ。

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