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2008年7月 7日 (月)

ブロードウェイの現在、そして宝塚星組「スカーレット・ピンパーネル」

先日、NHK-BSで放送されたトニー賞授賞式を観て、ブロードウェイ・ミュージカルの現状に暗澹たる気持ちになった。

ヒスパニック系移民の生活を描いた「イン・ザ・ハイツ」( In the Heights)は今年最多の13部門ノミネート。結局、ミュージカル作品賞・楽曲賞・編曲賞・振付賞の4部門を制覇した。もともとオフ・ブロードウェイで数年前から上演され話題となり、オンに進出した作品である。ラップやサルサなどラテン系音楽を取り入れた音楽が聴き応えあり、確かに優れた作品ではある。しかし所詮は低予算の作品だけに、余りにも地味。トニー賞に相応しいとは僕には到底想われない。

「パッシング・ストレンジ」(Passing Strange)は7部門ノミネート。これも元々オフ・ブロードウェイ作品だ。

ではメジャーの大作はどうかと言えば、作品賞にノミネートされた「ザナドゥ」は衣装や演出がダサく、酷い代物だった。ノミネートされなかったけれど、授賞式に華を添えるためにパフォーマンスが披露された「リトル・マーメイド」「ヤング・フランケンシュタイン」も同様。これはもう、哀れを通り越して笑えてくるくらいの体たらく。3作品いずれも映画の焼き直しというのも実に情けない。

特に救いようが無かったのがディズニーの「リトル・マーメイド」。背景がCGというのもしょぼいし、人魚である筈のアリエルに尻尾だけでなく最初から足が生えているのにはずっこけた。この足で海底をちょこまか動くのである。これはギャグか!?こんな子供騙しは東京ディズニーリゾートでやっとけ、という話だ。

今年のトニー賞で演出賞や男・女優賞の全てが「ジプシー」「南太平洋」といったリバイバル作品に攫われたのも、象徴的現象と言えるだろう。この状況は、リメイク作品ばかり量産され、アカデミー賞ではインディーズ(独立)系が席巻する今のハリウッド映画と酷似している。ブロードウェイ栄光の時代は完全に終わりを告げたのである。

そんな中、宝塚歌劇 星組「スカーレット・ピンパーネル」(略してスカピン!)を観に宝塚大劇場まで足を運んだ。公式サイトはこちら

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スカーレット・ピンパーネル」は1905年に出版されたバロネス・オルツィの小説。実は「はこべ」というタイトルで宝塚は既にこれを79年にミュージカル化し上演している(台本・演出:柴田侑宏)。ただ今公演中なのはフランク・ワイルドホーンが音楽を担当したブロードウェイ版で、1997年に開幕し98年にはトニー賞でミュージカル作品賞・脚本賞・主演男優賞にノミネートされている。いやー、こういう安心して観れる大作はいいねぇ。これぞブロードウェイ・ミュージカル!

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ワイルドホーンはミュージカル「ジキル&ハイド」で一世を風靡した作曲家。宝塚歌劇のために「NEVER SAY GOODBY」という作品も書き下ろしている。僕はどちらもそれ程好きではないのだが、今回のスカピンの音楽は劇的で派手で、とても良かった。ただ心境独白シーンでバラードが多いので、途中睡魔に襲われることが何度かあったが……。

原作は大ベストセラーとなった冒険小説で、後にシリーズ化もされたそうなのだが、なかなか手に汗握らせる波乱万丈の展開で面白い。ミュージカル「ベルサイユのばら」や「マリー・アントワネット M.A.」で描かれたフランス革命直後という時代背景も良い。ただしミュージカルの台本(ナン・ナイトン)そのものには欠陥があり、ヒロイン=マルグリットのキャラクター設定が支離滅裂で全く感情移入できない人物像となっている。

潤色・演出の小池修一郎さんは「華麗なるギャツビー」「エリザベート」「モーツァルト!」で3度、菊田一夫演劇賞を受賞されている。日本を代表する演出家である。今回も期待に違わぬ素晴らしい出来栄えで、流れるような舞台転換の上手さには唸らされた。特に1曲歌っている間に、イギリスのクラブ・ハウスから帆船でドーバー海峡を渡り、フランスに到着するまでを一気に見せる場面はこのミュージカルのハイライトと言えるだろう。

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星組のトップスター、安蘭けいさんと遠野あすかさんは共に歌の上手さには昔から定評があり、安心して聴けた。安蘭さんは芸達者な人なので、変装の場面などコミカルな演技では巧みに笑いを取り、大いに愉しませてくれた。ただ、前から感じていたのだがこのコンビ、欠点はないが決定的にに欠けるんだよね。スカピンは良い作品だけれど、もう一度この配役で観たいという食指は動かない。

でも別の組でスカピンが再演されたら、また是非観に往きたいなと想わせる魅力的なミュージカルであった。

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