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神尾真由子ヴァイオリン・リサイタル二連発!

2007年に開催されたチャイコフスキー国際コンクールで優勝したヴァイオリニスト、神尾真由子さんのリサイタルを聴いた。ピアノ伴奏はロハン・デ・シルヴァ。

大阪府豊中市に生まれた神尾さんは22歳。現在もチューリッヒ音楽院で研鑽を積んでいる。彼女が使用しているストラディヴァリウスは以前、ヨーゼフ・ヨアヒム(ブラームスがヴァイオリン協奏曲を献呈した人)が所有していたもので、2001年(彼女がまだ15歳の時!)にサントリー財団より貸与された。

ちなみに、90年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝した諏訪内晶子さんが使用しているストラディヴァリウス「ドルフィン」はかつて巨匠ヤッシャ・ハイフェッツが使用していたもので日本音楽財団から貸与されており、パガニーニ国際コンクールで優勝した庄司紗矢香さんは日本音楽財団より貸与されたストラディヴァリウス「ヨアヒム」を使用している。

つまり、自分でストラディヴァリウスを購入せざるを得ないヴァイオリニストなんて、たいした才能はないということだ。ましてや持っていること自体を宣伝材料にするなんて……(誰のこと言ってるか分かります?)。さらに言えば五嶋みどりさん(大阪府出身)のヴァイオリンはグァルネリで、これは社団法人・林原共済会から終身貸与されているそうだ。閑話休題。

Mayuko

まず6/10に堺市立栂文化会館で聴いたプログラムは以下の通り。

  • シューベルト/ロンド
  • フォーティン/フォールン・ライト(委嘱作品)
  • チャイコフスキー/なつかしい土地の思い出より 瞑想曲
  • チャイコフスキー/ワルツ・スケルツォ
  • ショーソン/詩曲
  • サン=サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ
  • ラヴェル/ツィガーヌ

そして6/23いずみホール(大阪市)のプログラムは下記。

  • モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調
  • プーランク/ヴァイオリン・ソナタ
  • チャイコフスキー/なつかしい土地の思い出より 瞑想曲
  • チャイコフスキー/ワルツ・スケルツォ
  • フランク/ヴァイオリン・ソナタ

こうして並べてみると、いま神尾さんが力を注いでいるのがフランス音楽だというのがお分かり頂けるだろう。プログラムの約半分を占めている。

アンコールは栂文化会館が

  • シマノフスキ/「神話」より第2曲 ナルシス
  • チャイコフスキー/なつかしい土地の思い出より メロディ

で、いずみホールはチャイコフスキー/メロディのみだった。ちなみに、両会場ともチケットは早々に完売した。

神尾さんのヴァイオリンの特徴は、まずその野太い音にある。楽器の性能を極限まで駆使し、鳴らし切るという鮮烈な印象。下手なヴァイオリニストが弓を弦に強く当てて弾くと、本来鳴るべきではない別の弦の音まで混じり、濁る。神尾さんにはそれが一切ない。そこが素晴らしい。

彼女には内側から迸るパッションがある(小説の主人公に喩えるなら「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラとか、「嵐が丘」のヒースクリフみたいなタイプ)。しかし、それを巧みにコントロールする術も体得している。神尾さんの日常を追ったNHKのドキュメンタリーで彼女のお母さんがインタビューに答え、子供の頃はその激しい感情の起伏を抑えることが出来なかったといったお話をされていた。

同じ番組で、ハードロックをヘッドホンでガンガン鳴らしながら、真夜中に自宅近くをジョギングする神尾さんの姿も捉えられていた。普段、クラシック音楽は一切聴かないそうである。彼女曰く、「体を鍛えないと」……末恐ろしい娘だ。僕は感服した。

生で聴いた彼女はさすが世界トップクラスの実力であり、ステレオ録音の残るハイフェッツ以降の歴代ヴァイオリニストと比較しても、彼女ほど熱いハートのこもった音楽を聴かせてくれる奏者は思い浮かばない。

ただ、たこ焼きやお好み焼きが名物の大阪出身だけに、濃厚なソース味のような演奏なのでモーツァルトの音楽は彼女の資質に(現時点では)合っていないなという印象を受けた。たとえ悲劇性を帯びた短調でも、モーツァルトはもっと軽やかさが欲しい。

しかし、チャイコフスキーは言うに及ばずフランスものもお見事でした。特に圧巻だったのはプーランクのソナタ。これはもう何かに憑かれたような、鬼神迫るものがあり、聴衆を圧倒した。人々は固唾を呑んで彼女を見守り、場内は物音一つしなかった。演奏終了後、あちらこちらから「す、凄かったね……」と恐れ戦いた様な囁き声がちらほらと聞こえてきた、そんな演奏会であった。

少々残念だったのは、コンクール予選で彼女が文句なしの名演を披露したワックスマン/カルメン幻想曲が今回聴けなかったこと(フランツ・ワックスマンはユダヤ系ドイツ人で、ナチスから逃れハリウッドに渡った映画音楽作曲家)。まあこれは次の機会のお楽しみとしよう。

神尾さんは11月に大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に登場し、ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲を披露する予定。でも僕としてはベートーヴェンなんかより、プロコフィエフ、バルトークとかコルンゴルトのコンチェルトが聴きたいなぁ。

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コメント

去年芸文で神尾さんのうねるようなヴァイオリンに圧倒されました・・・でも当時は来る日も来る日もチャイコフスキーばかりで正直飽きたでしょうね。

ストラドのことは私も興味が湧いて色々検索しましたから、購入してせざるを得なかった演奏家、すぐ判りました~~music

葉加瀬太郎さんは何を持ってられるかご存知なら教えて下さい。

投稿: jupiter | 2008年6月26日 (木) 20時05分

jupiterさん、コメントありがとうございます。

素質があれば援助してくれるスポンサーが現れるし、なければ誰も手を差し伸べてはくれない。同じことはオーケストラにも当てはまるかも知れませんね。

葉加瀬太郎さんのヴァイオリンについては全く存じません。すみません。

投稿: 雅哉 | 2008年6月26日 (木) 22時23分

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