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2008年6月 1日 (日)

バッハ・コレギウム・ジャパン「バッハからメンデルスゾーンへ」

バッハ・コレギウム・ジャパンを聴きに兵庫県立芸術文化センターに往った。

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フェリックス・メンデルスゾーンはユダヤ人であるが7歳の時に父アブラハムの意思でルター派プロテスタントに改宗させられた。20歳の時J.S.バッハのマタイ受難曲を約100年ぶりに復活上演し、これがバッハ再評価の契機となった。ライプツィヒにある聖トーマス教会のカントル(音楽監督)であった大バッハもルター派であった。メンデルスゾーン/交響曲第5番「宗教改革」にはルター作曲のコラール「神はわがやぐら」、そしてドイツの賛美歌「ドレスデン・アーメン」が引用されている。

まず一曲目、J.S.バッハ/モテット《イエス、わが喜び》の弦楽パートは5人。第一、第二ヴァイオリンが指揮&フォルテピアノを担当する鈴木雅明さんを挟んで舞台前面左右で向かい合い、その奥でヴィオラふたりが向かい合う。そして正面奥がチェロおよびコントラバス、そしてオルガンが配置された。いわゆる対向配置である。合唱も中央に男性陣、その両脇に女性パートという具合に、中心部が低音で外側が高音域という按配だった。

二曲目以降、メンデルスゾーン/コラールカンタータ《イエス、わが喜び》、《キリスト、神の子羊よ》、《ただ尊い神の統べるままにゆだね》になると、今度は浪漫派の配置、即ち今日よく見られるように、高音→低音へと順に並ぶよう模様替えされた。また、一部の曲では19世紀に製作された木製のクラシカル・フルートも加わった。

こうしてガット弦を張り基本的にビブラートを掛けない奏法で聴くと、音楽が今まで知っていた筈のメンデルスゾーンとは全く違った様相を呈してくるから驚きだ。予備知識なしで聴いてこれがメンデルスゾーンの作品だと当てられる人は殆どいないだろう。

また、バッハと続けて演奏されることにより、メンデルスゾーンの作品に内包されたバッハからの影響が如実に明らかになるというスリリングな体験を今回させて貰った。ベートーヴェンがC.P.E.バッハ、ハイドンからの連続した流れの中にあるように、あるいはモーツァルトの音楽がヨハン・クリスティアン・バッハそっくりなのと同様に、バッハとメンデルスゾーンは確かに繋がっているのである。

後半のプログラムは小倉貴久子さんのフォルテピアノ伴奏でメンデルスゾーン/賛歌《わが願いを聞き入れ給え》。ちなみに小倉さんはフォルテピアノの名手で、例えばショパン/ピアノ協奏曲第1番(室内楽版)をフォルテピアノでレコーディングされている。

この曲になると浪漫派の色彩感が現れるようになり、クリスマス・キャロルとしてお馴染みのメンデルスゾーン/「あめにはさかえ」(賛美歌98番)を彷彿とさせた。

最後はJ.S.バッハ/カンタータ《神の時こそ、最上の時》。これはメンデルスゾーン上演稿に基づく演奏で、フルート2本にヴィオラ2、チェロ、コントラバス、フォルテピアノ、オルガンという面白い組み合わせによる伴奏で歌われた。

演奏についてはヴァイオリンの若松夏美さん、チェロの鈴木秀美さんなど、世界の第一線で活躍する音楽家たちなので悪かろう筈はない。合唱も勿論、極上である。大変興味深く、満足のいく演奏会であった。

来年は、メンデルスゾーン生誕200周年である。

関連ブログ記事:
facciamo la musica!(東京公演)
オペラの夜(西宮公演)

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