続・一筋縄ではいかぬ男、児玉 宏~名曲コンサート
児玉 宏/大阪シンフォニカー交響楽団による「名曲コンサート」を聴いた。
前回、児玉さんが振った時の感想はこちら。
「名曲コンサート」と言いながら児玉さんの選曲には一癖も二癖もある。恐らくザ・シンフォニーホールに集った聴衆のうち、グノー/交響曲第2番を聴いたことがある人なんて1%にも満たないであろう。ちなみに来年、児玉さんが振る「名曲コンサート」の曲目は以下の通り。
- モーツァルト/交響曲第34番
- メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番
- シューベルト/交響曲第3番
どうです?見事に変化球でしょう。つまり児玉シェフが腕を振るう《おまかせコース》は、「こんな料理、一度も口にしたことがない!でも、最高に美味しい!!」というものばかりなのである。

まず第1曲目、ウエーバー/「オイリアンテ」序曲は切れ味のいい、躍動感溢れる解釈。「聴かずに死ねるか!児玉 宏/大阪シンフォニカーのベートーヴェン」でも書いたのだけれど、児玉さんの音作りはカルロス・クライバーを彷彿とさせるものがある(つまり桁外れの才能ということだ)。今回もこれを聴きながらクライバーが「魔弾の射手」序曲を振っている雄姿を想い出した。
お次はベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」。やっぱり児玉さんのベートーヴェンは最高だ。基本的にはビブラートを掛けた演奏なのだが、時折ふとノン・ビブラートの表情を見せ、それが「ハッ」とするほど美しい。音は決して溜めない。弦楽器群はフレーズごと弓をきちんと離し、スッと減衰する。古楽器オーケストラのようにアタックやアクセントを強調しないが、それでも十分弾力があって表情が生き生きしている。フットワークの軽いベートーヴェン。これぞ21世紀の新しい解釈、児玉さんの真髄である。形ばかりに拘り(ベーレンライター版使用、反復指示の遵守、対向配置)、中身は20世紀の古臭い解釈のままという大植英次さんの鈍重なベートーヴェンとは大違いだ。
グノー/交響曲第2番は今回初めて聴いたのだが、ベートーヴェンの第九との親和性を強く感じた。特に第3楽章のスケルツォが第九の第2楽章によく似ている。さすが児玉さん、「皇帝」の後にこれを持ってくるというのも意味深である。フランス音楽というと"エスプリ"、"洗練"といった言葉を連想するがこのグノーの曲はそういった類ではなく、もっと明朗で素朴。のびやかな気分で聴けて、とても愉しめた。この天才シェフの腕は確かだ。
さて、いよいよ6月20日は同じザ・シンフォニーホールで児玉さんの《音楽監督・首席指揮者就任記念》定期演奏会である。楽曲解説はこちら。児玉さんからのメッセージはこちら。当日券もあるようだ。読者諸君、これを聴かずして何を聴く?
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