下野竜也と吹奏楽
5月4日、ザ・シンフォニーホールで行われる吹奏楽の祭典、なにわ《オーケストラル》ウィンズ2008のメンバー表を見て驚いた!Piano&Celesta 下野竜也(読売交響楽団)と書かれていたからである。
下野さんは大阪に縁のある指揮者である。1997年から99年まで大阪フィルハーモニー交響楽団指揮研究員として故・朝比奈 隆の薫陶を受け、朝比奈の推薦で99年4月の大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会で楽壇デビューを果たされた。07年には齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞(06年の受賞者は大植英次さん)。現在は読売日本交響楽団の正指揮者に就任されている。下野さんの詳細なプロフィールはこちら。
しかし関西では案外、下野さんと吹奏楽の関係については知られていないようだ。だから今回はそのことを書きたいと想う。
下野さんはプロの吹奏楽団、東京佼成ウインドオーケストラにしばしば客演され、2005年の定期演奏会では大栗 裕/大阪俗謡による幻想曲(吹奏楽全曲版)を振っている。その時の詳細なレポートはBAND POWERのこちらの記事に書かれている。今年2月の下野/東京佼成の演奏会はつい先日、NHK-BSで放送されたばかり。さらに下野さんが2005年にシエナ ウインド オーケストラの指揮台に立った時は大栗 裕/吹奏楽のための「神話」~天の岩屋戸の物語によるが取り上げられた。
また下野さんは大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮し、香港のナクソス・レーベルから大栗 裕作品集を出されている。録音は2000年。これがは現在、大阪俗謡による幻想曲の管弦楽版で入手可能な唯一のCDである。
ところで皆さんは、チェコスロバキア出身の作曲家、カレル・フサの「プラハ1968年のための音楽」をご存知だろうか?母国の自由化運動「プラハの春」をソ連軍が蹂躙した1968年の事件に触発されて書かれたこの作品は、ストラヴィンスキー/春の祭典、バルトーク/管弦楽のための協奏曲、メシアン/トゥーランガリラ交響曲、コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲などに匹敵する、20世紀に生まれた名曲中の名曲だ。
「プラハ1968年のための音楽」は元々、吹奏楽の為に書かれた作品だが(69年初演)、これを聴いて感動した大指揮者ジョージ・セルがフサに管弦楽版への編曲を依頼し、こちらは70年に初演されている。そしてこのオーケストラ・バージョンを本邦初演したのが下野竜也/札幌交響楽団なのである。2004年のことだった(曲の詳細な解説はこちらをご覧下さい)。
下野さんは2006年に新日本フィルハーモニー交響楽団との演奏会で再びこの「プラハ1968年のための音楽」を取り上げている。さらに、今月28日に九州交響楽団と組む演奏会でもこの曲が登場!詳細はこちら。プログラムには吹奏楽オリジナル曲のオーケストラ編曲版がずらりと並ぶ。下野さん、こういう意欲的な企画を是非大阪でもしてくださいよ!!
さて、このように吹奏楽に情熱を注ぐ下野さんが、淀工の丸谷明夫 先生(丸ちゃん)の指揮の下、なにわ《オーケストラル》ウィンズに参加される。これはちょっとした事件と言えるだろう。
余談:「プラハ1968年のための音楽」は昨年、全日本吹奏楽コンクールで近畿大学吹奏楽部が自由曲として取り上げ、見事金賞に輝いている。
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