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2008年4月15日 (火)

佐渡 裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団のフランス尽くし!

今月からテレビ「題名のない音楽会」の司会者に抜擢され、八面六臂の活躍をされている佐渡 裕さん指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団PACオケ)定期演奏会に往った。

佐渡さんは現在、兵庫県立芸術文化センターの芸術監督。さらにパリ・ラムルー管弦楽団の首席指揮者と、シエナ・ウインド・オーケストラ(プロの吹奏楽団)の首席指揮者でもある。吹奏楽界でシエナの人気は絶大で、大阪ザ・シンフォニーホールでの今年の演奏会もあっという間に完売。その牽引力となっているのは勿論、佐渡さんである。

芸術文化センターは優秀な企画力があり、古楽シリーズ、「世界音楽図鑑」、「ワンコイン(500円)コンサート」など非常に魅力的なプログラムを組んでいる。僕はここを訪れる度に、兵庫県民を羨ましく想う。大阪府も兵庫県の文化事業を見習うべきであろう。

今回聴いたのはプログラム全てがフランス音楽で構成された定期3日目。勿論、満席である(大ホールの座席数は2,001席)。

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開演前に佐渡さんによるプレ・トークがあった。一曲目、フォーレ/レクイエムでソプラノ独唱を歌った西尾知里さんはなんと13歳!彼女は10歳の時に佐渡さんにビデオテープを送ってきたそうで、添えられた手紙には「私は歌を歌うのが大好きで、そのために生まれてきたのだと想っています。どうか佐渡さん、私を起用してください!!」と書かれていたとか。今回フォーレをすることが決まってから佐渡さんはその面白い少女のことを想い出し、ビデオを見た上で彼女のオーディションをしたそうだ。

西尾さんはまだ中学生なので声量は大人の歌手よりは乏しいし、表現力もまだまだこれからという気がした。しかし彼女の最大の武器はその「若さ」である。正にpure voiceの持ち主であり、瑞々しいその歌声は鎮魂歌という曲の性質に相応しかった。佐渡さんの狙いは的中したと言えるだろう。演奏が終わって佐渡さんが西尾さんをしっかりとハグする情景は見ていて麗しかった。バリトンのキュウ・ウォン・ハンさんは深みがある声で、ホールに響き渡るその美声に心地よく聴き入った。

この曲は昨年、大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期で聴く予定だった。ところが、演奏会当日に大植さんにまさかのハプニング!新聞でも報道されたその大事件の顛末は「誰もいない指揮台」という記事に書いた。あの時は(楽員も観客も)騒然としていて心穏やかにフォーレを味わうような心理状態ではなかったが、今回の佐渡/PACオケの演奏はしみじみと心に染み渡っていくような、滋味に富む名演だった。

休憩を挟んでフランセ/木管楽器のための四重協奏曲。プレ・トークで佐渡さんが仰っていたが、レコーディングも日本での演奏も殆どされたことのない大変珍しい曲である。僕は以前から何度か書いているが、フランセやプーランクという作曲家は機知に富んだお洒落な作風である。まさにこれぞフランスの粋、エスプリと言えるだろう。今回演奏された曲もとても軽妙洒脱な曲だった。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの独奏はPACのメンバーであり、その卓越した技量で聴衆を魅了した。

恐らく現在、関西のオケで管楽器に関する限り、外国人奏者の多いPACが実力ナンバーワンであろう(京都市交響楽団は聴いたことがないのでここでは除く)。弦楽セクションは大フィルが一枚抜けている。しかし、大フィルのアキレス腱はトランペットで、ラッパはシンフォニカーの方が上手い。一方シンフォニカーはホルンが……。閑話休題。

プログラム最後はラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲。佐渡さんはプレ・トークで「フランス人らしい"スケベー"な所…僕が言うとちょっと品がないか…"官能的"、うん、こっちのほうが上品だな…を是非味わってください」と仰っていた。

通常はオーケストラだけで演奏されることの多い組曲だが今回は合唱も加わりスケールが大きく、聴き応えがあった。佐渡さんは汗が滴り落ちる"熱血指揮者"というイメージが強く、どちらかと言えばそれは"大味"というマイナス評価にも繋がりやすいのだが、どうしてどうして、このような繊細なフランス音楽にも十二分な才覚を発揮された。勢いがあり起伏にも富んだ鮮やかな解釈。PACもそれによく応えた。

通常、定期演奏会ではされないアンコールもあった。ベルリオーズ/「ファウストの劫罰」よりラコッツイ行進曲。まさにフランス尽くし!サービス精神旺盛な、大満足の演奏会であった。

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