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2008年4月24日 (木)

続・大阪俗謡をめぐる冒険~究極の名盤はこれだ!!

これは記事「大阪俗謡をめぐる冒険(大栗 裕、大フィル、そして淀工)」と併せてお読み下さい。

大栗 裕/「大阪俗謡による幻想曲」という名曲は、初演者の朝比奈 隆を抜きには語れないだろう。朝比奈/大阪フィルハーモニー交響楽団による1975年の演奏は大フィルの創立50周年記念CDで一度発売されたことがある。しかしこれは現在絶版であり、残念ながら僕は聴く機会に恵まれていない。

  • 下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団(70年改訂 管弦楽版)
    現在入手できるCDの内、オーケストラが演奏しているのはNAXOSから販売されているこの大栗 裕 作品集のみである(実売価格1000円程度)。演奏自体は客観的というか冷静で、曲の持つ「祭の熱狂」という雰囲気が乏しい。資料的価値以上のものはない。ただこの演奏は下野さんがデビューされて間もない2000年の録音であり、現在の下野さんならばもっと違った解釈をされるのではいかと期待される。
  • 小野田宏之/東京佼成ウインドオーケストラ(吹奏楽全曲版)
    当たり障りのない演奏。破綻がない反面、面白みに欠ける。
  • 朝比奈 隆/大阪市音楽団(吹奏楽全曲版、92年録音)
    これはマエストロ83歳の録音なので主部のアレグロに入ってからもテンポは遅めである。朝比奈がもっと若い頃の演奏を聴きたかったと想うのだが、仕方ない。しかしこの演奏はひとつひとつのフレーズが丁寧に歌われニュアンスに富み、大阪人でしか醸し出せない味わい深い表現となっている。風味絶佳、滋養豊富。但し、残念ながら現在廃盤
  • 丸谷明夫/なにわ《オーケストラル》ウインズ2003(淀工カット版)
    丸ちゃんの指揮の特徴はまず鮮烈な打楽器の強打にある。そのド迫力には聴いていて興奮せずにはいられない。祭だ、祭だ!と想わず叫びだしたくなる衝動に駆られる壮絶な名演。また冒頭のアンダンテは朝比奈よりゆったりとしたテンポで始まるのだが、主部のアレグロに入るとアクセル全開。そのコントラストが実に見事である。細部も明瞭に響き、切れ味鋭く一言で言えば最もメリハリある演奏。
  • 丸谷明夫/淀川工業高等学校吹奏楽部(1980年録音)
    全日本吹奏楽コンクールにこの曲が初めて登場した時のもの(金賞)。殆どの生徒が楽器を持って3年足らずの素人集団の演奏だから技術的にはプロに敵う筈もない。現在の淀工の水準と比較しても荒さが目立つ。しかし、それだけで切り捨てることは出来ない不思議な魅力のある演奏だと想う。若さゆえの疾走する躍動感というか、粗野で原始的なパワーと言うべきか。考えてみれば恐らくそれこそが祭りの本質なのだろう。なお、この時の演奏だけ序奏部のピッコロ&フルートの旋律がクラリネットで代用されている。
  • 丸谷明夫/淀川工業・工科高等学校吹奏楽部(2005年録音)
    この曲で全日本吹奏楽コンクール5回目の金賞を受賞した時の演奏。DVD「淀工 青春の軌跡」に収録されている。80年の演奏と比較するとバンドのカラーが完全に変化していることに驚かされる。以前の荒っぽさ、勢いで押し切る部分がすっかり影を潜め、一糸乱れぬ繊細緻密なアンサンブルは圧倒的ですらある。しかし、冷徹なまでのこの完璧さは確かにラヴェルなどフランス印象派の音楽には相応しいのだが、「大阪俗謡」という曲の本質にはそぐわない気もするのである。淀工は確かにこの四半世紀に驚異的進化を遂げた。しかしその半面、"浪速のバルトーク"こと、大栗 裕の世界からはむしろ遠ざかってしまったのではないだろうか?
  • 丸谷明夫/淀川工業高等学校吹奏楽部(1989年録音)
    淀工が5年連続金賞に輝いた年の録音。淀工の中ではこれが最強の演奏と自信を持って推す。80年録音版の熱気と05年のアンサンブルの完成度ー両者の長所が程よくブレンドされ、発展途上のこの時期でしか起こり得なかった奇蹟の記録である。「大阪俗謡」に必要不可欠な程よい荒っぽさがある。昨年、「一音入魂! 全日本吹奏楽コンクール名曲・名演50」という本が発売されたのだが、この中で「大阪俗謡」極めつけの名演としてやはりこの89年版が選ばれていた。

特にコメントはしないが、さらに辻井清幸/尼崎市吹奏楽団(84年全日本吹奏楽コンクール金賞)、および森島洋一/大津シンフォニックバンド(2000年全日本吹奏楽コンクール金賞)の演奏も聴いた上で、僕の独断による「大阪俗謡による幻想曲」の名盤、ベスト3を発表する。

第1位 丸ちゃん/なにわ 2003
第2位 丸ちゃん/淀工(89年版)
第3位 朝比奈/市音

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ただし前置きでも述べたとおり、僕は未だ若き日の朝比奈が大フィルを振った演奏は聴いていないので、もし将来その機会があればこの順位は変動するかも知れない。

さて、なにわ《オーケストラル》ウインズ2008演奏会もいよいよ近付いてきた。5/4に行われる大阪公演は、なんとチケットが即日完売!恐るべし、なにわ。僕はちゃんと確保したので、しっかりレポート致します。しかし、そろそろなにわの原点である「大阪俗謡」を再演して欲しい気もするのだが、如何なものでしょう?

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