うた魂(たま)♪
評価:B-
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「がんばっていきまっしょい」(1998)、「ウォーターボーイズ」(2001)、「スウィングガールズ」('04)、「リンダ リンダ リンダ」('05)、「フラガール」('06)、「天然コケッコー」('07)などに引けをとらない、爽やかな青春映画の登場である。高校の合唱部を舞台にするというアイディアも良い。
美少女ものというジャンルは以前から日本映画に確固たる地位を得ている。多分その草分け的存在は高峰秀子が主演した「馬」「秀子の車掌さん」(いずれも1941年公開)あたりだろう。「馬」で助監督を務めた黒澤明と、当時16歳だったデコちゃん(高峰秀子の愛称)との実らなかった恋の物語は日本映画史上、余りにも有名である。
60年代の日本映画を席巻した美少女はなんと言っても吉永小百合だろう。彼女が「キューポラのある街」('62)のヒロインに抜擢されたのは高校在学中のことであった。「サユリスト」という言葉も生まれた(タモリ、野坂昭如らが該当する)。
僕がビデオで観てその可愛さにメロメロになったのが「あこがれ」('66)の内藤洋子。喜多嶋舞のお母さんである。
そして70年代の山口百恵を経て、角川映画台頭とともに薬師丸ひろ子(「うた魂♪」にも出演)、原田知世、渡辺典子らの時代となる。
「天然コケッコー」で好演し、「うた魂♪」のヒロインも射止めた夏帆(かほ)は確かに可愛いのだが、歴代の美少女にはない彼女特有の持ち味は、その天然ボケキャラにあると言えるだろう。なんだか可笑し味があって、ほのぼのした気分になるのである。特に今回、彼女の「シャケの産卵顔」には爆笑した。
「フラガール」組から参加した徳永えり(大阪府出身)も、いい味出している。彼女は今年、大沢たかお主演のミュージカル「ファントム」でヒロインのクリスティーヌを演じ、その美声を披露した。だから本作での合唱部員という役柄は正にピッタリ。また映画の中でちゃんとピアノを弾いていたのにも感心させられた。きっと猛練習したことだろう。
脚本には未熟なところもあり、テーマを台詞で語り過ぎて中盤だれたりもするのだが、出演者たちの好演でそんな疵は余り気にならなかった。
「待ちぼうけ」(北原白秋 作詞、山田耕筰 作曲)、ゴスペラーズの書き下ろし「青い鳥」など挿入歌も良いし、最高に可笑しかったのがヤンキー合唱団がダイナミックに歌う尾崎 豊(「15の夜」「oh my little girl」「僕が僕であるために」)。
僕が高校生だったのは80年代。その頃十代の若者たちの、学校や大人社会に対する反抗のシンボルが尾崎だった。テレビ「北の国から'87初恋」で、思春期を迎えた純くん(吉岡秀隆)がカセットテープで何度も聴くのも尾崎の「I LOVE YOU」である(脚本を書いた倉本聰は吉岡からこの曲を薦められたそうだ)。あれから20年以上経た今でも、尾崎は荒ぶる魂たちの偶像なんだなぁ。時代は流転しても人間の本質、感性というものはそう容易には変わらないということなのだろう。
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