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2008年4月16日 (水)

大栗 裕の世界

いずみホールで円光寺雅彦/大阪フィルハーモニー交響楽団による「大栗 裕の世界」を聴いた。コンサートマスターは長原幸太さん。

昨年大フィルによる「いずみホール特別演奏会」は2度あったのだが、そのいずれも客席が半分くらいしか埋まらないという閑散とした状況だった。しかし今回は8割くらいの入りで、大阪が生んだ作曲家・大栗に対する関心の高さが窺われた。

淀川工科高等学校吹奏楽部(淀工)を指導されている丸谷明夫 先生(丸ちゃん)を会場でお見かけした。

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大栗はしばしばその音楽の土俗性から"浪速のバルトーク"と喩えられるが、今回演奏された「弦楽のための二章」を聴くと、むしろその作風は「ゴジラ」の作曲家として有名な伊福部昭に近いのではないかと感じられた。伊福部の管弦楽曲には、タイトルがそのものずばりの「土俗的三連画」(1937)という作品があるくらいである。

北海道釧路市に生まれた伊福部はアイヌの民俗音楽に興味を持ち、また日本の伝統音楽の節回しを自作に持ち込んだ。わらべ歌や天神祭の祭囃子を引用した大栗に共通する方向性を感じる。ちなみに「ゴジラ」が作曲されたのが1954年、大栗の「大阪俗謡による幻想曲」や歌劇赤い陣羽織」は翌55年の作である。

大栗が朝比奈隆からの招聘で関西交響楽団(大フィルの前身)のホルン奏者として入団したのが1950年。この年から66年まで関響は映画音楽のレコーディングに携わっている。状況証拠から言っても大栗が伊福部の音楽から影響を受けた可能性は高い。

大栗は「古事記」「日本書紀」に登場する天照大神(あまてらすおおみかみ)の伝説に基づき、「吹奏楽のための神話ー天の岩屋戸の物語による」('73)を作曲している。これは丸ちゃん/淀工が全日本吹奏楽コンクールで2度演奏し、いずれも金賞を受賞した曲。一方、伊福部は映画「日本誕生」('59)の音楽を担当しており、これにも天照大神が登場する(映画では原 節子が演じた)。

弦楽のための二章」に続いて演奏されたのは「オーボエとオーケストラのためのバラード」。演奏時間7分程度の小品で、大栗らしく素朴で庶民的な旋律が印象的。ベルリン・フィル首席奏者ローター・コッホの依頼で書かれ朝比奈が渡欧時に本人に楽譜を手渡したらしいのだが、その後演奏されたかどうかは全く不明で、今回が本邦初演だそうだ。良い曲なのに勿体ない。日本のオーケストラはベートーヴェンなど西洋音楽ばかり重宝するのではなく、もっと自国の音楽を大切にしなければならない。ただ、同じことは日本の聴衆にも当てはまるのだが。そういう意味で、今回のコンサートを企画した大フィルの姿勢は高く評価したい。「サントリー音楽財団 推薦コンサート」に選定されたのも至極当然のことであろう。

休憩を挟んで演奏されたのは歌劇赤い陣羽織」全3場。55年に朝比奈/関西歌劇団が初演した作品である。ファリャのバレエ音楽にもなったアラルコンの小説「三角帽子」を自由に翻案したもので、台本は團伊玖摩の歌劇「夕鶴」も書いた木下順二。「夕鶴」と言えば山田耕筰の「黒船」と並び、日本のオペラを代表する作品だが、どうしてどうして、「赤い陣羽織」も両者に勝るとも劣らない作品で、物語りも音楽も大変親しみ易く面白く観た。所要時間が1時間足らずという短さもありがたい。もっと上演されて良い作品だと想う。

オーケストラが前面に陣取り、後方の一段高い舞台で歌手たちが演じた。ちゃんとメイクや衣装が施された本格的な歌劇だった。

大変充実したコンサートであった。ただ少しだけ苦言を呈するなら、オペラ歌手のビブラートをかけた発声は歌詞が聞き取れないことが多く、電光掲示による字幕スーパーがあればより分かりやすかったであろう。兵庫県立芸術文化センターでオペラが上演される時は、例えば「ヘンゼルとグレーテル」など日本語で上演される場合も字幕付きである。そういう点は大阪の音楽業界の方たちも見習って頂きたい。

それから、大栗には歌劇夫婦善哉」という作品もあるそうで、これは是非観てみたい!恐らく大阪情緒たっぷりな作品であろう。なんとか再演出来ないものだろうか?

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コメント

オーボエとオーケストラのためのバラードですが、
ローター・コッホの委嘱とはプログラムに書かれて
いたのでしょうか?だとすればプログラムの間違い
の可能性があります。
この曲が書かれた1967年(で有ってますかね)当時
西ベルリンにはもう一人コッホという名のオーボエ奏者
が居ました。フルネームでRolf Julius Koch。当時の
ベルリン放送響(現在のベルリン・ドイツ交響楽団)
に在籍していました。
そのもう一人のコッホがずっと以前に録音してLP
が出ていてCDにもなっています。その解説には
1967年にRolf Julius Kochの為に書かれたと書いています。

いきなりの書き込み失礼しました。

投稿: オーボエ吹き | 2008年4月17日 (木) 15時55分

オーボエ吹きさま、詳細なコメントをありがとうございます。

1967年にローター・コッホの依頼で書かれたというのは演奏会プログラムに書かれていました。執筆されたのは白石知雄さんで、この記事の最後に白石さんのブログへリンクを張っています。大変貴重な情報ですから、是非この件については白石さんか大フィル事務局へ直接ご連絡なさってみて下さい。

ちなみにプログラム冒頭の大栗 裕のプロフィール欄で朝比奈隆がベルリン・フィルに客演し「大阪俗謡による幻想曲」を振ったのが1957年と記載されていましたが、これも1956年の間違いのようです。

投稿: 雅哉 | 2008年4月17日 (木) 21時11分

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