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2008年4月12日 (土)

宝塚月組 " ME AND MY GIRL "

宝塚歌劇を初めて観ようと考えている方に真っ先にお勧めしたいのは、海外ミュージカルである。なぜなら作品の質の高さが予め保障されているから。宝塚オリジナル作品は出来不出来の落差が激しく、勝率の極めて低い博打みたいなものである。

海外物の中でも究極の名作は「エリザベート」だろう。まず楽曲が素晴らしいし、コスチューム・プレイという点でも宝塚に相応しい。

次にミュージカル・コメディ。" ME AND MY GIRL "  "CAN-CAN"  「ガイズ&ドールズ」「ハウ・トゥ・サクシード」などがそれに相当する(僕は「ファントム」も大好きなのだが、物語自体に華やかさがないので宝塚初心者向きとは言い難い)。

" ME AND MY GIRL "(愛称:ミーマイ)の内容を一言で表すなら男性版「マイ・フェア・レディ」といったところか。ミーマイがロンドンで初演されたのは1937年であり、56年の「マイ・フェア・レディ」より先である。ただし、「マイ・フェア・レディ」の原作はジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」で、初演が1913年だからミーマイがこれを参考にして創られた可能性は大いにある。宝塚版は86年ブロードウェイ上演版をベースにしているので、劇中で「マイ・フェア・レディ」の登場人物、ヒギンズ教授とピッカリング大佐のことが言及される。

ミーマイが宝塚月組で初演されたのが1987年。95年に月組(主演:天海祐希麻乃佳世)で再演され、今回3回目の上演となる。95年版はDVDで観た。

なお、東宝もミーマイを2度上演しており、僕は2003年の初演版(唐沢寿明木村佳乃)、および2006年再演版(井上芳雄笹本玲奈)を東京・帝国劇場で観ている。87年に宝塚でジャクリーン(ジャッキー)を演じた涼風真世さんは東宝初演でも同役を演じたが、06年再演時には純名りささんにバトンタッチし、涼風さんは公爵夫人・マリアを演じた。

東宝版は山田和也さんの洗練された演出が見事だったし、舞台装置も大仕掛けで豪華だった。唐沢さんは身のこなしが軽やかで素晴らしいビルだったのだが、この役を演じるには少々年をとり過ぎているかなという気がした。それから木村さんの歌は下手くそで聴くに堪えなかった。

再演時には主役のふたりが若返り、とても良くなった。特に玲奈ちゃんのパワフルな歌唱力には圧倒された。井上くんは最初から気品があって、「無教養でがさつな下町青年」という感じが出ていなかったのが少々残念だった。

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この度初めて生で観た宝塚版のミーマイは、やっぱり最高だった。僕は東宝版より好き。セットはシンプルだけれど、ミュージカル・コメディの真髄ってそんなところにはないんだな。練られた台本と素敵な歌、そして踊りさえあればそれだけで十分魅力的なのだ。特に一幕のフィナーレ、"ランベス・ウォーク"を全員で歌って踊る場面の愉しさと来たら!この高揚感こそミュージカルの醍醐味である。ここは出演者たちが客席に降りてくるので、是非一階席で観て戴きたい。

ビルを演じる瀬名じゅんさんについては、僕は前から「そつがない男役」だと想っていた。強烈な存在感とか魅力には欠けるが、かといって演技力・歌唱力・ダンス力にこれといった欠点も見当たらない。 そういう無個性なところが、かえってこのビルという役柄にはまっている気がした。文句なし。

サリーを演じる彩乃かなみさんは本公演で退団が決まっている。花組時代から彼女の可憐さ、歌の巧さは際立っており、僕は以前から注目していた。しかし彼女にとって不幸だったのは、宙組に組替えになったことだろう。"宝塚の女帝"と言われた大物娘役・花總まりさんさんの下で、明らかに精彩を欠いた。もっと早い時期にトップにしてあげるべきだったのにという忸怩たる想いもあるが、最後に月組に移り大輪の花を咲かせることが出来たので、これで良しとしよう。本公演で彼女が酒場で歌うバラードは、しみじみ心に沁みた。本当はサリーという下町娘役は彩乃さんに似合ってはいないのだが、フィナーレで上流階級の令嬢に華麗なる変身を遂げる場面はとても綺麗で息を呑んだ。逆に95年公演でサリーを演じた麻乃佳世さんは下町娘はピッタリだったのに、変身後は些か違和感があった。

公爵夫人を演じる出雲 綾さん(月組組長)も本公演で退団である。僕が初めて宝塚を生で観たのが宙組「エリザベート」。その時出雲さんは皇太后ゾフィー役としてその美しいソプラノを存分に披露し、観客を魅了した。あの頃宙組で男役を張っていた生徒たちも4番手まで全員トップになり、今はもう宝塚にはいない。ミーマイでエトワールを歌う出雲さんを聴きながらそんな感慨に耽った。

ジョン卿を演じる霧矢大夢きりやん)は元々芸達者な人なので、悪かろう筈がない。ただ、ジョン卿は歌が少なくソロさえないのできりやんが一寸気の毒。

ジャクリーンは役代わりで、今回僕が観たのは娘役の城咲あいさん。男役・明日海りおさんのジャッキーは来週観劇予定。このあたりの比較は後日、改めて書こう。

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