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2008年3月28日 (金)

広上淳一/大フィル いずみホール特別演奏会

大阪フィルハーモニー交響楽団 いずみホール特別演奏会 II ~古典から近代への旅~ を聴きに往った。指揮は2008年4月より京都市交響楽団の常任指揮者に就任される広上淳一さんである。
20080327
客席は半分くらいしか埋まっておらず、熱演した音楽家たちが一寸気の毒だった。いずみホールのキャパシティから考えると400人程度の入りだろうか?

曲目:
ハイドン/交響曲第60番「うっかり者」
ショスタコーヴィチ/バレエ組曲より
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「プルチネルラ」

まず総評から言うと、広上さんの指揮は速めのテンポで颯爽としており、弾力性があり表情豊か。魅力的な音楽作りをされていたと想う。ショスタコーヴィチストラヴィンスキーなど20世紀の音楽については文句なし、特にショスタコーヴィチは今後、これ以上充実した演奏にはお目にかかれないかもしれない位の素晴らしさだった。

ハイドンの上品なユーモアに対してショスタコーヴィチはむしろ(自虐的とも言える)アイロニカルなユーモアの持ち主だったんだなということが、今回のコンサートを聴いてよく分かった。ソヴィエト共産党の批判に曝されながらその中で生きざるを得なかった作曲家の苦渋と心の暗黒が、曲調の表面的明るさの中に垣間見られ、その屈折した構造がスリリングで面白かった。

大フィルが誇る弦楽アンサンブルの巧さ、美しさも特筆すべきだろう。長原幸太さん、梅沢和人さんと二人のコンサートマスターが揃い踏みという、大植英次さんが指揮される定期以外では滅多にお目にかかれない、気合の入り方も圧巻だった。

ただ弦が頑張っている分、金管、特にトランペットのミスが目立った。前半、客演奏者としてトップを吹いていたアレクセイ・トカレフ氏(元サンクトペテルブルク交響楽団首席トランペット奏者)は、音を何度も外すし、ソロはたどたどしいし、散々だった。

それからモダン・ティンパニを使用し、ビブラートをたっぷり効かせたハイドンについては最後まで違和感を拭い去ることは出来なかった。以前「21世紀に蘇るハイドン」の記事に書いたことだが、これが30年前なら生き生きしたハイドンとして評価出来たかも知れない。しかし今や我々は、ブリュッヘン/18世紀オーケストラによる古楽器演奏による魅力的なハイドンを体験し、ラトル/ベルリン・フィルによる鮮烈なピリオド・アプローチの洗礼も受けている。それらを前にして、広上/大フィルの演奏は残念ながら古色蒼然とした20世紀の遺物にしか聴こえなかった。彼らにはアクチュアルな時代認識が欠如しているように僕には想われる。

NHK交響楽団ロジャー・ノリントンを定期演奏会の指揮者として招き、全曲ノン・ビブラートで弾き切った。新日本フィルハーモニー交響楽団は2008年度の新シーズンにフランス・ブリュッヘンダニエル・ハーディングなどピリオド・アプローチ系指揮者を招聘している。また東京交響楽団は2004年からユベール・スダーンが音楽監督となり、モーツァルトを演奏するときはピリオド奏法、バロック・ティンパニが当たり前となっている。正指揮者である飯森範親さんもピリオド・アプローチの旗手である。そしてスダーンを客演として迎えた兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ、2008年3月)も仙台フィル(2007年11月)も果敢にピリオド奏法にチャレンジしている。そんな時代に大フィルだけがこんな古めかしいスタイルに固執していて、本当に良いのだろうか?

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不惑ワクワク日記(同じコンサートを聴かれた方の感想)

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コメント

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ショスタコは、案外いろんなポピュラーミュージックを作曲していて、今回のバレエ組曲はその一つですね。シリアス面ばかりがクローズアップされるショスタコですが、バーンスタインのようにポップな作品ももっとコンサートピースとして重宝されても良いように思います。

広上さん、京響でまだ来期ショスタコを振らないですが、是非とも刺激的なプロをやって貰いたいですね。

投稿: ぐすたふ | 2008年3月30日 (日) 20時38分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

ショスタコーヴィチやプロコフィエフの作曲した映画音楽は、未だにコンサートで演奏される機会が少ないですよね。これはクラシック業界に携わる人々の映画に対する偏見も一因であろうかと想われます。

ウィーンで活躍し、後にハリウッドに渡った作曲家エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲とか交響曲、そして映画音楽「シー・ホーク」「ロビンフッドの冒険」なども、もっともっとコンサートで取り上げられるべき名曲中の名曲だと信じて疑いません。

投稿: 雅哉 | 2008年3月31日 (月) 11時10分

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