大阪市音楽団/青少年コンサート
第34回 青少年コンサートを聴きに、森ノ宮ピロティホールへ往った。演奏は新田ユリ/大阪市音楽団(市音)、またフィンランド放送交響楽団の首席トランペット奏者、ヨウコ・ハルヤンネ氏がゲストとして登場した。プロの吹奏楽団である市音を聴くのは昨年11月の定期演奏会以来だから、実に4ヶ月ぶりである。
まず酒井 格/たなばたが演奏された。酒井さんは1970年大阪生まれの作曲家。全日本吹奏楽コンクールでは京都の龍谷大学が毎回酒井さんの新曲を披露し、過去4度金賞を受賞している。「森の贈り物」「七五三」「波の通り道」などの題名からも分かるように、音楽そのものも優しく愛らしい作品が多い。「たなばた」は高校生の時に作曲されたものだそうで、酒井さんらしく穏やかで、心地よく耳をくすぐる旋律に溢れた名曲。人気があるのも納得がいく。
田中久美子/アンダルシアは香川県高松市出身の田中さんがグラナダ、コルドバなどスペインのアンダルシア地方を旅された印象を書かれた作品。会場には酒井さんと田中さんもいらっしゃっていて、曲が終わると立ち上がり聴衆に挨拶をされていた。
続いてアルチュニアン/トランペット協奏曲(1950年初演)。アルチュニアンはアルメニアの作曲家であり、その民族色豊かな節回しは同郷のアラム・ハチャトゥリアン(「ガイーヌ」「スパルタクス」)を思い起こさせた。
トランペットは「輝かしい響き」とか「黄金のトランペット」などと形容されることの多い楽器だが、ハルヤンネさんの奏でる音は、全く性格の異なるものだった。むしろ「いぶし銀の輝き」を放ち、「熾火のように」仄かに燃え続ける演奏と表現したらいいだろうか。成る程これこそがフィンランドの空気感、シベリウスの世界なんだなぁと感じ入った。
休憩を挟んで2008年度全日本吹奏楽コンクール課題曲5曲が演奏された。ちなみに全日本吹奏楽連盟から有料配布されている今年の課題曲参考演奏CD及びDVDは、秋山和慶/大阪市音楽団がレコーディングしたもの。だから市音の演奏はさすがに上手い。
内藤 淳一/ブライアンの休日は第18回朝日作曲賞を受賞した明るく軽快なマーチ。内藤さんの作品は「夢と勇気、憧れ、希望」「栄光をたたえて」等、過去何度もコンクール課題曲に選ばれている。
浦田健次郎/セリオーソは極めて内証的な楽曲。最後のパーカッションによる強打が印象深い。
片岡寛晶/天馬の道~吹奏楽のために~で僕が即座に連想したのはNHK大河ドラマ。まず冒頭、「天馬の道」と毛筆で大きく書かれた題字が画面一杯にド〜ンと出る。そして遠くから、真っ白な天馬がスローモーションでカメラに向かって駆けてくる。そんな情景が思い浮かぶ、華やかで演奏効果の高い作品だった。
井澗昌樹/火の断章はストラヴィンスキー/春の祭典を彷彿とさせ、原始的パワーを秘めた、沸々とマグマが地の底から湧き上がって来るような曲。
糸谷 良/マーチ「晴天の風」を作曲した糸谷君は1990年生まれの何と現在、高校二年生!素直で、そよ風のように爽やかな行進曲。
課題曲も終わりプログラム最後はスパーク/ドラゴンの年。ご存じ、スパークの名を一躍世界に轟かせた名曲中の名曲。
そしてアンコールは、来ました!ヤン・ヴァン・デル・ロースト/アルセナール!!。この曲の冒頭部を聴いた瞬間に、僕は全日本マーチングコンテストで金賞に輝いた、滝川第二高等学校吹奏楽部の王者の行進が脳裏に鮮やかに浮かび上がった。そう、漸く長い冬は去り、吹奏楽に胸を熱くする季節が再び巡って来た。僕はアルセナールを聴きながら、春の足音を確かに感じたのだった。
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コメント
こんばんは。
青少年コンサート行かれたのですね!
市音のたなばた聴けたなんてうらやましい限りです。
指揮の新田ユリさんのブログにも当日のことが書かれてありますね。
今日は「なにわ」のチケット発売日でしたが無事にゲットできましたでしょうか?
ピアノとチェレスタで参加の下野竜也さんが気になります。
投稿: ごいんきょ | 2008年4月 4日 (金) 21時38分
ごいんきょさま、コメントありがとうございます。
なにわ<<オーケストラル>>ウィンズ、大阪公演は既にチケット完売です。おかげさまで、僕は1階席ど真ん中をGetしました!
勿論、レポートは書きますのでご期待下さい。
それから下野竜也さんのご参加は気がつきませんでした。下野さんは東京佼成ウインドオーケストラを指揮されるなど吹奏楽にも力を入れていらっしゃいますが、1997-1999に朝比奈隆の下で大阪フィルハーモニー交響楽団の指揮研究員をされており、大阪と縁のある方です。下野/大フィルによる「大阪俗謡による幻想曲」のCDもNAXOSから発売中です。さて、コンサート中に下野さんのお話も伺えるでしょうか?
投稿: 雅哉 | 2008年4月 5日 (土) 09時32分