桂三枝 はなしの世界
桂三枝さんの落語を聴きに初めて繁昌亭に往った。
天満天神 繁昌亭の公式サイトはこちら。上方では戦後初となる落語専門の小屋で、2006年9月15日に開席。昼席・夜席で毎日落語を愉しむことが出来る。1階席で10列くらいしかない小さな寄席で、落語を聴くには程よい空間である。勿論、補助席も出て大入り満員だった。
三枝さんは古典落語はされず自作の落語、いわゆる「創作落語」一本である。「桂 三枝大全集 創作落語125撰」というCDが出ているから、それ以上の数を創られているということだろう。中でも「ゴルフ夜明け前」は有名。1983年文化庁芸術祭大賞を受賞し、87年には渡瀬恒彦(坂本竜馬)、高橋恵子(おりょう)主演で映画化もされた。近藤 勇役で三枝さんご自身も出演されている。僕はこれを公開当時に映画館で観ているのだが、映画の出来はいまひとつでストーリーも全く記憶に残っていない。「ゴルフ夜明け前」は是非とも三枝さんご自身の語りで、いつの日にか聴きたいと想っている。
三枝さんは現在、上方落語協会会長として東奔西走されている。また、テレビ「新婚さんいらっしゃい!」は番組が始まって今年で38年目に突入し、これは単独の司会者としては最長記録だそうである(タモリさんは「笑っていいとも!」の司会者としてギネスブックに認定されたが、これは同一司会者による生番組として世界最多の放送回数ということ。こちらは25年目である)。
前日に鹿児島で「新婚さんいらっしゃい!」の収録があり、独演会当日に飛行機で大阪に戻られた三枝さんはその足で武庫川女子大学で講義をされ、それから繁昌亭に来られたとか。いやはや、凄まじいスケジュールである。(この日のことを書かれた三枝さんのブログをご紹介しておく。こちら)
お弟子さんの三金さん、三風さんの噺も三枝さんが創作されたものだった。
「又も華々しき華燭の典」は2年連続3度目の結婚をした男の披露宴のドタバタを描く。
「大相撲夢甚句」は外国人力士が大勢を占める角界を嘆く枕(前置き)から入って、大学受験を止め相撲部屋に入門する息子の噺。時津風部屋の暴行事件の話題も盛り込まれていた。
「ロボ・G」は退化型の被介護ロボットという滑稽噺。
「ダンシング・ドクター」は医療機関も生き残りを懸けてサービス業に乗り出すという時宜に適した噺。
そして最後は新ネタ「合格祈願」。これは繁昌亭のすぐお隣、大阪天満宮(学問の神様・菅原道真が祀られている)に取材した噺だった。
21世紀に生きる現代人にとって古典落語は江戸時代の風習、生活様式などを知っていないと理解が難しい側面がある。しかしその噺が創られた時点では、市井の日常を描いた親しみやすいものだった筈である。一部のマニアの慰みものに陥ってしまった落語という文化を今一度、庶民の手に戻したい。そういう三枝さんの並々ならぬ情熱と決意を、この独演会から感じ取ることが出来た。愉しかった。
会がはねて繁昌亭の外に出ると、なにやら人混みが出来ている。その輪の中心にいたのがなんと三枝さんだった!気軽に記念写真に応じていらっしゃる。三枝さんの人間性の大きさに深く感銘を受けた。「桂三枝 はなしの世界 その六」にも是非来たいと想った夜であった。
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