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高田泰治/フォルテピアノ・リサイタル

2月22日(金)大阪倶楽部で、日本テレマン協会マンスリーコンサートを聴いた。

演奏されたのはハイドン/3つのソナタ、そしてモーツァルト/幻想曲、ロンド、アダージョ、ソナタ第3番である。フォルテピアノを弾いたのは高田泰治さん。

フォルテピアノとは現在のピアノの原型である。実はピアノの正式名称はピアノフォルテ“pianoforte”であり、しばしば “pf” と表記されるのはそのためである。ピアノの前身、チェンバロは均一な音量しか出せなかった。弱音(ピアノ)から強音(フォルテ)まで出せる楽器という意味で名付けられたのである。

フォルテピアノの響きはモダンピアノよりも柔らかく、なんだか鄙びた音がする。そして一音の持続時間が短い。また音域によって音色までも異なるところが面白い。鍵盤の数もモダンピアノが88鍵なのに対して小さいものでは61鍵しかない。

今回の演奏会で使用されたのは1781年製ヴァルター・ピアノのレプリカ。これはモーツァルトが実際に使用していた楽器だそうである。

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高田泰治さんはチェンバロを鬼才中野振一郎 先生に、またフォルテピアノをミュンヘン音楽大学のクリスティーネ・ショルンスハイムに師事している(現在も定期的にドイツに赴き修行中)。高田さんと中野先生のデュオ・コンサートについては以前こちらの記事に書いた。

中野先生の切れ味鋭い、ある意味攻撃的な演奏に対し、高田さんのそれは穏やかで貴族的である。タイプの異なる音楽家ゆえに、ふたりが共演するとどうしても違和感を拭い去ることが出来ない(僕と同様の感想が「レコード芸術」誌の批評にも書かれていた)。しかし今回、高田さんを単体で聴いてみて、「嗚呼、この人は十分なテクニックがあるし、将来性のある鍵盤奏者なんだなぁ」とほとほと感心した。強弱のダイナミクスに富み、何よりフォルテピアノの優雅な響きが高田さんの資質に合っている。高田さんの才能を見抜き、その方向性を指し示した中野先生はさすが慧眼である。フォルテピアノ奏者は日本に数少なく、関西では皆無に等しい。だから高田さんの存在は貴重である。もう少しタッチに軽やかさが欲しい気もするが、それは今後の課題だろう。

フォルテピアノには現在のピアノのようなペダルはない。しかし高田さんは演奏中にしきりに右膝を上げている。何をやっているのだろう?と観察していて、はたと気がついた。どうやら鍵盤の裏に仕掛けがありそうだ。下から写真を撮ってみた。

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帰宅し色々調べて分かったのだが、これがペダルの替わりに膝で押し上げる膝レバーである。

モダン・ピアノにもダンパーという、鍵盤から手を離した瞬間に音が消えるようにするための仕組みがある。ダンパーフェルトが上から弦を押さえてその振動を止めるのだ(その詳細はこちら)。フォルテピアノでは膝レバーを蹴り上げると全ての弦から一度にダンパーを取り払う機構になっており、これにより全弦が自由に振動するというわけだ。

日本人のように小柄だと、膝レバーに足が届かない場合があるので、足元に台(アジャスター)を使用することも多い。逆に大柄なドイツ人は、持ち上げなくても既に膝の方が鍵盤より高かったりして非常に苦労するそうである。こうして時代の要請に答え、ペダルが出現したということなのだろう。

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