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2008年2月21日 (木)

潜水服は蝶の夢を見る

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評価:A+

映画公式サイトはこちら

これはロックト・イン・シンドロームになった主人公の物語だ。Locked-in syndrome (閉じ込め症候群)とは脳梗塞に罹患し、意識は清明だが四肢を動かすことや発声が出来ず、随意的な眼球運動や瞬きだけが保たれている状態をいう。「潜水服」とはLocked-inの比喩であり、「蝶の夢」が記憶力と想像力を象徴している。巧いタイトルだ。

まあ非の打ち所のない完璧な芸術作品なので、どうぞ映画館でご覧下さいとしか言いようがない(ただし、今年の僕のベストワンは「ラスト、コーション」と既に心の中では決めている)。

製作はキャスリーン・ケネディ。彼女のプロデューサー・デビューは「E.T.」で、それ以降スピルバーグ映画のプロデュースをずっと手掛けている。

撮影監督はポーランド出身のヤヌス・カミンスキー。アカデミー撮影賞を受賞した「シンドラーのリスト」以降、スピルバーグの全作品を撮っている(「プライベート・ライアン」でもオスカーを受賞)。5月に公開予定の「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(←クリックしたら予告編trailerが見れるよ!)も勿論、彼が担当している。カミンスキーと組むまで、スピルバーグ映画の撮影監督は毎回替わっていた。それだけカミンスキーに対する監督の信頼が厚いということだ。

カミンスキーも作曲家ジョン・ウイリアムズ同様に、スピルバーグとの仕事を最優先に考えている筈だ。しかし、2007年にスピルバーグは一本も撮らなかった。想像するにカミンスキーはキャスリーン・ケネディから「スケジュールが空いてるんだったらこの仕事、引き受けてくれない?」と声を掛けられたのではないだろうか。

「潜水服は蝶の夢を見る」は兎に角、カミンスキーの映像が圧巻である。映画は脳卒中で倒れた主人公が病院で覚醒する主観ショットから始まる。最初はピンボケで次第に焦点が合ってくる。しかし、人物の顔の右側はピントが合っているのに左半分は合っていなかったり、目がはっきり映っていても口元はぼんやりしていたりする。どうやって撮影したのか全く分からない!映像の魔術師の真骨頂である。瞬きのショットもお見事!

冒頭から数十分間は主観ショットのみで描かれるが、次第に主人公が自分の置かれた立場を理解し回想シーンも盛り込まれるようになると、彼を客観的に捉えたショットが増してくる。このあたりの演出が自然でとても良い。

本作でアカデミー監督賞にノミネートされたジュリアン・シュナーベルはアメリカ人。考えてみれば「潜水服は蝶の夢を見る」のスタッフの多くがハリウッドの映画人である。では何故これはフランス語の映画なのだろう?

その答えは恐らくこれが実話だからだろう。フランス版ELLE誌の編集長だったジャン=ドミニク・ボビーが左目の瞬きの合図で綴った自伝が原作である。この映画に携わった人々は著者に対する畏敬の念から、舞台をアメリカに移したり英語のダイアログで撮ったりしなかったのだと僕は推察する。その心意気たるや、真に天晴れである。

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