ウィーンからの風~浪速のニューイヤー・コンサート
いずみホールでウィーン・リング・アンサンブルによるニューイヤー・コンサートに往った。
ウィーン・リング・アンサンブルはウィーン・フィルのトップ・メンバーで構成される9人編成。コンサートマスターのライナー・キュッヘルを筆頭に、名指揮者カール・ベーム(1894-1981)存命の時代から活躍するウォルフガング・シュルツ(フルート)、ペーター・シュミードル(クラリネット)、ギュンター・ヘーグナー(ホルン)など腕利きの音楽家たちが名を連ねている。
ちなみにライナー・キュッヘルは昨年12月12日にNHK交響楽団の定期演奏会に初登場し、プフィッツナーのヴァイオリン協奏曲を披露した(指揮は下野竜也)。この模様は1月13日(日)のN響アワーで放送される(BS-hiでは1月30日、BS2は2月1日)。余談だがキュッヘル夫人は日本人である。
ウィーン・フィルの弦楽器奏者はなんと楽団所有の楽器を使用するそうである。コンサートマスターだけがストラディヴァリウスなど個人の楽器で演奏することが許されているとか。そうすることで初めて、あのウィーン特有の音を伝承していくことが出来るのだろう。
ウィーン・フィルがウィンナ・ワルツを演奏するとき、独特な訛りがあるのをご存知だろうか?彼らは3拍子を均一な3等分には刻まない。言葉で表現するとズン・チヤッ・チャという感じだろうか。2拍目が長めで、その分3拍目が短いのである。これは他のオーケストラでは真似できない、彼らの独壇場である。また、ウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)でのニューイヤー・コンサートは指揮者をはさんで第1、第2ヴァイオリンが左右で向かいあい、コントラバスがオーケストラ後方正面に陣取って演奏する古典的な対向配置をとる。大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団がベートーヴェンを演奏するときと同じである。
NHKのテレビ中継で観ると楽友協会のニューイヤー・コンサートには和服姿の日本人が目立つが、いずみホールに集った聴衆の中にもちらほら和服姿が見られた。
演奏されたのはシュトラウス一家のワルツ・ポルカを中心にニコライ/「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲、ヘルメスベルガー/妖精の踊り、ツィラー/ポルカ「人生は喜び」、レハール/「メリー・ウィドウ」からワルツ・メドレー など。また第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスの4人だけでランナー/マリアのワルツを演奏してくれ、なんだかウィーン郊外のホイリゲ(居酒屋)でワインを一杯引っ掛けながら音楽を聴いているような愉しい気分を味わった。
ライナー・キュッヘルのヴァイオリンの特徴はウィーンらしく気品に溢れ、薔薇のように香り高い音色でありながら、同時に切れ味鋭く、畳み込むように迫力ある演奏を繰り広げることにある。ウィーン・フィル歴代のコンサートマスターで言えば、ヴィリー・ボスコフスキーやゲルハルト・ヘッツェル(ザルツブルクで登山中に滑落死。音楽家として本能的に手を庇ったため、頭部を強打したという)のような穏やかで優雅なタイプではなく、アルバン・ベルク弦楽四重奏団を結成したギュンター・ビヒラーに近い。非常にモダンなのだ。
今回特に感心したのはウォルフガング・シュルツのフルート。日本のフルート奏者のようにわざとらしいビブラートはかけず、殆どノン・ビブラートで軽やか。音を延ばしたときに微かに揺らいでるかな?程度の絶妙さ。これぞ匠の技!そしてシュミードルのクラリネットの音色は柔らかく円やか。とろけてしまいそう。
ヘーグナーの演奏するウィンナ・ホルンは朴訥で鄙びた音がするので心が和む。ウィンナ・ホルンは高音の倍音を奏でるのが難しくミスをしやすいそうなのだが、ウィーン・フィルだけの専売特許にしておくのは勿体ない気がするなぁ。
アンコールも楽友協会のニューイヤー・コンサートのスタイルを踏襲していた。大阪の聴衆も心得たもので、「ラデッキー行進曲」が始まると手拍子が自然と湧き起こり、中間部の静かなところではピタリと止まった。
名手揃いのウィーン・リング・アンサンブルはウィーンから大阪に新年の薫り届けてくれた。こういう小編成によるウインナ・ワルツも各々のパートが鮮明に聴こえ、新鮮でとても良い。また来年も是非聴きたいと想える演奏会であった。
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コメント
雅哉さま
TBありがとうございました。
私は埼玉県のコンサートを聴きましたが、アンコールの最初の曲が何であるか分からなかったので、こちらを拝見させて頂いて助かりました。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
投稿: ken | 2008年1月13日 (日) 15時06分
kenさま、コメントありがとうございます。
とても愉しいコンサートでしたね。彼らは毎年来日しているようなので、是非来年も聴きたいです。
投稿: 雅哉 | 2008年1月13日 (日) 18時29分