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大フィルによるエルガー未完の交響曲第3番、そしてデュ・プレのことなど

大阪フィルハーモニー交響楽団の定期を聴いた。指揮は尾高忠明さん。

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サラ・チャンが独奏したシベリウス/ヴァイオリン協奏曲については特に書くべきことはない。韓国系アメリカ人の彼女は黒髪が艶やかな美人である。ただ僕は、もっと力強く濁りのない音を奏でる神尾真由子さんのヴァイオリンの方が好きだ。

さてエルガーである。イギリス以外の国で、エルガーやディーリアスの音楽を演奏会で聴く機会は滅多にない。それは日本でも例外ではなく、たまに名曲コンサートで「威風堂々」や「愛の挨拶」「春初めてのカッコーを聴いて」「ブリッグの定期市」等の短い曲が演奏されるくらいであろう。

今回取り上げられたエルガーの交響曲第3番は、総譜が出来上がっていたのは1楽章冒頭部だけで、あとは若干のスケッチが残されたままエルガーは亡くなった。それを補完させたのはイギリスの作曲家アンソニー・ペインで初演されたのは1998年。日本では2004年に尾高忠明/札幌交響楽団が初披露し、今回が国内では2回目の演奏だそうである。

エルガーの曲を一言で表すとしたら?そう聞かれたら僕はnobility(気高さ)とconsolation(慰め)と答えるだろう。慈愛に満ちたその音楽は優しく心に染み渡り、滋味深い。

ペインが補作した交響曲第3番はそのエルガーの特徴がよく出ており、完成度が高かった。むしろ些か冗長な1番や2番よりも、簡潔で耳に馴染み易い印象さえ受けた。もっと演奏されてもいい作品だと想う。これを定期で取り上げる英断を下した大フィル(大植英次 音楽監督)は偉い!

1987年にBBCウェールズ交響楽団首席指揮者に就任した尾高さんは99年に英国エルガー協会から日本人初のエルガー・メダルを授与されたというイギリス音楽のスペシャリストである。オーケストラの機動力を十全に発揮した指揮ぶりで、鳴らすべきところはダイナミックに吼え、歌うべきところはたっぷりと歌うといった具合にメリハリのある解釈だった。オーケストラの健闘ぶりも特筆に価する。(同じ演奏会を聴かれた、ぐすたふさんの感想はこちら

僕がエルガーの作品中、愛して止まないのは弦楽四重奏と弦楽合奏のための「序奏とアレグロ」、そしてチェロ協奏曲である。「序奏とアレグロ」については大阪シンフォニカー交響楽団いずみホール定期の記事で触れた。今回はチェロ協奏曲について語ろう。

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エルガー/チェロ協奏曲の史上最高の名盤は夭折した天才チェリスト;ジャクリーヌ・デュ・プレ&バルビローリ/ロンドン交響楽団の演奏である。これに異を唱える人は誰もいまい。夕映えの美しさに満ちた奇蹟の記録である。これはデュ・プレが20歳の時の録音で、彼女は28歳の時に多発性硬化症という難病に罹りチェロが弾けない状態となってそのまま引退。42歳で死去した。ジャクリーヌ(ジャッキー)はムスティスラフ・ロストロポーヴィチら巨匠に師事したが、ロストロポーヴィチは生涯、エルガーの協奏曲をレコーディングすることは無かった。これは「エルガーを弾かせたらジャッキーには到底敵わない」という想いがあったからだと言われている。ジャッキーが愛用した名器ダヴィドフ・ストラディヴァリウスは彼女の死後、ヨーヨー・マに寄贈された。

ジャッキーはイギリス人だがユダヤ人であるピアニスト・指揮者のダニエル・バレンボイムを愛し、家族の猛反対を押し切ってユダヤ教に改宗してエルサレムで結婚した。彼女が21歳の時である。しかし彼女の発病後、音楽家としての自分のキャリアを守るためにバレンボイムはジャッキーを見捨てた。ジャッキーの最晩年にバレンボイムはパリでピアニストのエレーナ・バシュキロワと同棲生活に入り、既に二人の子をもうけていた(ジャッキーの死後、再婚)。

だから僕はゲオルグ・ショルティの後任としてシカゴ交響楽団の音楽監督にまで登り詰めたバレンボイムの演奏は聴かない。彼の音楽にはがない。

ナチス・ドイツの後遺症から、タブー視され一切演奏されることがなかったワーグナーのオペラをイスラエルで上演して物議を醸したり、パレスチナ人との連帯を表明してイスラエルとの融和を図ろうと運動するなど、最近のバレンボイムは政治的パフォーマンスが目立つ。そんな彼を僕は「胡散臭い野郎め」という白い目で見つめている。

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コメント

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バレンボイムのことについて少し・・・・僕も、この人(音楽は別として)あまりすきではありません。

芸術家はあまり政治的なことに首を突っ込むべきではないと思います。その昔、ナチスドイツで起こったことを教訓とすべきだと。

この人は、どうも「正義の戦争」でもおころうものなら、真っ先にそれを翼賛しかねない危険な匂いがします。

投稿: ぐすたふ | 2008年1月27日 (日) 15時15分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

今年ジョルジュ・プレートルが指揮して好評を博したウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートですが、来年指揮台に立つのはバレンボイムに決定したとの発表がありました。楽団員の選択には衝撃を受けましたが、怖いもの見たさで興味をそそられるのも事実です。さて、どうしましょうか……。

投稿: 雅哉 | 2008年2月 3日 (日) 00時13分

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