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スウィーニー・トッド/狂気のビブラート

ミュージカルなどで登場人物の狂気を表現したいときに、振幅の大きなビブラートで歌わせるという演出法がしばしば用いられる。烈しい音の揺れは耳障りであり、聴く人の神経を逆撫でするので効果的なのだ。

これは以前僕が「ビブラートの悪魔」という記事で書いたように、映画や芝居に悪魔が登場するとき、彼はヴァイオリンを弾きながら現れてビブラートを奏でるのとよく似ている。

宝塚歌劇の最も人気のある演目となったウィーン・ミュージカル「エリザベート」に、王妃エリザベートが精神病院に慰問する場面がある。そこでヴィンディッシュ嬢という、自分がエリザベートだと思いこんでいる患者が登場する。このヴィンディッシュの狂気を示すために、彼女は極端なビブラートで歌う。さらにご丁寧にもヴィンディッシュ登場シーンでソロ・ヴァイオリンがたっぷりビブラートを鳴らすのだ。宝塚星組と宙組でヴィンディッシュ嬢を演じた陵あきのさんの演技は絶品なので、興味のある方は是非DVDでご覧あれ。

今回映画化されたスティーブン・ソンドハイムのミュージカル「スウィーニー・トッド」であるが、主人公の娘ジョアンナは赤ん坊の時から悪役・ターピン判事に囚われ、無理矢理花嫁にされようとしている。昨年上演された宮本亜門 演出による舞台版でジョアンナを演じたのはソニンだったが、彼女は振幅の烈しいビブラートでこれを歌い観客を不安な気持ちにさせることに成功した。つまりこの歌唱法でジョアンナの精神的崩壊を表現していたのである。

ティム・バートンが監督した映画版でもジョアンナだけ極端なビブラートで歌っている。これを聴いた瞬間、僕は「嗚呼、この映画は大成功だ。バートンはソンドハイムの意図をよく分かっている」と確信した。

余談だが、よくオペラ歌手の歌は歌詞が聴き取り辛いということを耳にする。これは日本語に限らず、イタリア人がイタリアオペラを聴いても歌の内容はさっぱり分からないそうである。多分これもビブラートのせいではないかと最近僕は疑っている。

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