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2007年12月25日 (火)

佐渡 裕プロデュース「ヘンゼルとグレーテル」

昨日はクリスマス・イヴ。佐渡 裕 指揮によるフンパーディングのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」を観に、兵庫県立芸術文化センターに往ってきた。

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「ヘンゼルとグレーテル」には魔女の棲むお菓子の館が登場するので、それにちなんで会場には沢山のお菓子が陳列されており、子供たちが熱心に眺めていた。

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このオペラが初演されたのが1893年12月23日。ドイツでは現在でもしばしばクリスマス・シーズンに上演されている。兵庫県立芸術文化センターでの初演は2005年12月23日。2年ぶりの再演で、佐渡さんは今後も2年おきに再演しクリスマスの定番にしたいと考えておられるようだ。

クリスマスらしい愉しい舞台だった。魔女の箒が飛んだり、釜戸から本物の炎が吹き出たりする。少年少女の澄んだ合唱もあれば、子供たちによる可愛らしいバレエもある。物語の終盤ではメルヘンチックなお菓子の家から煙が噴出して、派手に崩壊する見せ場がありこれも面白かった。60人以上の編成による兵庫芸術文化センター管弦楽団の伴奏もお見事。佐渡さんの指揮は起伏に富み、時には激しく恐怖心を煽り、時には美しく官能的で観客を法悦へと誘った。日本語による上演でさらに字幕付きという至れり尽くせりのおもてなし。これだけ充実した公演をA席6,500円という破格な低料金で観られるのだから兵庫県は偉い!

カーテンコールでは佐渡さんがサンタ・クロースの扮装で登場。グレーテルが客席に「みんなで一緒に踊りましょう」と呼びかけて観客が一斉に立ち上がり、一幕のナンバー「踊りましょうよ、お手てつないで」を歌って踊った。会場の子供たちは大はしゃぎ。最後はオケのメンバー全員も舞台に上がった。本当に素敵なクリスマスをありがとう、佐渡さん、そして兵庫芸術文化センターの仲間たち!

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今回「ヘンゼルとグレーテル」を全曲通して聴いて如実に感じられたのはワーグナーからの強い影響である。和声やライトモティーフの用い方が「トリスタンとイゾルデ」(1865年初演)や「ニーベルングの指輪」(1876年初演)などを彷彿とさせる。調べてみると、ドイツ生まれのフンパーディング(1854-1921)は実際にワーグナー(1813-1883)と交流があり、「ジークフリートのラインへの旅」演奏会用校訂譜の編者でもあるそうだ。ワーグナーが「パルシファル」の総譜作成に取り組んでいた時にフンパーディングはバイロイトに引っ越してきて、その作業を手伝ったとか。

ちなみにライトモティーフ(示導動機)とは、現在の映画音楽で言うところの「スター・ウォーズのテーマ」「王女レイアのテーマ」「ヨーダのテーマ」「ダース・ベイダーのマーチ」のようなテーマ(主題)のことである。様々なライトモティーフが複雑に絡み合いながら登場人物たちの感情を紡ぎ、ひとつの大きな楽曲を形成してゆくのである。

ワーグナーが発明したライトモティーフはフンパーディングやR .シュトラウス(楽劇「サロメ」「ばらの騎士」)に受け継がれる。そしてその最後の継承者がウィーンで活躍したエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(1897-1957)である。彼は23歳の時に作曲したオペラ「死の都」(1920年初演)や「ヘリアーネの奇蹟」で時代の寵児となった。しかし、ユダヤ人であった彼はナチス・ドイツによるオーストリア併合で、アメリカへの亡命を余儀なくされる。

ハリウッドに渡ったコルンゴルトは映画音楽作曲家となり、そこにライトモティーフの手法を持ち込んだ。彼は「風雲児アドヴァース」(1936)「ロビン・フッドの冒険」(1938)で2度アカデミー作曲賞を受賞する。そしてコルンゴルトの正統的後継者がジョン・ウイリアムズというわけ。コルンゴルトの大傑作、映画「シー・ホーク」(1940)の音楽を是非聴いて欲しい。「スター・ウォーズ」は「シー・ホーク」の影響下に生まれた作品であることがお分かり頂けるだろう。

お勧めCD

「シー・ホーク~コルンゴルト映画音楽集」 ゲルハルト/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団

「コルンゴルト作品集」 プレビン/ロンドン交響楽団

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