クリスマスの思い出
今回はトルーマン・カポーティ(村上春樹 訳)に敬意を表したタイトルを付けてみた。カポーティの「あるクリスマス」も珠玉の短編小説である。
もうすぐクリスマス。そこで、この季節にぴったりのお勧め映画をご紹介しよう。
まずは定番ロマンティック・コメディから。今年日本で公開されたばかりの出来立てホヤホヤの映画、「ホリデイ」。
詳しい紹介はこちら。エンターテイメント日誌に書いた感想はこちら。
ロマンティック・コメディの女王と言えばメグ・ライアン。そして彼女が最も輝いていたのが「恋人たちの予感」(1989) と「めぐり逢えたら」(1993) である。「恋人たちの予感 When Harry Met Sally」ではメグ・ライアンとビリー・クリスタルがクリスマス・ツリー用の木を買って、ふたりでせっせと家まで運ぶ場面が登場する。マーク・シェイマンがアレンジしたJAZZYな音楽がとっても素敵(シェイマンは後にブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」の作曲によりトニー賞を受賞する)。ハリー・コニック・Jrの歌声も良い。余談だけれど、メグとビリーがそれぞれの自宅で同じ映画を観ながら電話で語り合うエピソードは、倉本聡が書いた「北の国から'92巣立ち」でそっくりそのまま引用されていた。
「めぐり逢えたら Sleepless in Seattle」はクリスマス・イヴからバレンタイン・デーまでの物語。今回のメグのお相手はトム・ハンクス。彼女がエンパイア・ステート・ビルディングのイルミネーションを見て"It's a sign."と呟く場面が僕は最高に好きだ。ナット・キング・コール、ルイ・アームストロング、セリーヌ・ディオンなどの歌がロマンティックなムードを盛り上げる。
「恋人たちの予感」「めぐり逢えたら」に続くシリーズ第3弾が「ユー・ガット・メール You've Got Mail」(1998)なのだけれど、これは実はリメイクで僕はオリジナル版「街角 桃色の店 The Shop Around the Corner」(1940)の方をお勧めしたい。舞台はチェコのプラハ。クリスマスを控え歳末商戦真っ只中の雑貨店で展開される心温まるコメディだ。ジェームズ・スチュワートがいい味出している。これを元にしたミュージカルが「シー・ラブズ・ミー」で、日本でも市村正親さんと涼風真世さん主演で上演された。これも良かった。是非再演を!
さて、ミュージカルでクリスマスといえば、なんと言っても「アニー」でしょう。しかしジョン・ヒューストン監督の映画版(1982)の出来は芳しくない。そこで断然お勧めしたいのが1999年にテレビ映画として製作され、アメリカのABCで放送されたバージョンである。なんと監督・振付はロブ・マーシャル!そう、後に「シカゴ」(2002)で劇場映画に進出し、デビュー作にしてアカデミー作品賞を受賞した天才だ(ちなみにマーシャルは現在ミュージカル映画「ナイン」を準備中)。このテレビ版、アニーを演じるアリシア・モートンが可愛いし、トニー賞を受賞しているアラン・カミング(キャバレー)、オードラ・マクドナルド(ラグタイム、回転木馬)、クリスティン・チェノウェス(君はいい人チャーリー・ブラウン、ウィキッド)らが出演しているのも豪華。キャシー・ベイツ(ミザリー)が歌うのにはびっくりしたが、さすがの貫禄である。さらに劇中、アニーと大富豪ウォーバックス氏がNYにクリスマスのお買い物に往く場面があるのだが、彼らがブロードウェイで観るミュージカルに登場するのがアンドレア・マッカードル。なんと1977年の初演時にアニーを演じていたのが彼女なのだ。ただ残念なことにこの作品、日本ではテレビ放送されたことはあるがDVDやビデオは未発売である。北米版DVDでよければこちらからどうぞ。ただし、日本製DVDプレイヤーでは再生出来ません。パソコンなら可能。
ミュージカル映画からもう一本。ジュディー・ガーランド主演の「若草の頃 Meet Me in St.Louis」(1944)である。古い映画だが、極彩色のテクニカラーが美しい。僕はこの映画を観ていると、ジュディーのカツラが気になって仕方ないのだが、彼女の代表作のひとつであることは間違いない。ジュディは名曲"The Trolley Song"や、今やクリスマスの定番となった"Have Yourself A Merry Little Christmas"を歌う。これが絶品。子役のマーガレット・オブライエンも可愛い。
恋愛やミュージカルなんかかったるい!やっぱ冬でもアクション映画だろう、という男性諸氏には「ダイ・ハード」(1988)。キネマ旬報ベストテンで第1位に輝いた名作である。案外忘れられている事実なんだけれど、これもクリスマスのお話。第1作には若き日のスネイプ先生こと、アラン・リックマンが悪役として大活躍している(彼は来年公開されるジョニー・デップ主演のミュージカル映画「スウィーニー・トッド」で歌声を披露する)。音楽は全編でベートーヴェンの第九が流れるので、年末気分も盛り上がる。そしてエンディングで流れるのはクリスマス・ソング「レット・イット・スノウ」。
クリスマスの飛行場を舞台とした「ダイ・ハード2」(1990)も傑作。監督のレニー・ハーリンはフィンランド出身で、映画のクライマックスでシベリウスの交響詩「フィンランディア」が鳴り響き、大いに盛り上げている。ちなみに、「ダイ・ハード3」は駄作でクリスマスとは関係がない。
さて、クリスマスで忘れてはいけないのが「素晴らしき哉、人生! It's a wounderful Life」(1946)である。未だベトナム戦争の泥沼も体験していないアメリカが、自分たちの正義と善意を信じることが出来た幸福な時代に生まれた珠玉の作品。アメリカ映画協会(AFI)が選出した「アメリカ映画ベスト100」でも堂々第11位に入った。僕はこの映画を観るたびにボロボロ泣いてしまう。ジェームズ・スチュワートとドナ・リードの演じる夫婦愛が麗しく、心が洗われる。監督のフランク・キャプラは「我が家の楽園」(1938)「スミス都へ行く」(1939)など、アメリカン・デモクラシーの理想を高らかに謳い上げる名作を沢山撮った人である。アメリカでは今でも毎年クリスマスに、この映画がTVで放送されるそうである。
最後に映画自体ではなく映画音楽のご紹介を。「ホーム・アローン」(1990)のためにレスリー・ブリッカス(作詞)とジョン・ウイリアムズ(作曲)はとびきり美しいクリスマス・ソングを書いた。それが"Somewhere In My Memory"(サムウェア・イン・マイ・メモリー)と "Star of Bethlehem"(スター・オブ・ベツレヘム) である。20世紀が生んだ最高のクリスマス・ソングと呼んでも、決して過言ではない。是非一度、聴いてみて下さい。
それでは、Happy Merry Christmas !
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コメント
こんばんは。
「ホリデイ」いいですね。
今の時期にぴったりで。
キャメロン・ディアスは「イン・ハー・シューズ」もいい感じです。
久しぶりに映画が見たくなりました(^-^)
投稿: ごいんきょ | 2007年12月15日 (土) 01時07分
ごいんきょ様、コメントいつもありがとうございます。
北米で「ホリデイ」は、ちゃんと12月に公開されたのですが、日本では季節外れの3月公開でとても残念でした。でもDVDなら、ちゃんと季節に合わせて観れますよね!
投稿: 雅哉 | 2007年12月17日 (月) 18時28分