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2007年12月31日 (月)

久石 譲 ジルベスターコンサート2007

久石 譲&関西フィルハーモニー管弦楽団によるジルベスター(ドイツ語で大晦日の意味)コンサートを聴きにザ・シンフォニーホールへ往った。

久石

このコンサートは2006年から始まった。「久石さんと過ごす大晦日も素敵だな。でも、関西フィルは4つの在阪オーケストラの中で一番下手くそだし、それでS席8,000円というのはちょっと高いなぁ……」と迷っていると、瞬く間にチケットは完売してしまった。それが無性に悔しくて、今年は間髪を入れず購入し会場に臨んだ。勿論満席、補助席が出て立ち見もある大盛況だった。

プログラム前半は久石さんが指揮をされ、後半は金 洪才さんがタクトを振り久石さんはピアノを弾かれた。

1曲目はOrbis。ラテン語で”輪””環”といった意味だそうだ。今年25回目を迎えた「サントリ−1万人の第九」のために指揮者の佐渡 裕さんからの依頼で作曲された。2007年12月2日に大阪城ホールで初演されたばかりの出来立てホヤホヤの曲。初演時は1万人の合唱が参加したが、今回はパイプオルガンとフルオーケストラのために書き改められたバージョンでの演奏だった。まるでR.シュトラウスの交響詩を連想させるような華やかな祝祭音楽。久石さんの卓越したオーケストレーションに圧倒された。

2曲目は組曲「マリと子犬の物語」。現在公開中の映画公式サイトはこちら。作曲中に久石さんが飼っていた犬のJOYが弱ってきて、完成後に他界してしまったそうだ。その愛犬への想いが込められたとても美しい曲だった。ピチカートによるテーマがとても可愛らしかった。

3曲目は組曲「太王四神記」。現在NHK BS-hiで放送中のペ・ヨンジュン主演の大作ドラマのために作曲された劇的で壮大な音楽。メインテーマが北野武監督の映画「キッズ・リターン」を彷彿とさせるのはご愛嬌。

休憩を挟んで4曲目はLinks。久石さんは元々、短い音形を執拗に反復するミニマル・ミュージックを書いていた作曲家である(他にスティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス、マイケル・ナイマンらが有名)。そのスタイルで書かれ、8分の15という変拍子が面白い颯爽とした快作だった。

5曲目はオーケストラストーリーズ「となりのトトロ2007」。子供たちのためにオーケストラ入門編としてアニメーションから再構成された音楽で、久石さんはピアノ兼ナレーションも担当された。まずお馴染みの「さんぽ」変奏曲で各々の楽器紹介から始まる。ブリテンの「青少年のための管弦楽入門(ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲)」と同様の趣向。その後は「となりのトトロ」の物語に併せた愉しい音楽劇が続く。いわば現代版「ピーターと狼」(プロコフィエフ)である。いやはや素晴らしい!これぞ今宵のハイライトであった。日本人の作品でこれだけ充実し、高いレベルに到達した音楽を僕は他に知らない。ブリテンやプロコフィエフに些かも劣らぬ、世界に誇れる名曲であった。ブラボー!

北野映画「HANA-BI」の音楽に続いてプログラム最後はTango X.T.C.(タンゴ・エクスタシー)。そう、我が生涯で最も愛する映画「はるか、ノスタルジイ」(大林宣彦 監督)の音楽である。僕のHPのタイトル「はるか、キネマ」もこの映画に由来する。この曲を聴くと、たちまち北海道・小樽の坂道に佇むヒロイン・はるか(石田ひかり)の姿が浮かび上がる。そして僕自身、何度も訪れた小樽の風景が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。こうして久石さんの音楽も、今や僕の血となって全身を循環しているのだということを今回改めて実感した。また、オーケストラ版のアレンジは、後半ビッグバンド・ジャズ風になったりして実に洗練されていた。最高!

アンコールは以下の3曲。

アンコール

「あの夏へ」は宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」の主題曲。この映画が公開された年、僕は仕事の関係で四国の愛媛県新居浜市に棲んでいた。当時、新居浜には映画館がたった1館しかなかった。そこで僕はこれを観た。丁度真夏の花火大会の日であった。映画館の外から盛大な花火の音が聴こえてきた事が今でも鮮明に想い出される。その1年後に新居浜にもシネコン(複合映画館)が出来て、たちまち「千と千尋」を観た映画館は潰れてしまった。そんなことを想い出しながらこの曲を聴いた。

Oriental Windはサントリー「伊右衛門」のCM曲。こちらで試聴出来る。僕にとってこの曲は京都・嵯峨野の竹林を駆け抜ける風のイメージである。そしてそれはサントリー山崎蒸溜所を訪ねた時の記憶とも繋がっている。山崎蒸溜所も直ぐ裏に竹林のある、美しい自然に囲まれた環境にあった。

関西のオケは(実力NO.1の大フィルを含め)総じて金管が弱い。しかし今宵の関西フィルは、作曲家自身が立ち会っている所為かとても気合いが入っており、普段の実力以上の力を発揮していた。その前向きな姿勢は大いに評価したい。

熱狂した観客は歓声を上げ、スタンディングオベーションで久石さんを讃えた。銀のリボンが会場に向けて放出されたりホールの天井から風船が降り注ぐというサプライズもあった。ここでオーケストラの団員は退場したのだが、それでも帰る聴衆は殆どなく拍手は一向に鳴り止まない。そこで久石さんがひとりステージに再び現れピアノ・ソロで弾いて下さったのが「夢の星空」である。やんややんやの大喝采だったことは言うまでもない。正に夢のひと時であった。

風船

今回「ハウルの動く城」〜人生のメリーゴーランドが聴けなかったのが些か残念だったが、それは次回のジルベスターのお楽しみとしよう。そして来年は久石さん、きっと宮崎アニメの新作「崖の上のポニョ」もしてくれますよね!

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