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2007年10月

大阪シンフォニカー「近代音楽へのアプローチ」第2弾

10月17日(水)、大阪シンフォニカー交響楽団のいずみホール定期演奏会に往ってきた。前回の感想はこちら

今回は管楽器の為に書かれた二曲

R・シュトラウス/13管楽器のためのセレナード
ドヴォルザーク/セレナード

と、弦楽のための二曲

ヴェーベルン/弦楽四重奏のための5つの楽章(弦楽合奏版)
エルガー/序奏とアレグロ

が交互に演奏され、最後に両者が一緒になって

ラヴェル/バレエ音楽「マ・メール・ロワ」組曲

を演奏するという、なかなか洒落たプログラム編成であった。いずれも20世紀初頭に作曲された音楽だ。今年のシンフォニカーの定期演奏会(ザ・シンフォニーホール)は、オーソドックスで魅力が乏しいものだったが(来年のラインアップは最高!)、いずみホールでの企画は打って変わってユニークで面白い。

ドヴォルザークの弦楽セレナードは有名だが、木管セレナードもあったということは今回初めて知った。R.シュトラウスは17歳の時の作品だそうだが、これが演奏されるのも非常に珍しい。貴重な体験をさせてもらった。

大阪フィルハーモニー交響楽団の弦楽セクションが優秀なことは有名だが、シンフォニカーの弦も、それに負けず劣らず上質である事を今回改めて認識させられた。特に素晴らしかったのがエルガー。この序奏とアレグロは弦楽合奏と弦楽四重奏が組み合わさったような仕掛けが施された曲で大変美しい。エルガーの曲はあの有名なチェロ協奏曲もそうなのだが、黄昏時の切なさを感じさせる。僕が序奏とアレグロを初めて聴いたのはサー・ジョン・バルビローリ/ロンドン交響楽団のCD。究極の名演で、無人島に持って往きたい一枚である。しかし実演を聴くのは今回初めてで、涙が出そうなくらい感動した。シンフォニカーの楽員のみなさん、素敵な音楽をありがとう。

なお、この序奏とアレグロはケン・ラッセル監督がBBCで製作したドキュメンタリー映画「エルガー/ある作曲家の肖像」でも印象的に使われている。これは大変な名作なので、ディーリアスを主人公とした映画「夏の歌」と併せて、是非ご覧頂きたい。レンタルビデオ屋さんで置いているところもあるだろう。

マ・メール・ロワとはマザー・グース(伝承童謡)のことであり、もともとは子供たちの為に書かれたピアノ連弾曲である。5曲からなる組曲で「眠れる森の美女のパバーヌ」「親指小僧」「パゴダの女王レドロネット」「美女と野獣の対話」「妖精の園」と各々につけられたタイトルが可愛らしい。クラリネットの「美女」と「野獣」を表現するコントラファゴットのやり取りがユーモラスである。考えてみると、この名曲も生演奏で聴くのはこれが初めてであった。

ちなみに全日本吹奏楽コンクールでラヴェルのダフニスとクロエは、現在まで88回演奏されており、2007年の高校の部でも、実に4校が取り上げた。一方、マ・メール・ロワはのべ7回しか演奏されていない。こちらは比較的静謐な曲なので、吹奏楽向けではないのかも知れない。

最後に、この演奏会に出演されたファゴット奏者の方が書かれたブログ、「ふーじーの見た空」をご紹介しておく。こちらからどうぞ。

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曽爾高原のすすき

「すすき」という漢字を知っていますか?辞書を引いてみるととかと書くそうである。う〜ん、なかなか雰囲気が出ている。

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奈良にある曽爾高原に行った。そこには日本一のすすきの草原が見渡す限り広がっている。

すすきヶ原は夕暮れ時が一番美しいと聞いたので、夕日に映えるすすきを狙って往った。

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写真でご覧頂ければ一目瞭然であろう。評判通り圧巻だった。

そして高原の麓のお亀の湯に入って、またびっくり!掛け流しのお湯はもうトロトロ。とにかく泉質が素晴らしい。感動した。

関西に来て約2年半。色々な温泉を訪れたが、今までで最高の泉質だと想ったのは大阪府にある犬鳴山温泉 山乃湯。お亀の湯は十分、山乃湯に太刀打ちできる。広い露天風呂があるのも魅力のひとつ。

曽爾高原ファームガーデンも良い。地ビールも魅力的だし、オリジナルソーセージが美味い。一押しなのが曽爾のトマトでじっくり煮込んだ高原カレー。高原ピザにもトマトがたっぷり入り、生地はサクサク。

読者の方々もすすきが見頃なうちに是非。

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日本テレマン協会/古楽器によるハイドン第2弾!

10月22日(月)に延原武春/テレマン室内管弦楽団・合唱団による、ハイドンのオラトリオ「天地創造」を聴きにいずみホールに往った。

これは以前レポートした、オラトリオ「四季」に続く、日本テレマン協会のクラシカル楽器(古楽器)によるハイドン・シリーズ第2弾である。オラトリオ「四季」の演奏会は「大阪文化祭」に参加しており、なんんと全87団体から選ばれてグランプリに輝いた(詳細はこちら)。それだけ聴き応えのあるものだったということだが、今回の「天地創造」も、それに負けず劣らず素晴らしかった。

古典派の中で、モーツァルトやベートーベンと比較するとハイドンは極めて演奏される機会が少ない。たまに取り上げられても、「告別」「軍隊」「時計」といった、タイトルのついた一部の交響曲だけである。ましてや、独唱や合唱も加わる規模の大きなオラトリオはもっと稀。

バロック・チェリストの鈴木秀美さんがオーケストラ・リベラ・クラシカを結成し、指揮者としてハイドンの初期交響曲を集中的に演奏するようになった当初も、周囲の反応は冷淡だった。鈴木さんを含めて、オーケストラ・メンバーの大半が一度も演奏したことのない曲ばかりだったという。しかしその演奏会シリーズは豊かな実りをもたらし、聴衆にハイドンの魅力を知らしめることとなった。その成果はCDとなって聴くことが出来る。

今回、日本テレマン協会の企画による「四季」と「天地創造」というオラトリオを連続して聴いて感じたことは、ハイドンの無尽蔵の面白さである。ハイドンは曲の中に様々な仕掛けを施している。「天地創造」では鳥の鳴き声や動物の嘶きが聞こえ、川のせせらぎがスケッチされる。そう、それは明らかにベートーベンの交響曲第六番「田園」に繋がっているのである!

ベートーベンはハイドンの弟子だった。そして恐らくベートーベンが生涯をかけて模索したのは、ハイドン的世界の深化だったのではないだろうか?ハイドンの曲を聴けば、ベートーベンがもっと見えてくるのである。

ハイドンの曲は劇的で起伏に富む。そして基本的に明るい。楽天的、いや、能天気と言ってもいい位に。ハイドンの音楽を聴くのは愉しい。心がウキウキする。「天地創造」は演奏時間が2時間くらいの大作だが、非常に新鮮で一瞬たりとも退屈することはなかった。

そしてハイドンは(モーツァルトも!)やはり、作曲者の頭の中に響いていたであろう、当時のクラシカル楽器(古楽器)の鄙びた音で聴くのが良い。ビブラートを鬱陶しいくらい掛けた、モダン奏法によるヴァイオリンの虚飾はいらない。ノンビブラート奏法によるバロック弦は清々しく、素直に耳に入り心地よい。古典派をビブラートで弾くのは20世紀という時代が残した負の遺物である。古典派はノンビブラートで。これこそが21世紀音楽ルネッサンス(古典文化復興運動)なのである。

日本人はまだ、本当のハイドンを知らない。

追伸:延原武春/テレマン室内管弦楽団は来年、クラシカル楽器によるベートーベンの交響曲全曲演奏会に挑戦する。日本では初の試みだ。「荘厳ミサ曲」も取り上げられる。今から非常に愉しみだ。

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犯人に告ぐ

評価:B

映画の公式サイトはこちら

原作は2年前に読んだ。2005年版「このミステリーがすごい!」で8位となり、週刊文春のミステリーベストテンは堂々第1位に輝いた雫井脩介の小説。確かに面白い話だが、些か違和感を覚えたのも事実である。

劇場型犯罪に対して、主人公である特別捜査官の巻島は劇場型捜査に乗り出す。民放のテレビ局に出演し、犯人を挑発するのである。

この設定が、どう考えても現実にあり得ない。仮に捜査官が直接犯人に呼びかけるとしても、民放一社に出演するのはおかしいだろう。公平性を欠く。NHKに出るか、共同記者会見を選ぶ筈だ。この点が最後まで引っ掛かった。

映画版は原作を手際よく2時間にまとめ、なかなか出来が良い。映画というのは基本的に花も実もある絵空事。映像で見ると、原作で気になったところも綺麗さっぱり払拭された。

豊川悦司がアウトローを好演。トヨエツは最近、映画やCMに出まくっている。調べてみると、彼が出演した映画は一昨年、昨年、今年とそれぞれ5本ずつ!いやはや、頑張っているなぁ。どういう心境の変化なんだろう?

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第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 後編

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東京代表 東海大学付属高輪台高等学校 金賞 / 東京都立片倉高等学校 金賞

高輪台は今大会11番目の金賞だった。前半の部で5個金が出て、後半高輪台の直前に演奏した与野高が10個目の金を出した。

僕の坐っていた席の近くに高輪台の保護者の方がいらっしゃって、与野が金と発表された瞬間、「えーっ!」と悲鳴を上げられた。例年だと11個目はないからだ。しかし、引き続いて高輪台の金が読み上げられると、それは安堵のため息に替わった。高輪台は今年初めての3出3金を達成した。そのお母さんが「来年はコンクールに出られないなんて辛いはねぇ」としみじみと仰っていた。

高輪台は荒削りだけれどエネルギッシュな演奏にその特徴がある。そのスタイルは指揮の畠田貴生 先生の風貌によく似合っている。今年の自由曲は「ダフニスとクロエ」。繊細でデリケートな表現を要求される曲だ。ダフニスも勿論良かったが、僕は昨年のハチャトゥリアン/バレエ音楽「ガイーヌ」の方が高輪台というバンドに、より相応しいような気がした。

片倉の自由曲は三善晃/「交響曲三章」より第3楽章。非常に重厚で手堅い演奏で、当たり前のように金を攫っていった。

西関東代表 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 金賞 / 埼玉栄高等学校 金賞 / 埼玉県立与野高等学校 金賞

伊奈学園の響きは柔らかく軽やかである。のび太みたいな風貌の(失礼!)宇畑知樹 先生の穏やかな笑顔にも心が和む。その特質と自由曲のR.シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」組曲との相性がとても良かった。ウィンナ・ワルツのまろやかで優雅な音色に魅了された。課題曲「ブルースカイ」は中間部、弱音器を付けたトランペットの、抑えた音量が絶妙だった!

余談だが、宇畑先生は淀工の丸ちゃん(丸谷明夫 先生)からの招聘で、なにわ<<オーケストラル>>ウインズ2006の指揮台に立たれている。また今年1月、淀工のグリーンコンサートに伊奈学園吹奏楽部がゲストとして招かれ、ショスタコーヴィチ/祝典序曲のバンダを演奏した。

さて、前にも書いたが今年は課題曲IV「ブルースカイ」が大人気で、課題曲 I 「ピッコロ・マーチ」を演奏したのは29校中たった2校である。 僕も「ピッコロ・マーチ」を吹いたことがあるが、なんでこの可愛らしい曲が不人気なのか訳が分からない。埼玉栄はその数少ない課題曲 I を選んだ学校である。 肩の力が抜けた、プロ顔負けの演奏だった。

埼玉栄の魅力は「歌心」にあると僕は考える。しなやかに歌って、そのハーモニーはきわめて美しい。指揮の大滝実 先生は国立音楽大学声楽科を卒業されており、その経歴とバンドの特色は決して無関係ではあるまい。自由曲はマスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より。昨年が歌劇「トゥーランドット」で、かつて埼玉栄が初演して一世を風靡した「ミス・サイゴン」はミュージカル。いずれもに関係している。今回の「カヴァレリア・ルスティカーナ」は後半、生徒たちが本当に歌う場面もあった。その合唱がまた見事だったこと!以前、伊奈学園が「ダフニスとクロエ」を全日本で演奏したときも合唱付きだったが、今年歌ったのは埼玉栄だけだった。実際の歌劇ではテノールが歌うところを、トランペットのソロが舞台裏で演奏する演出も面白かった。全体を通じて、文句のつけようがない完璧な演奏だった。

与野高の自由曲はレスピーギ/交響詩「ローマの祭り」より十月祭、主顕祭。全日本吹奏楽コンクールの定番曲である。これで1982年から26年連続でこの曲を演奏した団体に金賞が出たことになる。正直この曲に僕は飽き飽きしており、与野の演奏は終盤近くだったので疲労困憊して殆ど印象に残らなかった。一生懸命演奏された生徒の皆さん、真摯な態度で聴いてなくて本当にごめんなさい。

東海代表 光ヶ丘女子高等学校(愛知県) 金賞 / 三重県立白子高等学校 銀賞 / 愛知工業大学名電高等学校 銀賞

光ヶ丘女子高はまるでスキップするように弾んだ演奏で、女の子らしい可愛らしさがあってとっても素敵だった。制服姿も○。自由曲は課題曲「饗応夫人」の作曲家としても有名な田村文生 編曲によるリスト/バッハの主題による幻想曲とフーガ。もともとはB-A-C-Hの音列を基にしたピアノ曲で、まず曲そのものが良かった。そして魔法に満ちた編曲を彼女たちは見事に音として再現した。

白子校がステージに上がったとき、一瞬ここは女子高か?とびっくりした。チューバの生徒は楽器に隠れて顔が見えなかったのだけれど、その他の楽器は女の子ばかりだった(吹奏楽部の公式サイトはこちら)。

昨年、埼玉栄が全国大会初演した後藤洋 編曲によるプッチーニ/歌劇「トゥーランドット」は今年も大流行で、実に6校もの中学・高校が演奏した。しかし白子高の「トゥーランドット」は珍しくも鈴木英史 編曲版だった。鈴木さんは「小鳥売り」「メリー・ウィドウ」「微笑みの国」「こうもり」などオペレッタの編曲シリーズで絶大な人気を誇る方だが、正直今回の「トゥーランドット」の編曲は流れが途切れ途切れで成功しているとは想えない。僕は断然、後藤版に軍配を上げる。

名電の自由曲は「中国の不思議な役人」。指はよく回っていたと想うが、同じ曲を磐城が圧倒的名演で披露した後だけに分が悪かった。名電は3年連続銀賞だったが、昨年の全日本マーチングコンテストでは金賞を受賞している。今年のマーチングにも期待したい。

中国代表 広島国際学院高等学校 銅賞 / 鈴峯女子中学・高等学校(広島県) 銅賞 / 出雲北稜高等学校(島根県) 銅賞

僕は岡山県岡山市生まれなのだが、中国地区代表校が全国区では全く太刀打ち出来ていない現状を目の当たりにして、大いに落胆した。今回初めて普門館に来て痛切に感じたのは、吹奏楽の実力に地域格差が大きいことである。やっぱり都会のレベルは高い。そんな中で、北海道地区や東北地区は非常に健闘していると想う。わが古里の高校生たちも頑張れ!

四国代表 愛媛県立北条高等学校 銀賞 / 高知県立高知西高等学校 銅賞

四国地区は昨年まで7年連続銅賞のみ受賞という不名誉な記録を更新していたが、今年はそれを払拭した。僕は高知西高の銅賞はミス・ジャッジだと断言したい。彼らが自由曲に選んだのはマッキー/レッドライン・タンゴ。ワルター・ビーラー記念作曲賞(2004年)、ABAオストワルド作曲賞(2005年)を受賞した現代アメリカを代表する曲で非常に面白かった。プログレッシブ(先鋭的)ジャズ・ロックみたいで格好良い。高知西高の演奏もアクセントが効いてリズムに乗っていた。想うにここが不当な評価をされたのは、審査員が殆どクラシック系の人達ばかりで、曲の面白さを理解してもらえなかったからではないだろうか?高知西高の生徒の皆さん、君達は輝いていた。結果は気にせず、普門館での自分たちの演奏に誇りを持って欲しい。

九州代表 精華女子高等学校(福岡県) 金賞 / 福岡工業大学付属城東高等学校 金賞 / 福岡県立嘉穂高等学校 銀賞 

精華女子はマーチングの華。特に第25回マーチングバンド・バトントワリング大会で披露した「ムソルグスキーの風」のパフォーマンスは忘れがたい。今回、彼女たちが自由曲に選んだのは全国大会初お披露目となるスパークの傑作「宇宙の音楽」。関西地区大会では京都の名門・洛南高等学校もこれを取り上げたのだが、まさかの銀賞で敗退している。精華は若さ溢れる力強い演奏で、特にホルンの咆哮が凄まじかった!クライマックスでの打楽器の連打も大迫力。圧巻だった。また、準備が整ってステージが明るくなったとき生徒全員が笑顔だったのも好印象。淀工もそうだけれど、日頃からマーチングで鍛えているところは「自分たちの見せ方」をわきまえているなぁと感心した。また曲想に合わせて、体を揺らせるのがぴったり揃っていたのもお見事。良く歌っていました。

福工大付は昨年度まで屋比久勲 先生(中学校教諭時代、沖縄に初めて金賞をもたらした偉大な指導者。なにわ<<オーケストラル>>ウインズ2004にも登場)が率いていたが、その屋比久先生がこの3月で退官され、鹿児島情報高等学校に赴任されてしまった。これで福工大付の命運も尽きたかと想われたが、今年もキッチリと結果を残した。とにかく後任の武田邦彦 先生の指揮が素晴らしかった。テンポは早めで、音楽が滑らかに流れる。メリハリがあって非常に推進力のある演奏だった。お見事!ちなみに自由曲は後藤版「トゥーランドット」だった。

九州地区(沖縄県を含む)と言っても、代表三校は全て福岡県だった。ここでも都会集中型の傾向が伺われる。来年あたり、そろそろ鹿児島情報高が頭角を現してくるだろうか?そちらも非常に愉しみである。

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最後に表彰式の話をしよう。結果発表の前に指揮者全員が順番に表彰されるセレモニーがある。この時に会場から生徒たちが、せーので「…先生、大好き!」と掛け声を上げたりして微笑ましかった。大阪桐蔭は「梅田先生、めっちゃ好き!」と地方色を出していた。宮城県泉館山高は「細倉先生、ありがとう!」だった。きっとそれは「私たちを普門館まで連れて来て下さってありがとう」という意味も含まれているんだろうな。しかし、淀工はこの掛け声はなかった。おそらく丸ちゃんが照れて、生徒にするなと事前に厳命していたんだろう。こんな所にも、それぞれの学校の特徴が出て面白かった。

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第55回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 前編

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今回、吹奏楽コンクール高校の部を前半・後半通して聴いたのだが、朝9時から午後6時過ぎまでぶっ通しだとさすがに疲れた。各12分の持ち時間で、29校演奏したのだから、実質6時間近く音楽漬けだった事になる。

それに課題曲は4曲しかないのでそれを繰り返し聴き続けることになる。特に今年は課題曲IV マーチ「ブルースカイ」が大人気で29校中、実に14校がこれを選んでいた。

前半の部・後半の部と審査員は交代しない。だから審査員の皆さんも僕と同じ体験をされたわけだ。ご苦労様である。

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さて、個々の感想に移ろう。色々考えたが、各支部ごとに分けて書くことにした。このブログを訪問してくださる方は淀工ファンが多いので、やはりここから始めなければならないだろう。

関西代表 大阪府立淀川工科高等学校 金賞

21回目(10回連続)の金賞受賞おめでとう!その全てを指揮したのは丸谷明夫 先生(丸ちゃん)である。自由曲は4回目となるラヴェル/「ダフニスとクロエ」。実は今回の星組(コンクール・メンバー)でダフニスを聴くのは6月のサマーコンサート以来、2度目である。事前に2003年の全日本における完璧で神がかった演奏をDVDで鑑賞していたので、サマコンの時点ではまだまだだなという感想だった。正直、「今年のメンバーで大丈夫だろうか…」という一抹の不安さえあった。しかし、さすが丸ちゃんである。4ヵ月後にはきっちり仕上げてきた。生徒たちの血の滲むような努力にも惜しまぬ拍手を送りたい。

淀工サウンドの素晴らしさは、ppの美しさにあると断言しよう。アマチュア・バンドの落とし穴は音を奏でることの面白さに目が眩んで、鳴らし過ぎることにある。だからpやppで十分音を落とすことが出来ず、平板な演奏になってしまう。また、どうしても下手な演奏は弱音でピッチが揃わずハーモニーが濁る。

淀工ではそれがない。ffからppまでダイナミクスの幅が非常に広く、縦と横がぴったり合っている。曖昧なところが皆無で各声部がきわめて明瞭に聴こえる。さらに丸ちゃんの指揮は緩急も自在で引き締まっている。もう、文句なしの金賞だった。

そうそう、それから最初演奏の準備が整ってステージのライトが照らされたとき、淀工生全員が背筋を伸ばし胸を張って客席の方を真っ直ぐ向いていたのはびっくりした。おまけに彼らは笑みを浮かべていた。その雄姿が眩しかった!ここまで堂々とした態度は他校では見られなかった。

丁度一週間前に大阪では御堂筋パレードがあったのだが、星組も全員パレードに参加したようだ。どこよりも沢山練習をしているという自負がそのまま態度に結びつき、演奏にも現れるのだろう。

明浄学院高等学校 金賞

明浄は大阪市内にある女子高で、6回目の全国大会出場である。

自由曲は中橋愛生/科戸の鵲巣(しなとのじゃくそう)。昨年、春日部共栄高校と創価学会関西吹奏楽団が全国大会で披露し、観客の度肝を抜いて共に金賞に輝いた難曲である。

明浄の演奏もそれに引けをとらず、素晴らしいの一言であった。響きは細部まで磨かれ透明度が高い。非常に明晰でピッチもよく合っている。

成績発表で表彰台に立った生徒が泣いていた。初の金賞受賞おめでとう!そして感動をありがとう。

大阪桐蔭高等学校 銀賞

甲子園で優勝したこともある野球部が有名な私立高校である。吹奏楽部は創部わずか2年で全国大会に出場し、銀賞を受賞した。初登場の昨年に引き続き2年連続出場である。

ステージが明るくなってまず驚いたのは、ハープ2台とコントラバス3台が、それぞれ純白の専用台に乗っていたことである!私立校で弦バスに台があるのはしばしば見かけるが、ハープは珍しい。

自由曲はドビュッシー/「海」〜風と海との対話。確かに上手で正確緻密な演奏である。でもそれだけ、という印象は拭い去れなかった。何かが足りない。その「何か」とは僕の頭の中に具体的言葉があるが、相手は素人の高校生なのでここでは明言を避けたい。

北海道代表 北海道旭川商業高等学校 銀賞 / 北海道札幌白石高等学校 銀賞

北海道は常連の東海大四高が今年は3出休みであった。旭川商の自由曲は「ダフニスとクロエ」第2組曲より。ダフニスの吹奏楽版は編曲者が異なっても<夜明け、全員の踊り>が選ばれることが多いのだが、旭川は指揮者の佐藤淳 先生ご自身による編曲で<パントマイム、全員の踊り>という組み合わせだった。<パントマイム>はフルートの上手さが光っていた。全体も音がよく出ていたし、縦が揃っていた。ラヴェル特有の半音階の美しさが際立っていた。惜しくも銀賞だったが、金賞に値する演奏だったと想う。

札幌白石は公立の高校で、1990-94には全国大会で5年連続金賞を受賞したそうだ(その後3出1休の規定が出来た)。今回の自由曲はフェルラン/交響曲第2番「キリストの受難」より。吹奏楽オリジナル曲で珍しかった。

東北代表 福島県立磐城高等学校 金賞 / 福島県立湯本高等学校 銀賞 / 宮城県泉館山高等学校 銅賞

磐城の課題曲「ブルースカイ」は他校と全く異なり、激しく力強いマーチに仕上がっており瞠目した。そしてそのスタイルは、自由曲であるバルトーク/「中国の不思議な役人」にもそのまま受け継がれた。猛々しく、原始的パワーに満ちたバルトーク。圧巻だった。あと、男子生徒が学ランだったのが曲の雰囲気にも合っていて印象的だった。

湯本の自由曲は三善晃/管弦楽のための協奏曲。編曲は磐城の指揮をされている根本直人 先生。この曲を今まで全国大会で演奏しているのは全て東北代表校らしいのだが、どうしてなんだろう?三善晃さんは東京都生まれで東北とは縁もゆかりもない筈なのだが。演奏は大変上手く、細部まで明快に響いた。迫力もあり、金賞でも良かったんじゃないかな。

泉館山の自由曲は真島俊夫/鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺〜。昨年アンサンブルリベルテ吹奏楽団が全国大会で初披露した吹奏楽オリジナル作品で、僕の大好きな曲だ。またこれはフランスで開催された国際作曲コンクールでグランプリを受賞している。ちなみに真島さんは、淀工お得意の「カーペンターズ・フォーエバー」の編曲者でもある。さて泉館山の演奏の方だが、勢いはあったのだが細部に些か粗が見受けられたのが残念だった。

北陸代表 富山県立富山商業高等学校 銀賞 / 福島県立武生東高等学校 銅賞

富山商業の自由曲は長生淳/千載万葉の雪。同校の委嘱作品である。オーケストラ作品の編曲を自由曲に選ぶ学校が主流の昨今、吹奏楽オリジナル作品を積極的に取り上げる姿勢は高く評価したい。

武生東の自由曲はプロコフィエフ/バレエ音楽「シンデレラ」より。同じ編曲者でこの曲を広島国際学院も取り上げていたが、どちらも銅賞だった。正直言って、曲自体が魅力に乏しいなぁという印象。いや、プロコフィエフ自体は割と好きなんだけれど。バレエ音楽「ロミオとジュリエット」なんか起伏に富んでるし。それに比べると「シンデレラ」は平板なんだなぁ。

東関東代表 船橋市立船橋高等学校(千葉県) 銀賞 / 作新学院高等学校(栃木県) 銀賞 / 横浜創英中学・高等学校 銅賞

東関東は昨年に比べると、どうも低調という感が否めなかった。今年は御三家が揃って三出休みの年だったので、その影響が大きかったのかも。

さて、今回はここまで。関西を除く東京以西は次回のおたのしみに。

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普門館へ!

10月21日(日)、全日本吹奏楽コンクール高校の部(前半および後半)を聴きに東京・普門館に往ってきた。

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個々の演奏の感想については現在、鋭意執筆中である。しかし時間が掛かりそうなので、しばし待たれよ。そこで今回はその前座と言うべきか周辺事情などについて語りたいと想う。

全日本吹奏楽コンクールは1940年、大阪朝日会館で産声を上げた。その後戦争による中断を経て、今回第55回目の開催となる。普門館で初めてコンクールが行われたのは1972年の第20回大会。その後普門館は吹奏楽の甲子園と呼ばれ、コンクールに参加する者達の憧れの的となった。

普門館は在家仏教教団「立正佼成会」の所有するホールである。定員4,702名。東京国際フォーラムA(5,012席)と並ぶ国内最大級のキャパシティを誇る(ちなみに大阪にも大阪普門館というのがある)。かの有名な東京佼成ウインドオーケストラも立正佼成会が組織したプロの吹奏楽団である。

普門館へのアクセスは東京駅から丸の内線に乗り、新宿を通過して中野坂上駅で乗り換える。そして方南町で降り、そこから徒歩で約7分。

コンクール当日の朝、中野坂上駅で乗り換えた瞬間、地下鉄の雰囲気ががらりと変わったことに驚いた。まず、乗客の平均年齢が10歳以上若返った。そして車内の熱気が全然違う。体感温度にして2℃は上昇しただろう。「遂に吹奏楽の甲子園にやって来たんだ!」という実感がじわじわと湧き、興奮で身震いした。

普門館周囲は閑静な住宅街でコンビニとかレストランはない。前半の部を聴き終えて、後半は観客が総入れ替えとなるので、その間隙を縫って昼食をとるため駆け足で方南町に戻った。そこで美味しいと評判の「支那そば りょうたん亭」で名物ワンタンメンに舌鼓を打った。

カウンターだけの店内は直に満席になった。ご主人が「昨日は暇だったのに、今日は何故か盛況で」と、しきりと首を傾げていた。

ここで知らない方もいらっしゃると想うので、コンクールのルールについて簡単に書いておこう。県・地区大会はA部門とB部門に分かれていて、全国大会に進めるのはA部門のみである。高校A部門の場合、出場できる人数は50人までである。

課題曲と自由曲があり課題曲で選べるのは5曲。うち課題曲Vは大学・職場・一般の部のみ選択できるので、中高生は課題曲IVまでということになる。また毎年、朝日作曲賞受賞曲が課題曲 I となるのが慣例である。来年からルールが変わるが、今年までは隔年で「マーチの年」と「非マーチの年」があって、今年の課題曲は全てマーチであった。

課題曲と自由曲併せて演奏時間は12分以内。それを超えると失格となる。だから自由曲は短いものが好まれる傾向がある。そして金賞・銀賞・銅賞のいずれかで評価される。失格しない限り、はずれはない。

また、全日本吹奏楽コンクール(全国大会)に3年連続出場した団体は表彰され、その翌年は出場出来ない。これを一般に「3出休み」と呼ぶ。常連校ばかりが普門館を独占することを避けるためのルールであるが、お休みの年に当たった生徒たちは非常に気の毒である。だからこの3出休みの年は生徒のモチベーションを下げないために、先生達は様々な工夫をしてご苦労されている。例えば今年お休みだった、東海大学付属第四高等学校(北海道)・春日部共栄高等学校(埼玉県)・鹿児島県立松陽高等学校の3校は埼玉会館で3出記念の合同演奏会を開催している(そのレポートは、ブログほのぼのメモ書きさんの所に書かれているので、ご参照までに)。

昨年は高校では最多となる20回金賞を受賞している淀工(大阪府立淀川工科高等学校)がお休みだった。そのために関西代表の3校が金賞全滅という悲惨な結果に終わった。

東関東支部には柏市立柏高等学校(市柏)、常総学院高等学校、習志野市立習志野高等学校の御三家と呼ばれる吹奏楽名門校がある。いずれも2001年以降、全国大会で4回金賞を受賞している。しかし今年はこの御三家がそろってお休みの年であった。そして東関東代表3校はいずれも金賞を獲れなかった。

このように、どの団体がお休みの年に当たるかで、各支部のレベルが左右される。なかなかデリケートである。

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デ=メイ/大阪市音楽団「プラネット・アース」

吹奏楽の金字塔とも称される交響曲第一番「指輪物語」(同じトールキンの小説を基にしているが、映画「ロード・オブ・ザ・リング」とは全く別物)で一世を風靡したオランダの作曲家、ヨハン・デ=メイが大阪市音楽団の第94回定期演奏会に登場し、自作自演したことは大きな話題となった。演奏会が開催されたのは今年の6月8日金曜日。その場に僕も立ち会っていたのだが、このブログには書いていなかった。この度、10月24日にこのライブCDが発売されるということで、その体験談を書いておこうという気になった次第である。

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デ=メイさんは非常に背が高く人なつっこい笑顔の紳士で、指揮する姿は颯爽としていた。大阪市音楽団(市音)も卓越したテクニックを駆使して明晰で緻密な名演を展開した。

まず演奏されたのは短い「ウィンディ・シティ」序曲。ウィンディ・シティとはシカゴのニックネーム。大都会に対する賛歌である。僕は20世紀アメリカを代表する作曲家・コープランドの「クワイエット・シティ(静かな都市)」を連想した。

お次の「エクストリーム・メイク・オーヴァー」は~チャイコフスキーの主題による変容~という副題がついている。弦楽四重奏曲第一番の第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」の主題(サクソフォン四重奏で演奏される)を素材として書かれた曲。途中チャイコフスキーが書いたほかの楽曲からも旋律が引用される。

この曲で特に面白かったのは中盤。各々異なる高さに水が入れられた瓶が10本用意されており、木管奏者たちがそれに口を当てて吹くと、様々な音程で摩訶不思議なハーモニーが生まれるのである!そしてそれに途中からマリンバのソロが加わる。非常にユニークで演奏効果が高い曲だった。ブログ「ほのぼのメモ書き」さんによると、これはアンサンブルリベルテ吹奏楽団が今年全日本吹奏楽コンクールの自由曲として取り上げるそうである。

そしてなんと言っても今回の目玉はデ=メイの新作、交響曲第三番「プラネット・アース」であろう。大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団も演奏に加わった。

6声部の女性コーラスとオーケストラで終わるホルストの組曲「惑星」を踏襲したスタイルで開始され、「惑星」で描かれなかった地球をテーマにした作品である。

第1楽章は”ロンリー・プラネット”。ビッグ・バンを表現した楽曲。会場に多数設置されたスピーカーから派手な爆発音が発せられ、続いて彗星が飛び交う効果音が迫力のあるサラウンドで客席を包み込む。デ=メイは吹奏楽用に「スター・ウォーズ・サーガ」という編曲も手がけており、ジョン・ウィリアムズを彷彿とさせる輝かしい金管がホールに響き渡り、格調高いスペース・シンフォニーが展開された。

第2楽章は”プラネット・アース”。地球の蒼穹を自由自在に飛ぶ鳥たちの鳴き声が聴こえ、生命の躍動感に満ちた楽章。

第3楽章”マザー・アース”ではホメロスが作詞した”ガイア(大地の女神)への賛歌”が高らかに歌われ、壮大なクライマックスを築く。

全曲で50分近い大作で、おまけに合唱も加わるからこれをアマチュア・バンドが演奏会で取り上げるのは殆ど不可能だろう。しかし、ただ聴く分にはド派手で密度の濃い音楽なので、充実したひと時を過ごすことが出来た。

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ザ・シンフォニーホール開館25周年記念ガラ・コンサート

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ザ・シンフォニーホール開館25周年を記念し、縁のあるアーティストが一同に集結するガラ(祝祭)コンサートが2日間にわたり行われた。

その2日目、10月14日(日)に往ったのだが13時から御堂筋パレードを見て、その足で15時からのガラに駆けつけるというハード・スケジュールであった。

出演者は井上道義(指揮)、千住真理子(ヴァイオリン)、大岩千穂(ソプラノ)、佐野成宏(テノール)、及川浩治(ピアノ)、ジェームズ・ゴールウェイ(フルート)、そして大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:梅沢和人 )という豪華メンバー。チケットは早々に完売し、補助席や立ち見もあった。

プログラム最初はワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。ザ・シンフォニーホールのこけら落とし公演で、朝比奈 隆が大フィルを振って最初に演奏されたのがこの曲である。これはまた、今年の大阪クラシックでオープニングを飾った。

気宇壮大な演奏だった。井上さんは指揮棒なしで振られた(プログラム最後の「ローマの松」は指揮棒あり。曲によって使い分けておられるようだった)。

今回一番詰まらなかったのが千住真理子さんの演奏。とにかく音が濁って汚い!これは千住さんの弾き方に問題があるのだろう。

千住さんの愛器はストラディヴァリウスの中でも黄金期に製作され幻の名器と呼ばれた「デュランティ」。日本画家の千住博、作曲家の千住明ら兄弟の協力もあリ多額の借金をして手に入れたものだそうだ。

チャイコフスキー国際コンクールで優勝した諏訪内晶子さんが使用しているストラディヴァリウス「ドルフィン」はかつて巨匠ヤッシャ・ハイフェッツが使用していたもので、日本音楽財団から貸与されている。

また、今年チャイコフスキー国際コンクールで優勝した神尾真由子さんの使用しているストラディヴァリウスは以前、ヨーゼフ・ヨアヒム(ブラームスがヴァイオリン協奏曲を献呈した人)が所有していたもので、2001年(まだ彼女が15歳の時!)にサントリー財団より貸与された。

今回千住さんの演奏を聴いて感じたのは、結局パガニーニ国際コンクール4位の実力に過ぎないなということだ(ちなみに同コンクールで優勝した庄司紗矢香さんは日本音楽財団より貸与されたストラディヴァリウス「ヨアヒム」を使用している)。

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ガラの話に戻ろう。続いてヴェルディの歌劇「椿姫」から抜粋。テノールの佐野さんの輝かしい美声が圧巻!佐野さんを始めて聴いたのが大フィルの定期、ベルディ/レクイエム。それに聴き惚れたのが今回ガラ2日目を選んだ最大の理由である。期待に違わぬ素晴らしさだった。

休憩をはさんで及川さんが登場してリスト/ピアノ協奏曲。以前、映像や音声で接した及川さんの演奏はミス・タッチが目立ち、タメが多くテンポも一定しないので余り好きなピアニストではなかった。

しかし、実際生で聴くと少々荒っぽいが大変な熱演だった。及川さんの動作は激しくて見ていて可笑しい。足は踏み鳴らすは唸り声は派手に聞こえるはで、おまけに弾いている途中に左右の腕を垂直に高く挙げるパフォーマンスには唖然とした。及川さんって爆演系の人だったんだ。言い換えるならエンターテイナー。ステージの出入の時はきょろきょろして落ち着きがないことこの上ない。「なんて過剰な人なんだ!」と今回非常に好感を抱いた。

お次はジェームズ・ゴールウェイのフルート。ゴールウェイはカラヤン時代のベルリン・フィルで首席奏者を務めていた。彼の音は華麗でよく響く。フルートってこれだけの音量が出るんだと驚かされるくらいである。

まずモーツァルトのフルート協奏曲。フラウト・トラヴェルソ(バロック・フルート)による古楽演奏の素朴な音に聴きなれると、ゴールウェイによるモダン楽器の性能を駆使した色彩豊かなモーツァルトは全く別物だなという印象が強い。モーツァルトの頭の中に響いていた音楽とはかけ離れているだろうが、こういうのもアリだなと想った。

夫人と共演による「トルコ行進曲」を経てヘンリー・マンシーニ作曲によるメドレー。映画「ピンク・パンサー」や「グレート・レース」などの明るく賑やかな音楽は、これぞゴールウェイの独壇場。「ハタリ」〜小象の行進はフルートではなく縦笛に持ち替えての演奏。途中客席に「ヘンリー!」という合いの手を求めて、なかなか愉しいひと時だった。

とにかく盛り沢山で、入場料(A席8000円)の元は十分取らせてもらった。満ち足りた気分で帰途についたのであった。

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淀工 IN 御堂筋パレード2007 

10月14日、日曜日。大阪名物、第25回御堂筋パレードに往った。今年は御堂筋完成70周年記念のパレードであった。

午後1時。風船が舞い、花火が打ち上げられてスタート。まず府警の交通機動隊、警察音楽隊が先陣を切る。カラーガード隊が彩りを添える。

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続いて古代交流船や雅楽隊が通過。

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そして、いよいよ淀工(大阪府立淀川工科高等学校吹奏楽部)の登場である。

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演奏されたのは「大阪ラプソディー」と「道頓堀行進曲」。マーチングの制服姿が格好良い。

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淀工はちょうど一週間後に普門館で行われる全日本吹奏楽コンクールに出場するが、そのメンバーもこの御堂筋パレードに参加していたようだ。さすが、王者の風格である。

ちなみに淀工は、マーチング・コンテストでも全国大会出場が決まったが、そこではこの格好はしない。ジャージ姿(体操服?)での出場である。それは全日本吹奏楽連盟の規定のなかに「過度な演出や華美な服装を求めてはいません」という一文があるためと想われる。

この規定は恐らく、マーチングについては後発である日本吹連が、老舗の日本マーチングバンド・バトントワーリング協会に対抗するためのアンチテーゼなのだろう。でも僕個人の意見としては、マーチングは衣装が華やかな方が愉しいけれどな。

さて、話を御堂筋パレードに戻そう。大阪市立高等学校 バトン・吹奏楽連盟がやって来た。

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「平和への願い」号では歌とバレエで表現された。

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「復興の足跡」と題されたパレードでは京都橘高等学校吹奏楽部・バトン部が登場。

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はっぴ姿が可愛い。

「大阪パワー全開」で四條畷学園高等学校が登場。そして「大阪万博」のコーナーは、お待ちかね!箕面自由学園高等学校チアリーダー部(GOLDEN BEARS)・吹奏楽部の出番である。

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高校生のチアでは全国一のGOLDEN BEARSは、御堂筋の路上でもクルクルと軽やかに宙に舞った。度肝を抜かれた観客が「おおっ~」と、どよめく。

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さらに「御堂筋パレード開始」のコーナーで大阪学芸高校吹奏楽部が続く。

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そして、「翔びたて世界へ」でトリを飾るのは向陽台高等学校ウインドバンド。

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向陽台は軍隊式に規律正しいバンドで、非常に動きがきびきびしている。多少堅苦しい印象もないではないが、見ていて清々しい。

ちなみに今年のマーチング・コンテストでは淀工と京都橘、向陽台に加えて滝川第二高等学校が関西代表として選ばれた。こちらの全国大会も愉しみである。でも、服装規定がなぁ……。

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サウスバウンド

評価:C+

2006年本屋大賞で1位に輝いたのはリリー・フランキーの「東京タワー」だが、この時、投票で2位だったのが奥田英朗の「サウスバウンド」である。

奥田英朗の文章は軽妙で読みやすい。僕は直木賞を受賞した「空中ブランコ」を含む伊良部先生シリーズが大好きだし、「ガール」も愉しんで読んだ。破天荒なオヤジが主人公の小説「サウスバウンド」も傑作である。

さてその映画版だが、原作を上手く調理して2時間にまとめた手腕は見事である。ただし、どうしてもダイジェストになっている感は否めないので原作の方が断然面白いのも確かだ。

映画は特に前半の東京篇が退屈だった。森田芳光はデビューして間もない「の・ようなもの」「家族ゲーム」(キネ旬ベストテン第1位)「それから」(同じく1位)の頃は非常に斬新な映像表現で天才的だなぁと感心したが、どうも最近は凡庸な監督に成り下がったと失望させられることが多い。

しかし後半の、西表島篇になると俄然調子が上がり、画面も生き生きしてきた。東京篇では極力空を映さず閉塞感を観客に抱かせ、後半で広がる青い空を見せて開放感を感じさせるというのは恐らく今回の演出プランだったのだろうと想われる。

元過激派でアナーキスト(無政府主義者)の父親を演じた豊川悦司と、かつて「お茶の水のジャンヌダルク」と呼ばれた母親役の天海祐希が好演。子役たちも良かった。

ところで劇中に父親の友人から無農薬野菜が送られてきて、それを母が「お父さんにはこういう友達が多いのよねぇ」と言うエピソードがあるのだが、それを観ながら、かつて学生運動に参加していた加藤登紀子が激しい恋に落ちた「反帝全学連」委員長・藤本敏夫のことを想い出した(加藤のドキュメンタリー番組で僕はこのエピソードを知った)。

藤本は防衛庁襲撃事件などで逮捕され拘留中に加藤と獄中結婚した。「ひとり寝の子守歌」は、塀の中にいる夫を思って作られた、加藤登紀子の代表曲である。また、宮崎 駿監督の「の豚」のエンディングで歌われる加藤の「時には昔の話を」は、歌詞を注意深く聞けば学生運動で共に戦った仲間たちを懐かしんだ歌だということが分かるだろう(だからムッソリーニ率いるファシスト党から追われている"豚"はアカいのだ)。前述した番組では刑務所から出所した藤本が農業を始めたことも紹介されていた。

今回、興味を持ったので調べてみると、藤本は農業の理想を追求し、有機農業を普及させるために1976年に「大地を守る会」の会長に就任したということを知った。藤本自身は2002年に肝臓癌で亡くなったが、驚いたことにこの「大地を守る会」は今でも続いていることも判明した。

成る程、「サウスバウンド」はこういう歴史的背景を踏まえた上での作品なのだなぁと、その奥深さに感心した次第である。

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パンズ・ラビリンス

評価:B+

映画の詳しい情報はこちら。米アカデミー賞では撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を受賞している。またメキシコ代表としてアカデミー外国語映画賞にもノミネートされた。

残酷で、全編が絶望感に彩られたファンタジー。映像美に満ち溢れ掛け値なしの傑作であるが、評価がAに至らなかったのは好みの問題だ。

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舞台はフランコ独裁政権時代、内戦状態のスペイン。ファシズムが席巻する世界で、空想の中でしか自由に羽ばたけない孤独な少女の物語である。

少女の母親(妊娠中)の再婚相手、ヴィダル大尉は残忍なファシストなのだが、その人物描写が余りにも類型的で深みに欠ける。彼の人間的側面が描かれていれば、もっと恐怖感が出たと想うのだが。

少女が迷宮で最初に獲得するアイテム、はレジスタンスが襲撃する食料庫の鍵であり、2番目のアイテム、はヴィダル大尉を刺す剣。そして最後に流されるは自由を勝ち得るために必要な犠牲という具合に、ファンタジーと現実世界が絶妙にシンクロしている。つまり少女の見た夢はレジスタンスの夢と重なり合うのだ。

ギレルモ・デル・トロ監督はアメリカン・コミックと宮崎駿・大友克洋・手塚治虫など日本の漫画やアニメが大好きで、多大な影響を受けたそうだ。そう彼が告白しているという記事をこちらのサイトで見つけた。また、ヒロインを演じたイバナ・バケロのインタビューによると、彼女は撮影前に監督から「風の谷のナウシカ」のコミック本を貰ったそうである。

例えば、映画の冒頭、自動車から降りたヒロインが、石像を見つける場面は「千と千尋の神隠し」そっくりだし、彼女が巨大蛙の口に手を突っ込んで鍵を取り出す場面は「千と千尋」で千尋が川の神様の口の中から自転車を取り出す場面を彷彿とさせる。

僕がこの映画を観ている間中、これは何かに世界観がそっくりだなぁと感じていた。観終わった直後に思い当たった。そうだ!手塚治虫の短編アニメ「人魚」(「手塚治虫実験アニメーション作品集」DVDに収録、上映時間8分)だ。

「人魚」は空想を禁じられている架空の国が舞台である。ひとりの少年が助けた魚が、少年の目の前で人魚に変身する。しかし周りの大人達にはそれは単なる魚にしか見えない。やがて少年の背後にファシストの影が忍び寄り、彼は逮捕され拷問に掛けられ、強制的に想像力を奪われていく。物語の最後で絶望した少年は自ら、海の中へと歩み去ってゆく。そこでは嬉しそうな人魚が飛び跳ねながら彼を迎え入れるのであった。

「パンズ・ラビリンス」は、この「人魚」に触発された作品なのではなかろうかと考えている内に、両者を結びつける決定的事柄に気が付いた。「人魚」全編に流れる音楽はドビュッシー作曲「牧神の午後への前奏曲」である。あっ!牧神とは何を隠そう、ずばりパンのことではないか! フルートの美しくも、物悲しい旋律はパンの笛を表現している。だからこそ、「パンズ・ラビリンス」で少女を迷宮に導く役割をパンが務めているのではなかろうか?

最後にハビエル・ナバレテの音楽が素晴らしいことを特記しておく。今年のアカデミー作曲賞は「バベル」が受賞したが、こっちでも良かったんじゃないかな。

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民族と楽器

名ヴァイオリニストと呼ばれる音楽家は圧倒的にユダヤ人が多い。

フリッツ・クライスラー、ヤッシャ・ハイフェッツ、ダヴィッド・オイストラフ、ヘンリク・シェリング、ユーディ・メニューイン、アイザック・スターン、イツァーク・パールマン、ピンカス・ズーカーマン、ギドン・クレーメル、ギル・シャハム、マキシム・ヴェンゲーロフ、etc.

枚挙にいとまがない。そしてこれらヴァイオリニストの出身地は様々である。オーストリア生まれ、ロシア生まれ、イスラエル生まれ、アメリカ合衆国、……。これはもう、民族の血としか言う他ないだろう。

ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」はロシアに住むユダヤ人一家の物語であり、物悲しいヴァイオリンの旋律が全編を通じて象徴的に流れる。

画家マルク・シャガールは帝政ロシア生まれのユダヤ人である。シャガールの絵にしばしばヴァイオリン弾きが登場することは皆さんもよくご存知のことであろう。ユダヤ民族とヴァイオリンには切っても切り離せない結びつきがある。

ところが、面白いことに有名なチェリストとなるとユダヤ人の占有率は極端に低下する。直に名前が思い浮かぶのはミッシャ・マイスキーくらいか。パブロ・カザルスはスペイン人(カタルーニャ地方)だし、先日亡くなったロストロボーヴィチも違う(アゼルヴァイジャン、旧ソヴィエト連邦)。ジャクリーヌ・デュ・プレはイギリス人でヨーヨー・マは台湾系アメリカ人(パリ生まれ)だ。

実は何故か日本人もヴァイオリンが得意で、日本はクラシック界で「弦の国」と呼ばれている。

14歳の時レナード・バーンスタインと共演し、その記事がニューヨーク・タイムズ1面トップをかざった五嶋みどりを筆頭に、チャイコフスキー国際コンクールで1位に輝いた諏訪内晶子と神尾真由子、そしてパガニーニ国際ヴァイオリンコンクール1位の庄司紗矢香など錚々たる音楽家を世に送り出している。

世界的オーケストラにも日本人奏者は多い。ベルリン・フィルには第1コンサートマスターの安永 徹を筆頭に3人の日本人が在籍しているし、古楽オーケストラを見ても、18世紀オーケストラのヴァイオリニスト若松夏美、ラ・プティット・バンドのコンサートマスターである寺神戸 亮、そして両楽団のチェリストとして活躍した鈴木秀美がいる。

ところがこれが弦楽器に限られているというところが面白い。どうも日本人は管楽器や打楽器は苦手なのだ。世界的に著名な管楽器奏者と言えばケルン放送交響楽団のオーボエ奏者として活躍した宮本文昭くらいしか思い浮かばない(オケ以外ならサクソフォンの須川展也がいる)。

視点をアジア全体に向けても有名なのはピアニスト(Pf)か弦楽奏者だけなんだよね。

韓国ならチョン・キョンファ(Vn)、弟のチョン・ミョンフン(Pfと指揮)、サラ・チャン(Vn)、中国はラン・ラン(Pf)、ユンディ・リ(Pf)、台湾がヨーヨー・マ、そしてベトナムがダン・タイ・ソン(Pf)。

逆にルイ・アームストロング、マイルス・デイヴィス、ウィントン・マルサリスなどの名トランペッター、そしてチャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンなどの名サクソフォン・プレイヤーを輩出している黒人(アフリカ系アメリカ人)はからきし弦楽器が駄目である。

木管楽器のフルートに目を向けるとこれはフランス人と(フランス語圏の)スイス人の独壇場だ。

マルセル・モイーズ、ジャン・ピエール=ランパル、マテュー・デュフォー(シカゴ交響楽団首席奏者)はフランス人、オーレル・ニコレやエマニエル・パユ(ベルリン・フィル首席奏者)はスイス人である。

これは現代フルートのキーシステム=ベーム式が開発されたのがフランスであることと無関係ではあるまい。だからフルートの前身である古楽器フラウト・トラヴェルソの名手になると突如としてフランス人は消えるのである。大御所のバルトルド・クイケンはベルギー生まれだし、有田正広さんはもちろん日本人。日本人がトラヴェルソを得意とするのは古来より横笛を吹いてきた歴史と関係があるのかも知れない。

民族と楽器の関係……なかなか、奥深いものがあると想いませんか?

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桂 米朝 一門会

落語を生で聴くのは上方落語競演会が初体験だった。これがとても愉しかったので、今回は桂 米朝さんの一門会に足を運んだ。

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桂 二乗「牛ほめ」:新築祝いで普請を褒める噺。これは上方落語と江戸落語では内容やサゲ(落ち)も異なるようだ。本来は家をほめた後、最後に牛をほめる挿話があるのだが、二乗さんはその手前でサゲた。開口一番(前座)という役割で、持ち時間15分と厳命されたそうなので、端折ったのかも知れない。

桂 都んぼ「替り目」:落語の序列で言うと二つ目に当たるのだろうか?都んぼさんは酔っ払いの表現が上手くてとても可笑しかった。

桂 小米朝「掛け取り」:借金取り撃退法の話。小米朝さんはクラシック音楽が大好きで、自ら「モーツァルトの生まれ変わり」と名乗っている。それをネタにして様々な作曲家の名前を入れた駄洒落を畳み掛けるように展開し、さすがだなと感心した。ただ、一般の人に”バルトーク”とかは難しかったかも。また冒頭で、来年秋に五代目桂 米團治を襲名されることが、ご本人の口から発表された。

桂 ざこば「狸の化寺」:ざこばさんの落語は前回も想ったのだが、噺の途中でお囃子を効果音に使ったりして実にダイナミックで面白い。ざこばさんがもうちょっと活舌が良くて、吃音がなければ真の名人になれただろうに……。でも僕は、そんなざこばさんの落語が大好きだ。

桂 米朝「よもやま噺」:人間国宝の米朝さんは前回聴いた上方落語競演会と噺が全く一緒だった。同じ噺を繰り返しそうになると間髪を容れず、息子の小米朝さんとざこばさんが助っ人に現れるという状況も似ていた。つまり……、まあそういうことだ。それにしてもざこばさんって本当に良い人だなぁ。ざこばさんは小学生の時、お父さんが亡くなり、中学生の時に米朝師匠の落語を聴いて感銘を受け卒業と同時に入門されたそうである。1963年のことだった。だから師匠との付き合いは半世紀近く。本当の父親よりも絆が強いのだろう。

桂 南光「はてなの茶碗」:トリの南光さんは30分以上の長い噺をされた。200年という長い年月を経て磨き上げられてきた噺は、完成度が高く味わい深い。落語の醍醐味を堪能した。

今度は是非、上方落語のメッカ、天満天神繁昌亭にも往ってみたいなぁと想った次第である。

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博多ラーメン 一蘭

たまには食のエンターテイメントの話もしよう。

地元の人の評価は知らぬが、部外者の立場で見れば博多ラーメンの代表選手といえば断然博多一風堂一蘭であろう。

僕が中国・四国地方に住んでいた時は、本当に美味しい博多ラーメンを食べることなど夢のまた夢であった(どうやら現在では博多一風堂の岡山店や松山店が出来たらしい)。

大阪に来てさすがに都会だなぁと感嘆したのは博多一風堂の長堀店や梅田店があったことである(現在ではなんば店、堀江店と増殖中)。

しかし実は、僕が好きなのは博多一風堂よりも一蘭の方だった。ところが一蘭は大阪に店舗がない。一蘭は昔から東京には進出しており、例えばJR渋谷駅からタワーレコード渋谷店に向かう道すがらに支店があるので、東京に遊びに行った時はしばしば立ち寄って「嗚呼、旨いなぁ」と涙を流しながら舌鼓を打ったものである。そして「東京に出店しながら、何故大阪にはないのか!」と憤りを感じていた。

そして遂に待望の、いや、悲願の一蘭大阪進出を耳にしたのは今年9月初旬のことであった。ところが待ち望んでいたのは僕だけではなかったらしく、オープンと同時に100人行列が出来たとか、2時間待ちとか、土日は整理券が200枚以上配布されたとか、想像を絶する話ばかり耳にしてたじろいだ。

という訳でオープンから一ヶ月が経過した。そろそろほとぼりもさめた頃だろうと見計らい、客が少なそうな平日の夕刻を狙って一蘭道頓堀店を攻めた。

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案の定、すんなりと店内に入ることが出来てラーメンにありついた。

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旨かったことは言うまでもない。長年の切実な願いがようやく天に届いたという感慨がひとしおである。

博多もつ鍋の蟻月(ありづき)、そして博多水炊きの華味鳥(はなみどり)も大阪進出を果たし、博多の名店が出揃った印象がある。もう一生、福岡に足を運ばなくても心穏やかに日々暮らしていけそうだ。

余談 北は北海道旭川から南は九州の熊本まで、「ここは旨い!」と評判のラーメンを食べ歩いてきたが、僕が日本一だと確信しているラーメン店は広島県尾道市の朱華園である。小説「火宅の人」で有名な最後の無頼派・檀一雄(1912-1976)がこの店のことをエッセイに書き、映画「時をかける少女」(1983)の撮影中に原田知世も来店したという逸話が後世に語り継がれている。

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エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜

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評価:A

ピアフの歌も試聴出来る映画の公式サイトはこちら

この映画が好きか嫌いかは差し置いて、とにかく凄いものを観た。それが率直な感想である。

なんと言っても圧巻なのは女優マリオン・コティヤールである。エディット・ピアフの魂が乗り移った、そう表現するしかない。全身全霊を込めた壮絶な演技。最早僕に出来ることは、彼女の前にただひれ伏すのみである。これは未曾有の体験だ。

僕はこの映画を観ながら、ずっと「風と共に去りぬ」でスカーレット・オハラを演じた、ヴィヴィアン・リーのことを想い出していた。どんな大女優でも、これだけの役を演じるチャンスは一生に一度訪れるかどうか。一期一会、女優冥利に尽きると言わねばなるまい。

これが英語の映画なら彼女は間違いなくアカデミー主演女優賞を受賞するだろう。フランス映画というハンディはあるが、少なくともアカデミー賞ノミネートは確実。イタリア語を喋ってオスカーを受賞した「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニの前例もあるから受賞も不可能ではない。

作品自体の出来も素晴らしい。現在と過去が複雑に交差する語り口なので、時系列がバラバラで分かりにくいという欠点は確かにあるが、これはドキュメンタリー・タッチを目指したものではない。むしろ記憶の曖昧さ、人の感情の流れに寄り添った映画なのである。

ネタバレになるので詳しいことは書けないが、ピアフの人生の転機となる、ある重要な場面をワン・シーン、ワン・カットで撮った手法には唸らされた。さらにヴォイス・トレーニングを受けた後に彼女が大劇場デビューを果たす場面で、敢えてピアフの歌声を使わずに映像だけで勝負した演出も見事だった。

撮影監督が日本人の永田鉄男(「大停電の夜に」)であることも特記しておきたい。

最後に、このブログをお読みの貴方に謹んで申し上げる。

四の五の言わずとにかく観ろ!

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宮川彬良/大阪フィル・ポップス・コンサート

これは宮川彬良とアンサンブルベガ、そして宮川彬良&大阪市音楽Dahhhhhhn!の記事とあわせてお読みいただけると良いだろう。

関西で八面六臂の大活躍をする宮川彬良が音楽監督を務める大阪フィル・ポップスの演奏会に往った。会場はザ・シンフォニーホールである。

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ポップス・オーケストラの代表選手はアーサー・フィードラーが指揮したボストン・ポップス・オーケストラだろう。「シンコペイテッド・クロック」「そりすべり」「ブルー・タンゴ」等でおなじみのルロイ・アンダーソンはボストン・ポップスの座付き作曲家とも言うべき存在で、その多くをこのコンビが初演している。フィードラー亡き後、1980年〜1993年まで常任指揮者を勤めたのが映画音楽の巨匠、ジョン・ウイリアムズである。来日公演もあり、ジョンの大ファンである僕は当時棲んでいた岡山から大阪フェスティバルホールまで馳せ参じた。

ボストン・ポップスはアメリカの名門、ボストン交響楽団を母体とする。オフシーズンである夏に首席奏者らがソロ活動などのために抜け、残りのメンバーで編成されている。佐渡裕率いる兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)もPAC POPSというコンサートを展開しているが、ここもボストン・ポップス方式を採用している。先日PAC POPSを聴きに往ったのだが、首席奏者たちは不在だった。

ボストン・ポップスに対抗して1980年代に台頭してきたのがエリック・カンゼル率いるシンシナティ・ポップス管弦楽団である。ここはシンシナティ交響楽団の別名であるが、首席奏者は抜けない。だから上手い。

大阪フィル・ポップスはこのシンシナティと同じ方式である。コンサートマスターは長原幸太さんだし、各パートの首席奏者も揃い踏み。今年4月の定期あたりから第2ヴァイオリンのトップを務めている特別客演奏者:佐久間聡一さんもいた(佐久間さんは大阪クラシックでも大活躍だったが、いつになったら大フィルの正式団員になられるのだろう??)。

現時点で大阪フィル・ポップスの実力は、老舗ボストン・ポップスを凌駕しているのではなかろうか?それくらい充実した内容の演奏会であった。

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今回のテーマは「夏から秋への手紙」。まずは定番、アキラ作曲「ザ・シンフォニック・パラダイス」で華麗に始まり、サティの「ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しいの)」が演奏された。全ての曲はアキラが編曲している。この「ジュ・トゥ・ヴ」はアキラが吹奏楽用に編曲したバージョンもあり先日の大阪市音楽団との演奏会で披露されたが、オーケストラ版は全く雰囲気が異なるアレンジで、アキラの才能の豊かさに改めて驚嘆した。

吹奏楽版はバート・バカラック(カーペンターズ「遥かなる影」)風の味付けがされている。管弦楽版は秋らしく浪漫的。アキラ弾くピアノがサティで、オーケストラがその恋人の役割を担当し、両者が囁き合っているような雰囲気を醸し出していた。Oh, ビューティフル!

お次がブラームス/交響曲第三番の3楽章。映画「さよならをもう一度」で使用された楽曲。もともとオーケストラの曲をアキラがさらにピアノとオーケストラ用にアレンジ。その無駄にゴージャス(Too Much)なところが良い。本来この憂愁を湛えた主旋律はチェロが演奏するのだが、アキラは意表をついてヴァイオリンに弾かせた。ウン、その発想の転換が面白い。

秋なのに、何故か暑苦しい「燃えよドラゴン!」「荒野の七人」が続いた。アキラ曰く、

「夏にこんな曲を聴くのはたまりませんよねぇ。涼しくなった今だからこそ、夏を回想しましょう」

要するに、何でもありということだ。「燃えよドラゴン!」では首席奏者、近藤浩志さんがチェロで「アチョー」というブルース・リーの掛け声を声帯模写(弦音模写?)されたのが可笑しかった。近藤さんはアキラ率いるアンサンブル・ベガのメンバーでもあり、アキラとはあ・うんの呼吸である。

そして「ひき潮」とビートルズの「イエロー・サブマリン」。秋には何故か海の風景がよく似合う。「イエロー・サブマリン」はピッコロ・トランペットがフィーチャー(feature)され、秋月孝之さんが名人芸を披露された。ヘンデルの「水上の音楽」を彷彿とさせるバロックな響きのあるアレンジで、洒落ていた。

後半冒頭はクラリネットの首席、金井信之さんの卓越したテクニックを堪能できる「クラリネット・ポルカ」。道上洋三さんが長年パーソナリティーを勤める朝日放送のラジオ番組テーマ曲。大阪フィル・ポップスを始めた当初は観客が席数の半分くらいしか入らず、アキラは何度もこの番組に出演し、宣伝させて貰ったそうである。それがどうだろう。今ではチケットはすぐに完売。補助席も出る人気ぶりである。

そうそう、このコンサートで第2クラリネットを担当していた田本摂理さんのことを話さなければならない。田本さんは大フィルの正式メンバーだが、驚いたことに先日放送された「N響ほっとコンサート」に田本さんらしき人物を発見!トラ(客演)としてわざわざ大阪から参加されたのだろうか?「ほっとコンサート」は昨年、NHK交響楽団が有史以来初めて吹奏楽を演奏したということで話題になったその第2弾である(公演日は8月5日)。実はこれ、金井信之さんが仕掛け人であるなにわ<<オーケストラル>>ウインズへの対抗意識むき出しの企画だと巷では囁かれている。やっぱり管楽器奏者はプロになっても吹奏楽をやりたいんだね。

話が横道に逸れた。後半のプログラムで特に印象的だったのは「砂山」。なんだかお祭りの音楽みたいな勢いのある編曲になっていて新鮮だった。

最後は「ディズニー・シンフォニック・パレード!」。秋とどう関係があるのか全く不明だが、いいのさ!愉しければ。フィナーレらしく賑やかで、大いに盛り上がった。

アンコールは以下の通り。

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大阪フィル・ポップスは年2回定期的に演奏会を開いている。次回は4月。未体験の方は是非どうぞ。天才アキラのひらめきと大フィルの底力に圧倒されること請負である。

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