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20世紀の調性音楽〜ガンバ/大フィル 定期

ラモン・ガンバ/大阪フィルハーモニー交響楽団 による定期演奏会を聴きに往った。

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20世紀に生まれた4つの作品が演奏され、そのいずれもが調性音楽であるというプログラム構成が見事であった。

20世紀にクラシック音楽(本当はクラシック古典的という意味なので変なのだが、純音楽という呼び方も嫌らしいし…)が袋小路に入り、聴衆からそっぽを向かれたのは、シェーンベルクが発明した十二音技法から発展して多くの作曲家たちが無調性へと驀進したせいだと僕は考えている。それは進化ではなく音楽の破壊行為だった。一体今、ペンデレツキやべリオ、ブーレーズの書いた雑音(音楽とはあえて呼ばない)を好んで聴く人がどれだけいるだろう?クラシック音楽にとって20世紀は草木も生えぬ不毛な時代だった。

そんな中で調性音楽を守ろうとした、例えばウィーン生まれのエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルドなどは時代遅れの烙印を押され、失意のうちにハリウッドに去り映画音楽作曲家になった(「ロビン・フッドの冒険」でアカデミー賞を受賞)。「三文オペラ」で有名になったドイツのクルト・ワイルはブロードウェイに渡りミュージカルの作曲家になった。

このようにして20世紀にクラシック音楽は衰退し、替わって映画音楽やミュージカルが華やかな黄金時代を迎えるのである。人々は漸くその過ちに気付き、現在調性音楽の復権が次第に進みつつある。

さて演奏会の話である。まずはアダムスの「首席は踊る」。最小単位の音の変化を執拗に繰り返すミニマル・ミュージックの手法で書かれている。スティーブ・ライヒやフィリップ・グラスの作品を彷彿とさせる面白い曲だった。ミニマル・ミュージックというのは単調な繰り返しを聴いているうちに感覚が麻痺してきて、次第にそれが快感となってくるのだから不思議だ。音の麻薬効果と言い換えても良いかも知れない。宮崎駿監督のアニメーションで有名な、久石譲さんもミニマル・ミュージック語法をしばしば映画の中に取り込んでいる。

続いてコープランド作曲、20世紀に生まれた最高のクラリネット協奏曲。レナード・バーンスタインや「スターウォーズ」「ハリー・ポッター」のジョン・ウイリアムズもコープランドから多大な影響を受けている。この協奏曲はジャズ奏者ベニー・グッドマンのために書かれた。伴奏は弦楽器とピアノとハープのみ。指揮者の目の前にピアノとハープが配置され、一見異様な風景だった。

独奏のマーティン・フロストはスウェーデン生まれのカリスマ的若手クラリネット奏者で、右足を前に出した姿勢がスタイリッシュ。時折コンサートマスター長原幸太さんのほうに身を乗り出して音楽で対話しているようでもあり、素敵だった。特に弱音のコントロールが見事で、まろやかな美音を奏でていた。

アンコールでフロストは「ベニー・グッドマンに捧げます」と言って、自作の「カデンツァ」を披露してくれた。鳴り止まぬ拍手に突如、彼は歩きながらバッハの「平均率」を吹き始めた。それに乗って秋津さんと近藤さんのチェロがグノーの「アベマリア」の旋律を弾き始める。さらに長原さんと梅沢さんのヴァイオリン、そして第2ヴァイオリンとヴィオラのふたりも加わり、妙なるハーモニーがホールに広がっていく。なかなか粋な演出だった。

演奏会後半最初はブリテンの「ソワレ・ミュージカル」。ロッシーニのパロディで、ストラヴィンスキーの新古典主義作品を彷彿とさせるような明快な曲だった。秋月さんのトランペットが光っていた。

ラモン・ガンバはまるで指揮台の上で踊っているかのように生気に満ち溢れていた。そして、このコンサートのハイライトはなんと言ってもレスピーギの「ローマの祭」だろう。この近代オーケストレーションの語法を極めたド派手な交響詩を大フィルは余すところなく表現して見せた。僕は大植さんの「悲愴」の時に彼らが火の玉となって燃え上がったと表現したが、今回の「ローマの祭」では大爆発を起こした。爆演と言えばしばしばアンサンブルが乱れて空中分解することを指すこともあるが、今回は良い意味で一糸乱れぬ爆演だった。いいぞ、大フィル!その調子でイケイケ!たまにはシンフォニカーに浮気したりもするけれど、これからも皆さんを応援してますからね。

大満足の一夜だった。帰りに秋月さんとか長原さんがタキシード姿のままロビーに立って、にこやかに聴衆の見送りをされていたのには驚いた。ヴィオラの岩井さんとかは時々見かけていたが、コンサートマスターがわざわざ出てこられたのには初めて遭遇した。「星空コンサート」や「大阪クラシック」などを経て、楽員たちの意識も次第に変わりつつあるのかもしれない。素晴らしいことである。

ついでに厚かましいお願いだけれど、開演前のロビーコンサートも企画して頂けると嬉しいなぁ。

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