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2007年9月 2日 (日)

続・21世紀のベートーヴェン像

これは「21世紀のベートーヴェン像」と併せて読んでいただけるとありがたい。

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団による、ベートーヴェン・チクルス第2弾を聴きに往った。演奏されたのは交響曲第四番、五番、六番。

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大植さんがザ・シンフォニーホールに登場するのは4月の定期演奏会以来である。本来は6月の定期も大植さんが指揮するはずだったが、まさかのハプニング。その顛末については「誰もいない指揮台」に書いた。

大植さんが登場し、盛大な拍手を浴びて深くお辞儀をする。……なかなか頭を上げない。恐らく6月のお詫びの意味を込めた一礼だったに違いない。

四番と六番「田園」は前日ボッセ/紀尾井シンフォニエッタ東京の演奏で聴いたばかりである。大植さんは第一、第二ヴァイオリンが前方左右で向かい合う対向配置をとるので、お互いが音楽の中で対話していることがよく分かり、それはとても良かったと想う。

ただ、両者を比べると、ボッセさんのテンポの方が明らかに軽快で、より若々しいベートーヴェンであった。それに対し大植さんはいささか鈍重な印象を抱いた。40名強の紀尾井シンフォニエッタ東京に対して約80名という大編成の大フィルはいささか機動力に欠けた

ボッセさんの第四交響曲を僕は疾風怒濤と表したが、舞い踊っているようでもあり、それは後の第七番を連想させた。一方、大植さんの場合、しなやかなベートーヴェン像だった。そしてその印象は「運命」「田園」でも同様だった。しかし大植さんの第四はテンポの問題もあり、残念ながら最後まで舞踏的雰囲気を感じさせてはくれなかった。

大植さんがベートーヴェンの指揮をするときは指揮棒を持たない。これは古楽器オーケストラの指揮者達も同様のスタイルである。実はベートーヴェンに時代に指揮棒を用いるという慣習はなかった。指揮棒を初めて導入し、40人程度が常識だったオーケストラの規模を現在の形まで拡大したのはメンデルスゾーンだと言われている。

対向配置を取り入れ、楽譜は最新の研究成果に基づくベーレンライター版を用い、そして指揮棒を用いないなど、大植さんはベートーヴェンが生きていた時代の演奏スタイルに一部では忠実であろうとしている。ところが一方で、ロマン派の時代に歪められたオーケストラの規模を正そうとはせず、初演当時ビブラート奏法は行われていなかったことが判明した現在でもなお、ピリオド奏法(ノンビブラート)を採用しようとはしない。そのあたり、どうしても中途半端という印象をぬぐい去ることは出来ず、僕は四番や六番を聴きながら違和感を感じ続けた。

しかし、「運命」は掛け値なしの名演であった。たたみ掛けるリズム、迸る生命力。特に第4楽章は運命に打ち勝った者の歓喜の歌を輝かしく奏で、圧倒的推進力をもってコーダへとなだれ込む。

ベートーヴェン・チクルスを2夜体験して、聴き応えがあったのは一番、二番、そして五番。その他の交響曲の解釈には多々疑問を感じた。

さて、お次は”ダンス・ミュージック”である第七番と軽やかな”小交響曲”である第八番だ。さて大植さん、今度はどんなベートーヴェン像を提供してくれるのだろう?

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コメント

昔から,大フィルはどちらかというと偶数番号に弱いという傾向がありますよね。
たたみかけるような或いはこれでもかこれでもか!というような奇数番号系はめっぽう強いし,その中でも5番が圧倒的だろうと思います。
でも,更に凄い楽団は,偶数番号もすばらしい演奏をしますので,大フィルにも目指していって欲しいですよね。

次回はダンスミュージックの7番ですが,今回の演奏会で思ったことは,案外,4番というのは7番の系列なんだなあということかも。
4番をちょいと視点を変えて発展させると,7番につながるのかなあなんて感じました。
次回,それを再確認できるか,やはり違うと思えるのか,楽しみにしています!
なお,コメントありがとうございました!

投稿: ojiyan | 2007年9月 3日 (月) 01時16分

トラックバック、ありがとうございました。

ご指摘のように、テンポ設定、という点では、「エロイカ」までとは一線を画してましたね。どちらかというと、20世紀の後半で「普通」「中庸」とされていたテンポだったと思います。

ただ、今ラトルの全集を聴き直しているのですが、ラトルも同じくエロイカまでは快速系である一方、4番からは戻っているんですよ。6番など、かなり遅いテンポで朗々と歌う感じ・・・・大植さんと同じ傾向ですね。

7番は一度聴いていますから、次は、8番がどうなるかに興味が集中しますね。

投稿: ぐすたふ | 2007年9月 3日 (月) 08時55分

ojiyanさん、ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

第四交響曲と第七の親和性は僕も最近になって強く感じるようになりました。これも集中的にベートーベンを聴く機会があるおかげだと感謝しています。

ところで来年は日本テレマン協会が延原武春さん指揮でピリオド楽器によるベートーベン交響曲全曲演奏会を企画しているようです。恐らく大阪初なのでは?楽しみですね。

ラトルの「田園」は聴いたことがありません。興味深いご指摘です。

投稿: 雅哉 | 2007年9月 3日 (月) 10時47分

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