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大阪市庁舎に響き渡る「新世界より」〜大阪クラシック2007《最終日》

9月8日土曜日。いよいよ大阪クラシックも大詰めだ。

まず第7公演:三菱東京UFJ銀行でイベール/木管五重奏曲のための3つの小品、プーランク/六重奏曲 を聴く。

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いゃ〜、いいねぇ。軽妙洒脱。朝日の差し込む部屋、カフェ・オ・レの香りを愉しみながらクロックムッシュを食べる。そんな状況下で、こういう洗練されたフランス音楽を聴いたら最高だろうなぁ、などど夢想する。普段滅多に演奏されない曲を聴ける、これも大阪クラシックの魅力である。

プーランクと言えば、彼のピアノ協奏曲はラフマニノフと並んで20世紀最高の名曲であると僕は信じて疑わない。是非大フィルの定期でも取り上げて欲しい。ついでに言えば、20世紀最高のヴァイオリン協奏曲は、ウィーン生まれで後にハリウッドで活躍した作曲家コルンゴルドのね(ヤシャ・ハイフェッツが初演)。これも大フィルで聴きたいな。ソリストは大植さんと親しいヒラリー・ハーンではどうだろう?彼女の伴奏で大植さんはドイツ・グラモフォンにデビューを果たしている。

閑話休題。ただ、今回のプーランクで残念だったのは電子ピアノだったことと(会場が銀行だから仕方ないが)、奏者の技量にばらつきがあったことである。

クラリネットのブルックス・トーン君とファゴットの畦内雅人さんは大フィルの首席奏者なので見事なものだった。フルートの南部靖佳さんも上手かった。しかしトラ(阪神タイガースじゃありません、エキストラ)のオーボエとホルンは少々力量が劣るように聴こえた。最終公演「新世界より」が間近だったので、それに出演する大フィルのメンバーたちはリハーサルの都合上こちらに参加することが出来なかったのだろう。室内楽はバランスが重要だなということを痛感した。

アンコール曲、「ハッピーバースデー変奏曲( HAPPY BIRTHDAY TO YOU - Theme and Variations )」は愉快なアレンジ( W.R.Brophy編 )でとても良かった。

さて、銀行を後にし、大阪クラシック最終公演のある大阪市役所シティホールへと向かう。開演までまだ1時間半くらいあるが、既に100人くらいの人々が並んでいる。

暫くすると場内に入れてくれた。中にはスターバックスコーヒーの屋台が入っており、店員さんたちがにこやかにアイスコーヒーを無料で配ってくれた。とってもありがたい。今回の大阪クラシック、スタバの貢献度は非常に高い。感謝しています。……でもね、正直言うともう来年からはスタバの店内でコンサートをして欲しくないんだよね。余りにも凄い数の聴衆が押し寄せるので、最早スタバの店内では狭すぎる。

新聞報道によると今年大阪クラシックを聴きに来た人々は延べ約2万8千人。昨年を6千人も上回ったそうである。無料で気軽にというのが基本的なコンセプトだが、今年の印象ではむしろ有料公演の方が席を確保出来るので安心だった。500円くらい安いものだからもっと有料公演を増やして欲しいくらいだけれど、なかなかそうもいかないんだろうなぁ。

シティホールには所狭しとパイプ椅子が置かれていた。昨年の大阪クラシックでは、報道写真を見ると最終公演に立ち見客を入れていたようだったが、今年は一切そういうことはしていなかった。2階は報道関係者用に空けられていたが、あそこに立ち見を入れてあげればいいのにと想った。

新聞によるとチケットを持ってこの会場に入れた聴衆はたった530人だったそうである!前売りが即日完売もむべなるかな。大阪市主催だから市役所で幕を閉じるという意義は分かる。しかし、これを聴きたい人は沢山いるのだから、もっと収容人数の大きいところですればいいのに。例えばシティホールでは開会式をすることにしてとかさ。

いよいよ大植英次さんが登場し、演奏が始まった。気宇壮大な「新世界」が目の前に広がってゆく。果てしない平原、そこを蒸気の力で力強く駆け抜けてゆく大陸横断鉄道。西の空を真っ赤に染め上げて地平線に悠々と沈んでゆく夕日。やがて訪れる”マジックアワー”。そこに僕は新大陸アメリカが見えた。

交響曲第九番「新世界より」はチェコのドヴォルザークが作曲したものだが、その描かれている世界は紛れもなくアメリカである。異邦人の見たアメリカ…そこは大植さんの師:レナード・バーンスタイン(レニー)の祖国であり、レニーも手兵ニューヨーク・フィルとこの曲をレコーディングし、今でも決定的名盤として名を轟かせている。

まだ十代だった大植さんはアメリカのタングルウッド音楽祭でレニーに出会い、エリーフィルやミネソタ管弦楽団などアメリカのオーケストラの音楽監督を歴任した。そういった万感の想いがこの日の演奏に込められているように感じられた。

またこの曲は大フィルにとっても特別なシンフォニーである。1947年、朝比奈 隆が中心となり関西交響楽団が設立された。これが大フィルの前身である。4月26日、戦災に焼け残っていた朝日会館で関西交響楽団は第1回定期演奏会を行った。演奏されたのは「リエンツィ」序曲、そして「新世界より」他。

4楽章冒頭部。一気呵成の加速を聴いていると、僕はいつも映画「ジョーズ」のテーマを想い出す。そして金管の勇壮な第1主題が登場。指揮台の大植さんは仁王立ちだ!大植さんがいつもより、ずっと大きく見えた。

音楽は大河の如く滔々と流れ、大伽藍を築くかのような堂々たる風格でフィナーレを迎えた。

割れんばかりの拍手、そして指揮台を埋め尽くすかのような花・花・花。みんな大植さんばかりに花束を手渡す。え、コンサートマスターへは誰もあげないの?手持ち無沙汰そうな長原幸太さんがちょっと気の毒。でも仕方ないか、今夜の主役はなんてったって大植さんだもの。

指揮台の大植さんは満面の笑みだ。昨年のテレビ報道を見ると、最終公演で大植さんは号泣していた。今年は泣かないのかな?と様子を覗っていると、来ました!大植さんの男泣き。聴衆の温かい拍手が優しくそれを包み込む。

アンコールはまず「ラデツキー行進曲」、大植さんが客席を振り返り、聴衆の手拍子を見事に合わせる。そして「夕やけこやけ」「七つの子」「ふるさと」を全員で大合唱。曲目の裏に歌詞を印刷したものが予め配られていた。そして大植さんがはっぴを着込んで「星空コンサート」でもお馴染みの「八木節」(外山雄三/管弦楽のためのラプソディ より)。7日間にわたり全60公演行われた大阪クラシックは熱狂のうちに幕を閉じた。

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日本の曲で終わるというのは素敵だな。でもね、大植さん。「八木節」も良いけれどここは大阪。是非一度、「大阪俗謡による幻想曲」を大植さんの指揮で聴いてみたいのです。大フィルのホルン奏者だった大栗 裕が作曲して朝比奈 隆が初演した曲だし、これも祭りの音楽。きっと大いに盛り上がることでしょう。

ま、いずれにせよ来年の大阪クラシックも期待しています。ありがとう、大植さん!そしてありがとう、大フィルの仲間たち!

余談:今回の「新世界より」は1楽章、提示部の繰り返しが行われなかった。恐らくこれが定期演奏会だったら大植さんは楽譜の指定どおり反復しただろう。でもまあ、今回はお祭りだし、いいんじゃないのと僕も想う。

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