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2007年9月11日 (火)

燃え上がる「悲愴」!〜大阪クラシック2007 《6日目》

大阪クラシック6日目(金)。ザ・シンフォニーホールで19時30分より大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会である。「あやむ屋」で焼き鳥とビールを一杯引っ掛けて、ほろ酔い気分で会場に到着。

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まずは大植さんがピアノの弾き振りでモーツァルト/ピアノ協奏曲第21番より第2楽章。映画「短くも美しく燃え」(1967)で使用されて有名になった楽章、ってことは小学生くらいから知ってはいたが、実際にその映画を観たことはない。どうやらスエーデン映画らしいのだが。戦火の中、軍から脱走した士官とサーカスの踊り子の愛の逃避行。その果てに……。

え?大植さんのピアノの腕前?まあいいじゃない、ご愛嬌ということで。だって、大阪クラシックはお祭りなんだから。

続いてメイン・ディッシュのチャイコフスキー/交響曲第六番「悲愴」が演奏される前に、大植さんが曲目解説をして下さった。3楽章、ベートーベンの「運命」の主題をホルンが吹くところを例示し、4楽章では第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが冒頭部分を別々に演奏。分けて聴くとなんだか現代音楽みたいな摩訶不思議な旋律を奏でているのだが、それが重なると……あれま、びっくり!あの悲痛なテーマとなるのだった。「このような種を仕込むことで、音に厚みをもたせるというマジックが生み出されるのです」と大植さん。成る程、実に分かり易い。

大植さんが昨年の定期で振ったチャイコフスキー/交響曲第五番は4楽章、序奏が終わり主部に入ってからの凄まじい加速に腰を抜かした。恐らく史上最速ではなかろうか?今回の「悲愴」は比較的ゆっくりと始まり、夢見るような第2主題はたっぷりと歌われるのだが、展開部になってからの劇的変化がいやはや、凄まじかった。激情を叩きつけるような嵐の音楽。大フィルが火の玉のように燃え上がる!!太鼓の強打も腹にズシンと強烈に響く。こんな壮絶な「悲愴」は聴いたことがない。大植さん、ワレリー・ゲルギエフを超えたんじゃなかろうか?前へ前へとズンズン突き進む3楽章も同様の名演であった。3楽章が終わって思わず拍手をした聴衆が何人か居られたが、そうしたくなる気持ちが痛いほどよく分かった。

そして4楽章アダージョ。ヴァイオリン平原に寂しく木枯らしが吹き荒び、哀切なる歌を歌う。それは今生への告別の歌。やがてその哀しみは諦念へと移ろってゆく。そして静かに訪れる死の受容。大植さんの「悲愴」を聴きながら、僕はマーラーの交響曲第九番や「大地の歌」を連想した。

チャイコフスキーは生涯に12回のうつ病期を経験したという。これは躁うつ状態を繰り返し、それが作品に色濃く影響しているマーラーとよく似ている(マーラーはフロイトの精神分析を自ら受けたこともある)。チャイコフスキーとマーラーは繋がっている。そのことに今回初めて気付かされた。

大フィルの底力を見せ付けた圧倒的名演であった。音楽は一瞬で消えてなくなる儚いもの。この歴史的演奏会に立ち会えた僕は最高に幸せ者である。一期一会という言葉を深く心に噛み締めた。

大植さんは今年2月の定期で本当はマーラーの九番を振るはずだったが、急病で無念の降板。この幻のチケットを僕は持っていた。大植さん、是非いつかまたこの曲も聴かせて下さいね。何時まででも待っています。

余談;この演奏会で唯一残念だったのは拍手のフライング。あ、3楽章のはいいのです。あれは自然な気持ちの表出だから。僕が問題にしているのは4楽章ね。

どうして指揮者が手を下ろすまで待つことが出来ないのだろう?音楽はそこまで続いているのに。音の余韻を味わうということを知らないのだろうか?先日の「田園」の時もそうだったし、大阪クラシック最終公演「新世界」でも、すべてをぶち壊す無神経な拍手があった。これだけ続くと、これはもう悪質と言う他あるまい。

この拍手という名の暴力に対して、大フィルの事務局はロビーに掲示して注意を呼びかけるなど、啓蒙活動を行ったほうが良いのではなかろうか?

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コメント

トラックバックありがとうございました。

記事を拝読し、改めて行けば良かった・・・などと、うじうじしております。

大植さんの悲愴には、ちょっと縁が無くって、この間のスマトラ島沖地震チャリティーのときも都合が付かず・・・・こういう巡り合わせって、ありますよねえ。

でも、マーラーの9番、是非とも来期こそは取り上げて頂きたいものです。

投稿: ぐすたふ | 2007年9月12日 (水) 13時09分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

変更になったとはいえ、定期で同じプログラムを組むというのは難しいかも知れません。まあ来期はベートーベン・チクルスもないことですから、特別演奏会という形でマーラーの九番やブラームスの四番を取り上げて貰ったらいいのではなかろうかと考えます。

投稿: 雅哉 | 2007年9月12日 (水) 15時50分

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受信: 2007年9月15日 (土) 18時07分

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