シッコ SiCKO
評価:B
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「ボーリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞し、「華氏911」ではカンヌで最高賞のパルムドールを受賞した、マイケル・ムーア監督の最新作である。今回はアメリカの医療問題に切り込む。
NHKスペシャルのような客観的ドキュメンタリーを求める人にはムーアの映画は不向きである。彼は洗練された紳士では決してなく、あくまでデブの煽動家である。「華氏911」や今回の映画でも明らかだが、ムーアはニクソン・レーガン・ブッシュなどの大統領を輩出した共和党が大嫌いで、ケネディ・クリントン(どちらかと言うと旦那よりヒラリー)・ゴアの民主党が好き。実に分かり易い。
そしてその手法は常にあざとい。でも、だからこそ2時間という上映時間を飽きさせないし、まるでコメディを観ているような可笑しさがある。
たとえば、「シッコ」でムーアはイギリスの医療制度を視察に行く。医療費が全額無料であることを知っているくせに病院で「お金を払わなくていいの!?」と繰り返し尋ね、失笑を買う。彼お得意の手法である。
しかし英仏の社会保障の充実には驚かされた。イギリスの場合、医療費がタダなだけではなく、低所得者に対しては通院のための交通費を病院が支払ってくれる!フランスでは子供が生まれたばかりの家庭に政府がハウスキーパーを無料で派遣してくれ、なんと食事や洗濯までしてくれる!恐るべし。
ただ、これだけ至れり尽くせりの制度がいいとはかぎらない。これではたいした症状ではないのに病院に行く人々が増えるだろうし、それを理由に仕事をサボる不届きな連中も当然現れるだろう。
それにしても国民皆保険制度のないアメリカの実情は酷い。民間の保険会社は支払いを拒む為ならありとあらゆる手を尽くす。重箱の隅をつつき、ヤクザまがいの因縁をつける。支払いの出来ない病人は病院がタクシーに乗せ、貧民街に突き落とす。こんな国に生まれなくて良かった。
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