« 呪怨 パンデミック | トップページ | ボッセ/紀尾井シンフォニエッタのベートーヴェン »

2007年8月31日 (金)

シッコ SiCKO

評価:B

映画公式サイトはこちら

「ボーリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞し、「華氏911」ではカンヌで最高賞のパルムドールを受賞した、マイケル・ムーア監督の最新作である。今回はアメリカの医療問題に切り込む。

NHKスペシャルのような客観的ドキュメンタリーを求める人にはムーアの映画は不向きである。彼は洗練された紳士では決してなく、あくまでデブの煽動家である。「華氏911」や今回の映画でも明らかだが、ムーアはニクソン・レーガン・ブッシュなどの大統領を輩出した共和党が大嫌いで、ケネディ・クリントン(どちらかと言うと旦那よりヒラリー)・ゴアの民主党が好き。実に分かり易い。

そしてその手法は常にあざとい。でも、だからこそ2時間という上映時間を飽きさせないし、まるでコメディを観ているような可笑しさがある。

たとえば、「シッコ」でムーアはイギリスの医療制度を視察に行く。医療費が全額無料であることを知っているくせに病院で「お金を払わなくていいの!?」と繰り返し尋ね、失笑を買う。彼お得意の手法である。

しかし英仏の社会保障の充実には驚かされた。イギリスの場合、医療費がタダなだけではなく、低所得者に対しては通院のための交通費を病院が支払ってくれる!フランスでは子供が生まれたばかりの家庭に政府がハウスキーパーを無料で派遣してくれ、なんと食事や洗濯までしてくれる!恐るべし。

ただ、これだけ至れり尽くせりの制度がいいとはかぎらない。これではたいした症状ではないのに病院に行く人々が増えるだろうし、それを理由に仕事をサボる不届きな連中も当然現れるだろう。

それにしても国民皆保険制度のないアメリカの実情は酷い。民間の保険会社は支払いを拒む為ならありとあらゆる手を尽くす。重箱の隅をつつき、ヤクザまがいの因縁をつける。支払いの出来ない病人は病院がタクシーに乗せ、貧民街に突き落とす。こんな国に生まれなくて良かった。

| |

« 呪怨 パンデミック | トップページ | ボッセ/紀尾井シンフォニエッタのベートーヴェン »

Cinema Paradiso」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: シッコ SiCKO:

» 「シッコ」 [どや!みてみぃ〜。]
2007年(アメリカ)原題「SiCKO」123分 ★★★☆☆←独断と偏見による 「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」と来て、「シッコ」。 「sicko」とは、「sick」(病気)のスラングで「あいつビョーキじゃね?」 みたいに軽蔑的に使う単語のようです。 つまり、ムーアは米国の医療制度を指して「ビューキじゃね?」と 言っているのだと思います。 一部の裕福な人だけが受けることが出来る医療制度の様だということは、 聞きかじって知っておりましたが、これほどに弱者切捨が行われていると... [続きを読む]

受信: 2007年8月31日 (金) 12時38分

» シッコ [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
 『ムーア先生、急患です。』  コチラの「シッコ」は、「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「華氏911」のマイケル・ムーア監督が『テロより怖い、医療問題。』に斬り込んだ8/25公開の社会派ドキュメンタリーなのですが、劇場鑑賞券が当たったので、観て来ちゃいまし...... [続きを読む]

受信: 2007年9月 2日 (日) 22時46分

» 【2007-119】シッコ(SICKO) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
人気ブログランキングの順位は? ムーア先生、急患です。 保険満足度は 先進国中最下位!! 救急車に事前申請? テロより怖い、 医療問題。 [続きを読む]

受信: 2007年9月 6日 (木) 23時19分

» シッコ 2007-48 [観たよ〜ん〜]
「シッコ」を観てきました〜♪ 「ボウリング・フォーコロンバイン」、「華氏911」で有名なマイケル・ムーア監督の新作です〜♪ 多くの先進国は、若干負担するか全く負担無しで治療が受けられるシステムができている。そんな中、そういった保険制度がない国、アメリカ・・・アメリカの場合は、民間の保険制度に加入しなくちゃならず、6人に1人が無保険だそうです。この映画は、無保険の人の悲劇ではなく、ちゃんと保険に入ってる人の悲劇です・・・ 人気Blogランキング      ↑ 押せば、適正な金額で... [続きを読む]

受信: 2007年9月12日 (水) 06時15分

» シッコ★Sicko マイケル・ムーア最新作! [銅版画制作の日々]
   テロより怖い、医療問題。 9月2日、京都シネマにて鑑賞。マイケル・ムーア監督の3年ぶりの最新作だ。私が観たのは、「ボウリング・フォー・コロンバイン」以来である。残念ながら、「華氏911」は未見である。ブッシュ大統領に突撃取材という話題の作品だったのに・・・・。観れなくて残念 さて今回の新たな標的はな・な・な・なんと誰もが関わりをもつ、医療問題だ日本でも、医療費の負担額は、随分厳しい状況3割負担の私とっても、かなりきつい薬を貰うたび、金額の多さに気分。しかし... [続きを読む]

受信: 2007年9月15日 (土) 21時14分

« 呪怨 パンデミック | トップページ | ボッセ/紀尾井シンフォニエッタのベートーヴェン »