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2007年8月25日 (土)

青少年のためのコンサート〜地球讃歌〜

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大植英次 指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団による「青少年のためのコンサート」をNHK大阪ホールに聴きに往った。学生料金が1000円、一般が3000円と格安の入場料だ。これは毎年行われている催しでNHKが映像収録し、後日テレビで放送される。午後6時30分開演でアンコールはなく、終わったのは8時30分。中高生が沢山来ているので彼らの帰宅時間を配慮してのことだろう。コンサートマスターは長原幸太さん。昨年のテーマは「英雄伝説」だったが、今年は自然描写にまつわる作品が並んだ。

会場に着くと、客席最前列と2列目を横にずらりと淀工(淀川工科高等学校吹奏楽部)生徒が占めていた。淀工は女子も男子と区別がつかないくらいのショート・カットなので、後姿を見ただけですぐ分かる。ただ、最前列からは管楽器奏者や打楽器奏者が見えないし、弦楽器の音ばかり聴こえてバランスが悪く、余り勉強にならないんじゃないかな?ちょっと彼らが気の毒でした。大フィル関係者の方、次からはもっと配慮してあげて下さいね。

DVD「淀工吹奏楽日記〜丸ちゃんと愉快な仲間たち〜」で知ったのだが、部員数が200名を超える淀工は一年生の雪組、マーチングに取り組む花組、そして吹奏楽コンクールに出場する星組とあるそうだ(まるで宝塚みたい)。星組は8月26日の関西吹奏楽コンクールが目の前なので、恐らくこのコンサートには花組中心で来ているものと想われる。

さて、大植さんが指揮する「青少年のためのコンサート」と大阪城「星空コンサート」は師匠であるバーンスタインの「キャンディード」序曲で始まると相場が決まっている。ところが、冒頭いきなりトランペットが音を外した!よく見るとラッパのレギュラー・メンバーである秋月さんと橋爪さんがいないではないか。何たること……。3曲目の「モルダウ」で橋爪さんが加わり、「アルプス交響曲」からは秋月さんが登場したので、それからは安心して聴けたのだが。

昨年の「青少年」でも映画「スーパーマン」テーマのファンファーレでラッパはあり得ないミスをした。大植さんが大フィルの音楽監督に就任してから改革が進み、奏者の技術が向上したということについては衆目の一致するところであろう。しかし現在、大フィル最大のアキレス腱はトランペット・パートである。そこを補強する必要があるのではないだろうか?

大植さんは今回も当然、全曲暗譜で振った。ベートーベンの「田園」のみ指揮棒なしだった。ザ・シンフォニーホールで進めているベートーベン・チクルスも指揮棒なしなので、そういうスタイルでいくと決めているのだろう。それから今回の「田園」第1楽章は提示部の繰り返しをしなかった。ベートーベン・チクルスでは楽譜の指定どおり繰り返しているので、おそらくNHKの放送時間を考慮しての選択だったのだろうと推測する。

スメタナの「モルダウ」は先日、BSで放送されたラ・フォル・ジュルネにおける小泉和裕 指揮/東京都交響楽団の演奏を聴いたばかりである。小泉さんの解釈はまるでドイツ音楽みたいに重苦しく、停滞し澱んだモルダウ川だったが、大植さんは推進力があって滔々と流れる表現だった。特に感心したのはポルカの場面。小節ごと頭のアタックが強烈で、弾むような生き生きとした表現になっており、嗚呼これはまさに<農民の踊り>なんだなぁと再認識させられた。

ドヴォルザークの「森の静けさ」は大阪出身17歳のチェリスト、堀江牧生くんが登場。大フィルの近藤浩志さんに師事していたそうで、先生からの一言もあり微笑ましかった。

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休憩を挟んでR.シュトラウスの「アルプス交響曲」。暴風や雷鳴の音を表現するウィンドマシーン(写真右)とドナーマシーン(写真左)が舞台前面に配置され、なんと会場からオーケストラと一緒に演奏する希望者を募った。ウィンドマシーンは淀工の男の子が当てられ、ドナーマシーンは別の学校の女子ふたりが選ばれた。ひとりは大阪の子だったが、もうひとりは奈良から来たと言っていた。

そしてドビュッシーの「海」から”風と海との対話”が演奏された後、ストラヴィンスキーの「春の祭典」第1部”大地礼讃”でコンサートは締めくくられた。これはまさに20世紀初頭に大センセーションを巻き起こし、音楽に革命をもたらした作品である。チャイコフスキーやマーラーの解釈から推して、大植さんはバーンスタインみたいに音楽に情熱をぶつける主観的タイプの指揮者なのかと想っていたのだが、ストラヴィンスキーでは客観的アプローチでむしろブーレーズに近かった。荒々しいリズムとダイナミックスの急激な変化を十分表現しながらも、あくまで冷静な指揮ぶりで驚かされた。各声部が明瞭に響き、非常に見通しの良い音作りだった。

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「田園」は今月末のベートーベン・チクルスで再びこのコンビにより演奏されるが、「アルプス交響曲」「海」そして「ハルサイ」も是非今度は全曲聴かせてもらいたいな、と想わせる密度の濃い演奏会であった。

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コメント

うちの息子も同じ会場の3列目で演奏を聴いてました^^
必死でTpの音を聴き取ろうとしたが、その事に神経がいってしまって曲全体を楽しむ事はできなかったようです^^;
それでも、聴きに行けた息子がうらやましい…
私は仕事で行けなかったのに…

私からは¥1200をもぎ取って行ったのですが、¥1000でしたか…

投稿: FIZ | 2007年8月25日 (土) 20時50分

FIZさん、コメントありがとうございます。

いいじゃないですか、+200円。地下鉄代か飲食代と目を瞑ってあげれば。可愛らしいエピソードで爆笑させて頂きました。

投稿: 雅哉 | 2007年8月26日 (日) 05時26分

プロが音をはずすことってあるんですね。

しかし 詳しいレポートですね。
臨場感があります。

投稿: 元ベース弾き | 2007年8月26日 (日) 08時46分

元ベース弾きさん、お褒めのお言葉嬉しいです。

大フィルのラッパは昨年フェスティバルホールでのマーラーの交響曲第5番でもコケたんですよ。

今回「青少年のためのコンサート」で僕の前に5、6歳の男の子が座っていたのですが、「キャンディード」で音を外すたびに(計2回)、隣のお母さんを振り向いて、笑っていました。実に情けない……。

投稿: 雅哉 | 2007年8月26日 (日) 19時39分

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